介護士を目指している方にとって、気になるポイントは平均年収と生涯年収ではないでしょうか?当記事では、介護士の平均年収と生涯年収について紹介していきます。また、性別・年齢・地域の違いで年収にどれくらいの差があるのかも解説します。
厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると介護士の平均年収は以下の通りです。
月額給与 | 25万円 |
年間賞与 | 52万円 |
平均年収 | 352万円 |
※平均年齢43.8歳、勤続年数7.6年、労働時間163時間/月、超過労働4時間/月
介護士の平均年収は352万円です。40年間勤続した場合の生涯年収は、1億4,080万円となります。日本の平均生涯年収は約1億7,000万円ため3,000万円ほどの差です。
介護士の年収は低めですが、介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取れば年収アップのチャンスはあります。介護の仕事を長く続けたい方は早めの資格取得がおすすめです。
【参考】令和3年賃金構造基本統計調査
介護士の年収や給与は正社員とパート(非常勤)で異なります。雇用形態が変われば給料が変わるのは他の職業も同様です。以下に正社員とパートの給与の違いをご紹介します。
正社員として働く介護士の平均的な年収と給与は以下の表の通りです。
平均勤続年数 | 平均月額給与 | 平均年収 | |
資格なし | 5.2年 | 271,260円 | 3,255,120円 |
介護福祉士 | 9.5年 | 328,720円 | 3,944,640円 |
実務者研修 | 7.7年 | 307,330円 | 3,687,960円 |
初任者研修 | 8.1年 | 300,510円 | 3,606,120円 |
無資格の介護士の平均年収は約325万円です。一方、介護福祉士の資格を取ると平均年収は約394万円となります。無資格と有資格の介護士の年収差は約70万円です。
介護士としてキャリアを積んでいきたいと思う方は、関連する資格を取るとよいでしょう。
【参考】厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
続いては、パートで働く介護士の平均的な年収と給与をみていきますs。
平均勤続年数 | 実労働時間数 | 平均月額給与 | 平均年収 | |
資格なし | 6.2年 | 91.7時間 | 114,910円 | 1,378,920円 |
介護福祉士 | 8.5年 | 87.5時間 | 128,320円 | 1,539,840円 |
実務者研修 | 7.3年 | 76.4時間 | 110,400円 | 1,324,800円 |
初任者研修 | 8.5年 | 73.8時間 | 106,010円 | 1,272,120円 |
パートの場合は時給制の職場が多いです。実務者研修や初任者研修を受講していると実労働時間が少ないにもかかわらず、資格がない職員とあまり年収に差が無いようです。パートで働く場合でも資格を取得していると有利になる場合が多いでしょう。
介護士の年収は地域によっても異なります。以下に厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとにトップ5とワースト5をご紹介しますので、参考にしてみてください。
都道府県 | 平均年収 | |
1位 | 東京 | 4,007,500円 |
2位 | 京都 | 3,994,200円 |
3位 | 神奈川 | 3,907,600円 |
4位 | 千葉 | 3,806,800円 |
5位 | 群馬 | 3,776,600円 |
東京をはじめ関東近郊が上位を占めています。都市部ほど施設が多く、介護士の需要も増えるため年収が高い傾向です。
都道府県 | 平均年収 | |
1位 | 沖縄 | 2,925,900円 |
2位 | 宮崎 | 3,000,300円 |
3位 | 島根 | 3,022,400円 |
4位 | 佐賀 | 3,025,500円 |
5位 | 青森 | 3,033,800円 |
調査年によって順位は違いますが、都市部から離れた地域ほど年収が低い傾向です。
介護士の勤務先は介護施設や訪問介護などさまざまです。勤務先によっても給与が異なります。以下に施設別の平均給与と年収を正社員と非常勤に分けてご紹介します。
施設 | 平均月額給与 | 平均年収 |
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム) |
345,590円 | 4,147,080円 |
介護老人保健施設 | 338,390円 | 4,060,680円 |
介護医療院 | 307,550円 | 3,690,600円 |
訪問介護事業所 | 314,590円 | 3,775,080円 |
通所介護事業所
(デイサービス) |
278,180円 | 3,338,160円 |
通所リハビリテーション事業所
(デイケア) |
297,980円 | 3,575,760円 |
特定施設入居者生活介護事業所
(介護付き有料老人ホームなど) |
319,760円 | 3,837,120円 |
小規模多機能居宅事業所 | 289,520円 | 3,474,240円 |
認知症対応型共同生活介護事業所
(グループホーム) |
291,460円 | 3,497,520円 |
正社員の平均年収は特別養護老人ホームがトップです。年収が最も低いデイサービスと比べると、80万円以上の差があります。
施設 | 平均月額給与 | 平均年収 | 平均時給 | 実労働時間数 |
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム) |
135,590円 | 1,627,080円 | 1,286円 | 105.4時間 |
介護老人保健施設 | 141,700円 | 1,700,400円 | 1,302円 | 108.8時間 |
介護医療院 | 138,640円 | 1,663,680円 | 1,314円 | 105.5時間 |
訪問介護事業所 | 93,960円 | 1,127,520円 | 1,663円 | 56.5時間 |
通所介護事業所
(デイサービス) |
117,920円 | 1,415,040円 | 1,258円 | 93.7時間 |
通所リハビリテーション事業所
(デイケア) |
135,480円 | 1,625,760円 | 1,290円 | 105時間 |
特定施設入居者生活介護事業所
(介護付き有料老人ホームなど) |
136,370円 | 1,636,440円 | 1,316円 | 103.6時間 |
小規模多機能居宅事業所 | 120,460円 | 1,445,520円 | 1,227円 | 98.1時間 |
認知症対応型共同生活介護事業所
(グループホーム) |
139,030円 | 1,668,360円 | 1,330円 | 104.5時間 |
非常勤の場合、訪問介護は入居系施設よりも時給が高めですが、実労働時間数は短くなるためトータルの年収は低くなります。その他の施設は1,200〜1,300円台が相場です。
【参考】厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
介護士の給与は年齢や男女別で違いはあるのでしょうか。以下の表で確認してみましょう。ちなみに男女ともに常勤職員のデータです。
2021年 | 年齢区分 | 平均勤続年数 | 平均月額給与 | 平均年収 |
男性 | 全体 | 8.2年 | 335,460円 | 4,025,520円 |
29歳以下 | 4.3年 | 297,240円 | 3,566,880円 | |
30〜39歳 | 7.6年 | 340,130円 | 4,081,560円 | |
40〜49歳 | 9.8年 | 355,700円 | 4,268,400円 | |
50〜59歳 | 9.6年 | 332,670円 | 3,992,040円 | |
60歳以上 | 9.2年 | 286,900円 | 3,442,800円 |
2021年 | 年齢区分 | 平均勤続年数 | 平均月額給与 | 平均年収 |
女性 | 全体 | 8.9年 | 306,590円 | 3,679,080円 |
29歳以下 | 4.1年 | 287,400円 | 3,448,800円 | |
30〜39歳 | 7.8年 | 305,860円 | 3,670,320円 | |
40〜49歳 | 9.3年 | 310,510円 | 3,726,120円 | |
50〜59歳 | 9.9年 | 315,760円 | 3,789,120円 | |
60歳以上 | 11.2年 | 292,710円 | 3,512,520円 |
男性では40代が最高値、女性では50代が最高値となっています。年を重ねるほど年収が上がっていきますが、一定の年齢を超えると下がる傾向にあります。
【参考】厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」
次に勤続年数ごとの年収推移を紹介します。
平成31年(令和元年)平均月額給料 | 平成31年(令和元年)平均年収 | 平成30年平均月額給与 | 平成30年平均年収 | 年収差(平成31年ー平成30年) | |
全体 | 319,950円 | 3,839,400円 | 300,970円 | 3,611,640円 | 227,760円 |
勤続1年〜4年 | 291,420円 | 3,497,040円 | 279,072円 | 3,348,864円 | 148,176円 |
勤続5〜9年 | 309,700円 | 3,716,400円 | 295,450円 | 3,545,400円 | 171,000円 |
勤続10年以上 | 346,160円 | 4,153,920円 | 334,140円 | 4,009,680円 | 144,240円 |
【参考】厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
平成30年、令和元年ともに勤続年数が長いほど年収も上がるという結果でした。また、平成30年と令和元年で全体の年収は20万円以上上がっており、年収の底上げが図られています。
前述のように、一定の年齢までは給与が上昇しますが、50歳以降は減少する傾向にあります。これは売上の上限額が決まっているためです。
介護事業は介護報酬が収入源です。介護報酬は法律で定められているため、事業所は独自に設定できません。職員が努力して売上アップを図ろうとしても、上限が決まっているのです。
売上に上限があると人件費に割けるお金にも限りがあるため、一定の年齢から年収が上がりにくくなります。
給与のアップはモチベーションにつながります。以下に介護士の給与をアップする方法を3つ紹介します。
夜勤は手当が付く職場が多いため、給与アップが可能です。人手不足の介護業界では、夜勤のできる職員は特に重宝されます。
子どもが小さい、体力的に厳しいなどやむを得ない理由で夜勤ができない人もいます。それだけに、夜勤ができる介護士はありがたい存在です。
デイサービスや訪問介護事業所などは夜勤のない職場もあります。夜勤ができる方は、夜勤ができる職場に転職すると給与がアップすることでしょう。
介護は無資格でも働けます。しかし、前述のように資格を持っている方が給料アップの可能性が高まります。介護福祉士を取得すれば、資格手当が付く職場もあるためおすすめです。
介護士以外の資格を取得し、職種を変えるのも一つの方法です。ケアマネジャーを取得して働き方を変える、看護師を取得して看護業務の担い手となるなど広い視野を持ちましょう。資格取得のための勉強や学費などはかかりますが、将来的に年収を上げたい人は挑戦してみてください。
介護士は慢性的な人手不足を抱えています。しかし、高齢者は増加するため社会に欠かせない職業であることは間違いありません。施設間で人材確保の競争も激しくなっているため、十分な数を確保できない職場も多いです。
人手不足を改善するため国はさまざまな政策を行っています。代表例は「介護職員処遇改善加算」です。一定の条件を満たすと、介護職員1人当たり12,000〜37,000円相当が加算されます。
すべてが介護士の給与に反映されるわけではありませんが、恩恵を受けられる職場も多いでしょう。
今後も政策や介護報酬改定によって、介護士の給与が上がる可能性は十分にあるでしょう。
介護士の平均年収について性別や年齢、地域ごとに解説しました。介護士は無資格でも働けますが、年収アップを望むなら資格取得が必須です。
まずは介護福祉士を目指し、さらにはケアマネジャーなどの資格を取得すると仕事の幅も広がります。
資格を取ることで転職先の選択肢も広がります。選択肢が多いほど好条件の職場が見つかりやすくなるため、できる範囲で勉強してみましょう。
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