利用者の方が通いで利用する通所介護(デイサービス)では、送迎業務が必須です。
送迎中には、転倒事故や交通事故の恐れがあるだけでなく、不適切な駐車が近隣住民の方への迷惑になってしまうこともあります。
そこで、本記事では通所介護の送迎における注意点・介護の送迎車に求められるマナーや知識について詳しく解説していきます。
通所介護とは、要介護者の自立した在宅生活を支援するための介護保険サービスです。
デイサービスとも呼ばれ、食事や入浴、排せつ介護のほか、機能回復訓練を行います。利用者は自宅から事業所へ通うため、「送迎サービス」が必要です。
交通手段がない方でも外出の機会を得られ、要介護者の孤立を防ぐ役割もあります。
通所介護の送迎サービスには、自宅から事業所までの送迎のほか、乗降時の介助も含まれています。
車いす専用車両であれば、固定フックをかけた後リフトを操作し、車いすのまま車に乗り込むことが可能です。
またご家族が不在の場合には、居宅内での介助が必要です。
通所前の更衣や排せつを介助するほか、一緒に戸締りを確認することもあります。
事業所内では、適切にサービスを提供したことを示す送迎記録の作成が必要。
送迎時間の記録は、送迎ルートの検討や時間の把握にも役立ちます。利用者の方が体調不良や通院で利用を休んだ日には、その日の送迎ルートを組み直す必要もあるでしょう。
このように、通所介護の送迎サービスは利用者の方を送り届けるだけでなく、介護サービスに携わっているのがポイント。
利用者の方が安全に通所介護へ出かけ、必要な介護サービスを受けながら在宅生活を送るための役割を担っています。
通所介護の送迎業務は、タクシーとは異なる「自家輸送」扱いとなります。
そのため、普通自動車第一種免許があれば送迎業務は可能です。
バスなどを利用する事業所であれば、大型(中型)自動車免許が必要な場合もあるでしょう。
また、送迎業務には介護資格は必須ではありません。
しかし利用者の方の送迎には、介護の入門資格である介護職員初任者研修がおおいに役立ちます。
ドライバーの求人には初任者研修修了を条件にあげているものもあるため、転職時にも有利になるでしょう。
通所介護の基本報酬には、送迎サービスにかかわる報酬が含まれています。
そのため、何らかの理由で送迎を行わなかった場合には「送迎減算」が適応されます。
減算単位は、片道47単位、往復で94単位。
通所介護事業所が提供する宿泊サービスを利用した場合にも、送迎減算の対象となります。
また、送迎車両の使用の有無ではなく、あくまでも送迎の有無が対象のため、職員が徒歩で送迎を行った場合は減算対象にはなりません。
通所介護のほか、通所リハビリや認知症対応型通所介護も同様です。
通所介護の送迎サービスは、原則として事業所と自宅間のみとされています。
ただし、地域や事業所によっては、自宅外への送迎も可能です。
認められる主なケースは「送迎先が日常生活の拠点になっている」「送迎先が家族等の家である」など。
例えば、認知症の方を家族のいない自宅に送迎することが危険だと判断される場合もあります。
事業所としては、あくまでも利用者の方の安全を第一に、ケアマネジャーを介して適切に判断する必要があります。
通所介護の送迎サービスは、利用者の方を安心安全に送り届けることが大切です。
また、前述したように介護サービス提供者としての役割も担っています。
ここからは、通所介護の送迎サービスの注意点について確認していきましょう。
運転時は飲酒をしないのは、ドライバーとして最低限のルールですよね。
しかし、運転業務の場合には前日の飲酒にも注意が必要です。
アルコールの分解スピードには個人差がありますが、一般的に体重60~70kgの人が1時間に分解できるアルコールは5~7g。
ビール500ml(アルコール含有量20g)のアルコールを分解するためには、3~4時間必要だと言われています。
体質的にお酒が弱い方や女性の場合には、アルコールの分解にはさらに時間がかかります。
酒量が増えれば、朝になっても体にお酒が残っている可能性もあるのです。
寝不足や二日酔いは運転に影響するため、飲酒にはくれぐれも注意しましょう。
【参考】アルコールが体に入ると・・・|DRINK SMART お酒の正しい付き合い方を考えよう|サントリー
道路交通法では、運転時には運転免許証の携帯が義務付けられています。
また、送迎中のトラブルに対応するためにも、携帯電話は必須です。
運転免許証と携帯電話を忘れていないか、運転前には必ず確認することが大切。特に、出勤後に着替える場合には注意が必要です。
送迎時には常に時間のゆとりを持って、持ち物や安全確認をしっかり行うように心がけましょう。
事業所から居宅への運行ルートは、その日によって異なる場合もあります。
特に、初めて訪れる送迎先の場合には、事前にしっかりとルートを把握しておくことが大切です。
車を停車する際の注意点や利用者の方の健康状態などについても、事前によく確認しておくようにしましょう。
送迎時の事故リスクとして考えられるのが、車いすの方の転倒です。
車いすの方を送迎する場合には、乗降時にスロープやリフトを利用する必要があります。
そのため、固定フックの使用方法や手順を正しく理解しておかなくてはいけません。
固定後はゆるみやズレがないよう、必ず安全確認を行いましょう。
また、安全のために欠かすことができないのがシートベルトです。
腰の部分だけを固定する2点式のシートベルトの場合、万が一の際に上半身が激しく揺さぶられ、重大な被害につながる恐れもあります。
車いすの方の送迎時にも、可能な限り3点式のシートベルトを使用し、急ブレーキ急発進を回避した安全運転を努めましょう。
警察庁の調査によると、交通事故がもっとも起きやすいのは17時から19時の時間帯だと言われています。
これらの時間帯は、「自動車対歩行者」の事故が半数以上。日が暮れかけ、ドライバーから歩行者が見えづらくなることが事故の原因だと考えられます。
また、夕方は一日の疲れが出やすい時間帯です。
利用者の方を自宅に送り届けたあとも、最後まで気を抜かないことが大切です。
【参考】政府広報オンライン「夕暮れ時に歩行者が死亡する交通事故が多発!この時間帯の交通事故を防ぐには?」
送迎時には、利用者の方を介助するため車両から離れたり、道幅が狭く、本来駐車できない場所に車を停めることもあるでしょう。
送迎サービスのためとはいえ、周囲からの苦情や違反切符が心配になるかもしれません。
それらに対応するために必要となるのが「駐車許可申請書」です。
駐車許可申請書を得るためには、事業所が管轄の警察署に申請する必要があります。
交付対象となるサービス形態は、訪問系サービスや地域包括支援センター、地域密着型サービスなど。訪問先に駐車場所がなく、駐車禁止場所に駐車せざるを得ない場合に申請可能です。
事業所が許可証を得ている場合には、フロントガラスの見えやすい位置に許可証を置きましょう。
とはいえ、一般車の往来を妨げるような不適切な駐車をすると、許可証を取り消される場合もあるので注意が必要です。
違反切符を切られないためにも、送迎時の駐車位置に関しては事業所全体で共通認識を持つように努めましょう。
通所介護の送迎業務は、あくまでも介護サービスの一環であることを忘れてはいけません。
介護サービスを提供するものとして、知っておきたいマナーとサービスについてみていきましょう。
好感のもてる身だしなみは、介護サービスの基本です。
送迎業務は、利用者の方のご家族と対面する機会も多い仕事。気持ちの良いあいさつも、大切なマナーのひとつとなります。
適切な身だしなみとあいさつは、利用者の方やご家族との信頼関係につながります。
信頼関係が構築されれば新たなニーズが見出され、より良い介護サービスが提供できるようになるでしょう。
送迎時には、近隣住民に配慮した駐車マナーが必要です。
事業所の送迎車が、近隣の方の通行を妨げることがあってはいけません。
送迎は登下校の時間帯と重なることも多いため、通学路の場合は特に注意が必要です。
駐車する場所がスクールゾーンに該当していないか、事前に確認しておきましょう。
送迎は、その日の介護サービスの始まりと終わりを印象付けるものです。
送迎中の車内は、利用者の方に配慮した空間づくりを意識しましょう。
その方に合った会話を提供するほか、音楽を流すのもおすすめ。
打ち解けた空間で会話するなかで、利用者の方の悩みや心配事が見つかる場合もあります。
通所介護の送迎サービスは、安心安全であることが第一です。
そのうえで、事業所と利用者の方、ご家族をつなげる役割も担っています。
利用者の方のニーズを引き出し、より良いサービスにつなげるためには思いやりの心が大切。
安全運転はもちろん、介護サービス提供者としてのマナーを心がける必要があります。
利用者の方の健康と生活を支える介護スタッフとして、笑顔で送迎業務にあたりましょう。
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