すべての介護サービスは、ケアマネージャー(介護支援専門員)の作成するケアプランに沿って提供されます。
利用者の方の健康状態や生活環境は日々変化するため、ケアプランは一度作成したらそれで完結するわけではありません。
「モニタリング」は、現在のサービス内容を見直すために行うケアマネージャーの大切な仕事のひとつ。
本人や家族の意向、現場の介護スタッフの意見に耳を傾けることで、ケアプラン改善のヒントを見つけるきっかけにもつながるのです。
介護サービスは幅広いニーズに対応するため、要介護者の居宅だけでなく、介護施設でも提供されます。
モニタリングの担当者や実施回数は、介護サービスの現場によって以下のように異なります。
居宅サービス | |
内容 | 自宅で利用できる介護サービス
(訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ・通所介護・短期入所・福祉用具の貸与・住宅改善など) |
担当者 | ケアマネージャー
または訪問介護サービスを提供する事業所のサービス提供責任者 |
回数 | 1か月に1度利用者宅を訪問する(1か月以上空くと減算の対象となる)
※福祉用具専門員には年に2回のモニタリングが義務付けられている |
施設サービス | |
内容 | 介護老人福祉施設や介護老人保健施設など、入居して利用するサービス |
担当者 | 施設に在中するケアマネージャー |
回数 | 3カ月に1度(施設によっては毎月、または半年に1度など) |
居宅サービスも施設サービスも、モニタリングの主な担当者がケアマネージャーであることは変わりません。
通所介護や短期入所施設、入居施設に勤務する介護スタッフが担当するモニタリングは、あくまでケアマネージャーのモニタリングを補完するための実績提供になります。
現場で介護を提供するスタッフは、利用者の方の変化を発見しやすい身近な存在。
そのため事業所や施設では、ケアマネージャーに提出するモニタリングシートの作成を業務に課しているケースが多くなります。
介護スタッフが行うモニタリングでは、サービス状況や家族の声などを、的確にケアマネージャーに伝えることが大切です。
チェックするポイントは、サービスを利用する時期によっても異なります。
介護サービスを開始した当初は、サービス内容に対する利用者本人や家族の満足度を中心に記載します。
サービスが適切に提供されているかチェックすることも重要なポイント。
ケアプランの内容がニーズに沿ったものであるかどうか、早期の段階で見直すきっかけのひとつになります。
介護サービスの利用が長期化すると、利用者の方や家族のニーズに変化が生じにくくなります。
適切なサービスが提供されていると考えられる反面、長期目標への努力が怠ったり、ささいな変化に気付きにくくなる可能性も少なくありません。
この時期のモニタリングは、新たな課題を見出すように心がけるのがポイント。
利用者の方や家族の声に耳を傾け、より良い生活につながるヒントを見つけましょう。
モニタリングシートには決められた様式はありません。
事業所や施設によっては、ケアプランに沿った短期・長期の目標を記載することもあります。
それらの目標は介護スタッフが主観で決めるのではなく、利用者本人や家族の意向を汲みながらケアマネージャーがケアプランに沿って設定します。
介護スタッフは、短期・長期目標の達成度や満足度を基本としながら、以下の項目についてチェックしていきましょう。
モニタリングシートは、以下のチェック項目に要点を置きながら端的に内容を記載していきます。
現在のサービス内容を振り返るための大切なポイントです。
実際に介護サービスを提供するスタッフとして、ケアプランのサービス内容が適切に提供できているかを記入します。
介護サービスによって利用者の方がどのように変化したのか記入します。
プラス面はもちろん、マイナス面を伝えることもケアプランの見直しに大いに役立ちます。
実際にサービスを受けている本人や家族の評価を記入します。
「長女様から『デイに通うようになって本人の笑顔が増えた』と連絡あり」「『リハビリの効果を実感したので回数を増やしたい』という意向あり」など、具体的な会話の内容を記載するとなお良いでしょう。
短期目標とは「転倒しない」「デイへ通い他者との交流を図る」など、現時点から1か月~3カ月先を目安に設定する目標です。
長期目標に比べ、より実践的で具体的な内容となります。
一方、長期目標は「歩行機能を維持し居宅で生活する」「入居施設でメリハリのある生活を送る」など、ケアプランの切り替え時に設定する長期的な目標です。
短期・長期目標が設定されている場合、モニタリングでは目標達成度を記す必要があります。
ここで注意したいのが、同じ短期目標が数カ月続いている場合、適切なサービスが提供されていない可能性があるということ。
現在のサービス内容が、利用者本人に適していないことも考えられます。
ケアプランを作成するのはケアマネージャーですが、実際の介護サービスは現場のスタッフによって提供されます。
モニタリングシートの作成は、現在のサービスを振り返る大切なきっかけになるでしょう。
ここで紹介するのはモニタリングシートの記入例のひとつです。
いずれもチェック項目を分かりやすく端的に記載していることがポイントとなります。
チェック項目 | サービスの実施状況 |
内容 | 利用者に関わるケアプランの内容どおりにサービス提供を実施できたか |
記入例 | ×(〇、△、×のいずれかを記入) |
具体例 | 声掛けをするも入浴拒否あり。入浴サービス実施できず。 |
チェック項目 | 利用者の生活および心身の状況の変化 |
内容 | 利用者の生活や心身状況の変化について |
記入例 | 変化あり(あり、なしいずれかを記入) |
具体例 | 〇月〇日、自宅で洗濯物を取り込む際に転倒したと報告あり。受診した結果問題はなかったものの〇月〇日のデイケアでのリハビリは休止。 |
チェック項目 | 利用者および家族の満足度 |
内容 | 現在のサービスに利用者および家族が満足しているかについて |
記入例 | 〇(〇または×を記入) |
具体例 | 「デイを利用し始めてから、自宅でも笑顔が増え意欲的になった」と長女様から話あり。 |
チェック項目 | 短期目標に対する達成度 |
短期目標 | 他者との交流を図る |
サービス内容 | レクリエーションに参加するよう声掛けをする |
記入例 | 〇(〇、△、×のいずれかを記入) |
具体例 | 声掛けにより以前よりレクリエーションに参加する機会が増えた。
〇月〇日、外出行事に参加し花見を楽しまれた。 |
介護職は身体介護や生活介護が仕事のすべてではありません。
事業所や施設によっては、カルテや連絡帳の記入も業務のひとつです。
そのためモニタリングシートは、それらの業務の合間に作成する必要があります。
一人の介護スタッフが担当する利用者の数は、数人から10数人と施設の規模やスタッフ自身の経験によってさまざま。
多忙な業務の合間のモニタリングシートの作成は、スタッフの業務負担になることも考えられます。
モニタリングシートを少しでもスムーズに作成するためにも、普段から以下の点を心がけておきましょう。
居宅サービスのモニタリングは月に1度ですが、施設サービスのモニタリングは3ヶ月または6か月に1度の単位で実施されることもあります。
ケアプランの内容を見直すためには、この期間の状況を適切に記載しなければなりません。
期間があくほど、記載すべき情報を取りこぼしてしまう可能性もあります。
ケアマネージャーに詳細な内容を報告するためにも、利用者の方の大きな変化やサービスに対する感想は、カルテなどに書き留めておくと良いでしょう。
モニタリングシートをスムーズに作成するためには、普段からケアマネージャーとこまめに連絡をとることが大切です。
生活や身体状況の変化を事前に共有しておけば、モニタリングシートの内容の相違を防ぐことができるからです。
より良い介護サービスの提供には、ケアマネージャーはもちろん、医療機関や行政との連携を欠かすことはできません。
それらの情報をモニタリングに活かすことが、ケアプランの適切な見直しへとつながるでしょう。
ひとりで複数人の利用者を担当している場合には、取りこぼしのないよう作成スケジュールを把握しておくことが大切です。
3ヶ月や半年に1度のモニタリング、長期目標見直しを兼ねた担当者会議などは、多忙な介護業務に重なると特に混乱しがちです。
効率よくモニタリングシートを作成するためにも、スケジュールは一覧にまとめてチェックするのがおすすめ。先の見通しを立てておけば、利用者の方のささいな変化にも気付きやすくなります。
モニタリングは、ケアプランの内容を振り返るために欠かせないプロセスです。
ケアプランの作成と同様に、モニタリングもケアマネージャーの重要な仕事です。
しかしケアマネージャーはサービス現場のすべてを把握できるわけではありません。
利用者の方の意向や満足度を肌身で感じられるのは、実際にサービスを提供する介護スタッフだからこそ。
介護スタッフが作成するモニタリングシートは、利用者本人や家族、介護現場とケアマネージャーをつなぐ役割も担っているのです。
きめ細かで適切なモニタリングシートを作成し、より良い介護サービスを実現させていきましょう。
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