訪問介護員とは要介護者(利用者)の居宅を訪問し、
日常生活の援助や身体介護などのサービスを提供する介護スタッフです。
この記事では、訪問介護員の仕事内容について詳しく解説していきます。
さらに、訪問介護員のメリットや魅力のほか、
訪問介護員の給料や必要な資格もご紹介いたします。
介護が必要な方の住まいを訪問し、
住み慣れた場所で自立した生活が送れるよう、
身体介護や生活援助などの訪問介護サービスを提供するのが訪問介護員の主な仕事です。
ホームヘルパーとも呼ばれ、高齢化が進む現代社会で年々ニーズが高まっています。
訪問介護員が活躍する場は、高齢者が生活を送る「自宅」です。
1人で暮らす高齢者だけでなく、家族と暮らす方など生活環境はさまざまです。また、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅など、高齢者の生活の場はたくさんあります。
サービス付き高齢者住宅は、主に民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅です。
訪問介護員は、高齢者が個人で契約する外部サービスとして居宅を訪問し介護サービスを提供します。
介護スタッフが常駐しない住宅型有料老人ホーム、都道府県ごとに登録される高齢者専用の賃貸住宅も、訪問介護員が活躍する場所。
いずれも訪問介護員は訪問介護事業所に勤務し、これらの訪問先を訪れ、
掃除や洗濯といった生活援助の他、必要であれば入浴や排泄介助といった身体介護を行います。
厚生労働省の調査によると、訪問介護員の7割近くが非正規職員です。
年代別で見ると60歳以上の方が約4割を占め、全体の約9割が女性職員です。
訪問介護員は身体介護の他、掃除や洗濯、調理といった生活支援も求められる仕事。
これまでの家事スキルが活かされることが、これらのデータに反映されていると考えられるでしょう。
【参考】
訪問介護員は、介護保険法で指定された「身体介護」と「生活援助」サービスを提供します。
具体的な内容は以下のとおりですが、
詳細なルールについては自治体ごとに定められている場合もあります。
身体介護は、利用者の方の身体に直接触れるケアです。
要介護度の高い方や、ひとり暮らしで入浴や移動に不安がある方には必要です。
生活援助は、利用者の方の日常生活を支えるための介護サービスです。
ひとり暮らしの方だけでなく、家族が仕事や傷病を抱えている場合にも求められます。
訪問介護員は利用者の方の生活を支える仕事ですが、
家事代行業ではないため、仕事内容は介護保険法で定められています。
そのため、「利用者本人以外のためのこと」や「行わなくても日常生活に支障が出ないこと」などは提供できません。
以下のできること・できないことの中でも、詳細なルールは市町村ごとに異なります。
介護サービスはそれらのルールをもとにしたケアプラン(介護計画書)によって提供されるため、事前によく確認しておきましょう。
利用者の方の体に直接触れる身体介護は、日常生活で必要な動作の自立を支援するために行われます。
そのため、日常生活外と判断されるものはサービスの対象外となります。
できること | ・ 体位変換、移乗、移動、食事、入浴、排泄介助全般
・ 通院に必要な乗車、降車のための介助 ・ 受診等の手続き |
できないこと | ・ 受診待ち中の付き添い
・ 利用者やヘルパーの自家用車を利用した送迎業務 |
生活援助の内容はさまざまですが、利用者の家族ためのサービスや、日常生活に必要ないと判断されるものは提供できません。
たとえば、利用者の方と配偶者ふたり暮らしの居宅の場合、利用者の方の食事を用意することはできても、配偶者の分の食事の調理は認められていないのです。掃除の範囲や買い物内容などについても、以下のように細かく定められています。
できること | ・ 一般的な調理
・ 利用者の方の居室の掃除 ・ 日常生活に最低限必要な品物の購入 ・ 通院、日常生活の買い物同行 |
できないこと | ・ 家族のための調理や、行事用の調理
・ 利用者の方が使用していない部屋の清掃 ・ 庭木の手入れや花木の水やり ・ ペットの世話や大掃除 ・ 嗜好品や来客用の買い物 ・ 美容院やケアプラン外の散歩の同行 |
医師、看護師、歯科医師などが行う医療行為は、基本的に介護職員は行えません。
しかし、医療行為ではない医療的ケアは、訪問介護員も提供できます。
できること | ・ 爪切り、爪やすり
・ 口腔ケア ・ 利用者の方がインスリン注射を行う際の見守りと確認 ・ 専門的な判断、スキルの必要が無い処置 ・ ストーマ(人工肛門)のパウチに溜まった排泄物の処理 ・ 摘便 ・ 血糖測定 |
できないこと | ・ 爪に異常がある場合の爪切り
・ 重度歯周病患者の口腔ケア ・ 利用者の方へのインスリン注射 ・ 専門的判断が必要な傷や、褥瘡の処置 ・ ストーマ(人工肛門)につながったパウチの取り換え ・ 浣腸 ・ 血糖測定の声かけや数値の確認 |
訪問介護員として働くためには、
都道府県または都道府県が指定した研修事業所による「介護職員初任者研修」を修了している必要があります。
事業所によっては無資格から仕事を始めることもできますが、
研修を修了していなければ身体介護サービスを提供できません。
ここからは、訪問介護員に求められる資格についてご紹介いたします。
介護初任者研修は介護の入門編とも言われる資格です。
2013年4月から制度が改正され、
それまでの「訪問介護員養成研修2級課程(ヘルパー2級)」から名称が変更されました。
受講資格はなく、カリキュラム修了後の試験に合格すれば資格を取得できます。訪問介護員を目指すのであれば、まず取得しておきたい資格です
受講資格 | ・ なし |
カリキュラム内容 | ・ 130時間(10項目)
・ 修了試験(筆記・追試験あり) |
質の高い介護サービスを提供することを目的とした、初任者研修の上位に位置づけられる資格です。
2017年より、介護福祉士試験の受験資格のひとつに義務付けられました。
初任者研修のカリキュラムに加え、「たん吸引や経管栄養の基礎知識」が含まれており、
実務者研修を修了すれば訪問先でたん吸引や経管栄養を行うことが可能。
訪問介護員としてのスキルを高めたい方、将来的に介護福祉士資格を目指す方にとっては必須の資格です。
また、訪問介護事業所に設置が義務付けられている「サービス提供責任者」として勤務できるようになります。
受講資格 | ・ なし |
カリキュラム内容 | ・ 450時間(20項目・保有資格によって一部免除あり)
・ スクールによって修了試験あり(筆記・追試験あり) |
社会福祉専門職唯一となる国家資格です。
介護の専門性が高まるだけでなく、介護者やスタッフへの助言・指導が可能となります。
資格取得のためには、以下の3つのルートを修了後、国家試験に合格する必要があります。
現場ではチームリーダー的な役割を担う他、給与アップを期待できる資格です。
受験資格 | ・ 実務経験ルート
実務経験3年以上+実務者研修(または基礎研修+喀痰吸引等研修) ・ 福祉系高校ルート 福祉系高校の卒業(平成21年度以降入学者は+実務経験9ヶ月以上) ・ 養成施設ルート 高等学校卒業後、介護福祉士養成施設(1年または2年)を卒業する |
試験科目 | ・ 11科目
・ 実技試験(福祉系高校ルートの一部に必要) |
令和元年度の調査によると、訪問介護員正職員の平均月給は216,583円です。
非正規職員の平均時給にいたっては1,290円と、介護職員よりも若干高い傾向にあります。
業務にあたるうえで初任者研修修了が必要であること、
また訪問介護は人材不足な現場であることが給与に反映されていると言えるでしょう。
訪問介護員 | 介護職員 | 介護労働者全体 | |
正規職員(月給:円) | 216,583 | 215,502 | 234,439 |
非正規職員(時給:円) | 1,290 | 1,004 | 1,189 |
介護士は入居施設や通所施設など、活躍する場の多い仕事です。
その中でも、訪問介護員の職場に対する満足度は高く、
全体の65.7%が「今の勤務先で働きたい」という希望を持っています。
一体何が訪問介護員の満足度につながっているのか、
訪問介護員として働く魅力、メリットについてみていきましょう。
非正規職員が多いことからも分かるように、
訪問介護員は働く時間帯を選びやすい仕事です。
事業所によっては、午前のみ、午後のみといった働き方も選択できます。
サービス時間はケアプランで定められているため、短時間のみ働けるケースが多いこともポイント。
子育てや家事と両立できることも、大きなメリットとなるでしょう。
訪問介護サービスは、ケアプランに定められた時間内に提供しなければいけません。
サービス内容によっては、掃除や洗濯、調理といった複数のサービスを同時に行う必要があります。
利用者の方の冷蔵庫にあるもので、その日の食事だけでなく翌日の朝食分を用意するケースもあるのです。
そのため家事に自信のある方にとって、
訪問介護は家事スキルを大いに活かすことのできる仕事。
自分の長所に介護の専門知識を取り入れれば、より質の高いケアの提供へとつながるでしょう。
訪問介護員は、介護の入門資格である介護職員初任者研修から始められる仕事です。
実務者研修を修了すれば、訪問介護所の調整役を担うサービス提供責任者として勤務が可能。
実務経験を重ねれば、将来的に介護福祉士資格の取得が目指せます。
給与アップも期待できるため、将来的なキャリアを視野に入れながら、やりがいを持って働くことが可能です。
訪問介護員は高齢者の自立した生活を支援する役割を担っています。
多くの人材が求められており、事業所によっては高い時給が期待できる仕事です。
多様化する介護ニーズとともに、サービス付き高齢者住宅や高齢者専用住宅など、活躍の場が広がっていることもポイント。
高齢者が安心して在宅生活を送るためにも、その活躍は今後ますます期待されていると言えるでしょう。
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