介護職では質の高いサービスを提供するために「接遇」のスキルが求められます。
この記事では、
介護業界で働くうえで求められる接遇マナーの5原則について解説いたします。また、介護現場で接遇が求められる理由と、接遇を身につけるメリットについてもみていきます。
介護士としてステップアップしたい方はぜひ参考にしてください。
「接遇」とは、おもてなしの心を持って相手に接する接客技術のことです。
お客様にサービスを提供する「接客」の一歩先を行く技術であり、
販売業やサービス業以外でも医療業界や教育業界のほか、
介護業界などで接遇が重要視されています。
これはおもてなしの心を持って接することが、
利用者の満足度や喜びへつながると考えられているからです。
介護は身体介護や生活支援を通じ、利用者の生活を支える仕事です。
高齢化が進み介護ニーズが多様化するなか、
現場では介護の「質」が重視される傾向にあります。
サービスの形態はグループから個人へと変化し、利用者一人ひとりに合った介護サービスが求められています。
そのためには、相手の心に寄り添う「接遇」スキルが必要。
確かな接遇マナーを兼ね備えた介護が利用者の満足度を高め、
結果的に介護サービスの質の向上につながっていくと言えるでしょう。
介護の仕事は、
決まったマニュアルやオペレーションに沿って行うわけではありません。
介護の基礎的な知識はもちろん必要ですが、
現場では一人ひとりの身体状況や生活環境に応じた個別の対応が求められます。
利用者それぞれの心に寄り添うサービスを提供するために必要なのが、
おもてなしの心を持った接遇マナー。
介護技術だけではなく、一歩踏み込んだ満足度や喜びこそ、
現代の介護サービスに求められているニーズだと考えられています。
実際の介護現場では、
どのような点に気を付けて接遇を行えばよいのでしょうか。
介護士が知っておきたい、介護の接遇マナー5原則をチェックしていきましょう。
接遇マナーの基本は「あいさつ」です。
コミュニケーションの入り口でもあり、第一印象を決める大切なポイントです。介護現場でのあいさつは、利用者の方と目線を合わせ、聞こえやすい声のトーンで行うことが大切。
車いすに座っていたりベッドに横になっている方には、腰を落として目線を合わせるように心がけましょう。
また、利用者の方と別れる際のあいさつは、その日のケアの内容を印象付けます。
別れのあいさつには「あなたと会えてうれしかった」「次もまたお会いしたいです」という気持ちを込めましょう。
利用者の方が認知症患者であっても、その日のケアが良い体験であったと印象付ける効果が期待できます。
接遇の身だしなみは清潔感があり、その場の環境に合ったものが求められます。介護現場ではそれらに加え、動きやすいことが大切です。
利用者の安全を守るためにも、とっさの動きに対応できるものがよいでしょう。
また、ピアスやネックレスなどのアクセサリー類は、介助の際に利用者の方を傷つける恐れがあります。
長い爪は細菌やウィルスの温床にもなるため、爪は短く整えるのが基本です。
接遇の身だしなみは自分目線の「おしゃれ」とは異なり、
あくまでも利用者目線で考えることが大切だということを覚えておきましょう。
接遇の表情の基本は親しみやすく温かい笑顔です。
利用者の方と対面する時は口角を上げ、視線を合わせて笑顔を作るように心がけましょう。
また、利用者の方に接していない時の表情も気を付けておきたいポイントです。忙しさで余裕のない表情をしていると、利用者の方が気軽に声をかけることができません。
心に寄り添うケアを提供するためにも、相手の心を開くためのやさしい表情を心がけましょう。
接遇における言葉遣いは「敬語」が基本です。
利用者の方の多くは、職員よりも高齢で人生経験を重ねた方です。
敬語で接することは、相手を尊重し敬う心への表れです。
利用者の方の身体状況や言葉の理解度に関係なく、
会話では敬語を使うように心がけましょう。
一方、声かけの大きさやスピードは、利用者の方に応じて使い分ける必要があります。
耳が聞こえづらい方であれば、聞き取りやすい大きさでゆっくりと声をかける必要があるでしょう。
入浴や外出を拒否される方、気持ちが落ち込んでいる方であれば、やる気を引き出すような明るい声かけが必要な場合もあります。
このように、その方に合わせた個別の対応こそが、介護における「接遇」の大切なポイントと言えるでしょう。
「傾聴」とは、
相手を理解することを目標としたカウンセリング技術のひとつです。
介護現場では、利用者の方の要望を引き出すためにも傾聴の姿勢が重要になります。
傾聴は「話を聞いてもらえている」という安心感を与えること目的です。
相手の目を見て、話す内容を繰り返したりあいづちを打ったりするように心がけましょう。
利用者の方の話の内容に違和感を覚えても、決して否定しないこともポイント。忙しい業務のなかではじっくりと傾聴できない場合もありますが、
傾聴は必ずしも長時間である必要はありません。
たとえ短時間であっても、しっかりと目を見て話に耳を傾けることが利用者の方の安心へとつながります。
介護士への信頼感もアップし、ケアがよりスムーズに進む効果も期待できるでしょう。
介護の接遇マナーは、
今では介護士個人だけでなく施設全体で重視されている取り組みです。
ここからは、介護士が接遇マナーを身につけるメリットについて考えていきましょう。
相手を尊重し敬う姿勢は、利用者の方との信頼関係を深めてくれます。
利用者の家族にとっても、
接遇を身につけた介護士に対して安心感を感じるでしょう。
介護士と利用者の方との信頼感がアップすれば、個別ニーズに対応したより良いケアが可能となり、理想的な人間関係が構築できます。
相手の心に寄り添う介護の接遇は、利用者の方を尊重したケアを生み出します。介護サービスは介護士の自己満足ではなく、
利用者の方のニーズを満たすものでなくてはいけません。
丁寧な言葉遣いや相手の目を見たあいさつ、傾聴の姿勢は、利用者目線のケアへとつながります。
結果的に、利用者の方それぞれに合った介護サービスの提供が可能となるでしょう。
介護士一人ひとりが正しい接遇を身につけることは、施設全体の信頼度アップへとつながります。
外部から信頼のおける施設だと認識されることにより、
地域社会からの需要が高まり、介護士の処遇改善も期待できます。
地域に評価されている施設の職員として、
やりがいを持って働くこともできるでしょう。
あいさつ・身だしなみ・傾聴・言葉遣いなど、基本的な接遇を身につけた介護士は内部からも高く評価されます。
接遇マナーは毎日の介護業務のなかで、自分自身の行動で示さなければなりません。
そのため接遇マナーを身につければ、日頃から意識の高い介護士だと評価されることが期待できます。
同じ資格や勤務年数の職員であっても、評価が処遇や配置に影響する場合もあるでしょう。
接遇マナーのメリットは、利用者の方や家族など外部に向けられるものだけではありません。
丁寧な対応や心づかいは、職場内にも良い雰囲気を生み出します。
利用者の方の自立した生活を支えるためには、介護現場の円滑なチームワークが必須です。
コミュニケーションが円滑化すれば働きやすい職場になるだけでなく、質の良い介護の提供にもつながるでしょう。
接遇マナーは介護のさまざまな場面で必要となるため、
正しく身につけているか不安になる方も多いのではないでしょうか。
接遇を自然に行うためにも、以下のような研修やグループワークで内容を深めていきましょう。
介護における接遇マナーのニーズの高まりを受け、
接遇研修を設ける職場が多く見られます。
内容は上で述べた5つの原則をベースとした基礎的なプログラムのほか、
管理職や事務職に向けたクレーム対応プログラムなどさまざま。
正しい接遇を身につけることは介護士のスキルアップにもつながるため、
職場の接遇研修には積極的に参加するようにしましょう。
職場全体の接遇を向上させるためには、
スタッフ間のグループワークがおすすめです。
スタッフが集まり課題を話し合うことで、
現場の状況を振り返ることができます。
身だしなみや言葉遣い、あいさつについて共通意識を持てば、
個別対応する際も質の良いケアの提供が可能になり、
職場全体の評価が向上します。
自分が普段から正しい接遇を行えているか、
第三者の目で振り返る良いきっかけにもなります。
接遇について学んだあとは、チェックシートで自分自身の接遇を振り返ってみましょう。
「敬語で話ができているか」「身だしなみは適切か」など、
基本的な項目を定期的にチェックすることポイントです。
このように普段から接遇の意識を持つことが、介護士としてのスキルアップへとつながります。
「接遇」は介護現場で欠かすことのできない接客技術です。
正しい接遇マナーで接することで、利用者の方や家族との信頼関係を構築され、より質の高い介護サービスを提供できるようになるでしょう。
介護士のスキルアップにも重要な要素があります。
確かな接遇マナーを身につけて、より良いケアを提供できる介護士を目指しましょう。
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