機能訓練指導員は、介護や医療の現場で活躍する仕事です。
人手不足が懸念される介護現場では、リハビリを専門に担う機能訓練指導員のニーズが高まっています。
対象となる資格は7種あり、保有資格によって仕事内容が異なります。
こちらの記事では、機能訓練指導員の仕事をわかりやすく解説。
年収や将来性なども合わせて紹介していきます。
機能訓練指導員は、高齢者一人ひとりに合ったリハビリプログラムを提案し、指導を行う機能訓練のプロフェッショナルです。
対象となる資格を取得することで、機能訓練指導員として働くことが可能となります。
機能訓練指導員は業務上の役割を示す呼称であり、資格の名称ではないため注意しましょう。
令和元年度の調査によると、人手不足を感じる事業所は全体の65.3%。
その数は年々増加傾向にあります。
人手不足が常態化している介護現場にとって、医療やリハビリに関する資格を有した機能訓練指導員は、心強いスタッフなのです。
医療的なリハビリは医師の指示のもと行うのに対し、機能訓練は、ケアマネジャーとの連携のもと実施されます。
具体的な訓練や仕事内容は、主に以下のとおりです。
施設によっては個別訓練のほか、集団を対象とした介護予防体操なども担当します。
必要に応じ、身体介護や送迎業務を担うこともあるでしょう。
【参照】厚生労働省「令和元年度介護労働実態調査の結果と特徴」
機能訓練指導員として働くためには、以下のいずれかの資格が必要です。
機能訓練指導員は、保有資格により仕事内容が変化するのが特徴です。それぞれ詳しく掘り下げていきましょう。
看護師資格を保有する機能訓練指導員は、利用者の方の病気やケガの処置に対応できます。
医療知識を活かし、健康状態や体調管理をふまえたリハビリ訓練が可能です。
通所介護施設では看護師と兼務する訓練指導員も少なくありません。
リハビリに関する技術は、働きながら身につけるケースが多く見受けられます。
作業療法士は、入浴や更衣、食事といった日常生活動作を支援するリハビリ専門職です。
介護施設では、日常生活に役立つ生活動作の訓練を行います。
そのほかにも、歩く、立つといった基本的動作や、レクリエーションを通した心身のケアを行うのが特徴です。
レクリエーションの企画立案は、介護の重要な仕事のひとつ。
作業療法士である機能訓練指導員は、その点でも現場で重宝されると考えられます。
理学療法士は、立つ、起きる、歩くといった基本的な身体機能を回復するためのリハビリテーションを行う専門職です。
機能訓練指導員の役割と重なる点も多く、多くの現場で求められる資格となります。
機能訓練指導員としての仕事内容は、歩行訓練のような運動療法や、超音波などを用いた物理療法です。
一人ひとりに合ったプログラム作成、実施、運動機能評価を行いながら、身体機能の維持向上を図ります。
話す、聞くといったコミュンケーションの分野だけでなく、食べ物を噛んだり飲んだりといった嚥下障害の分野にも関わる資格です。
機能訓練指導員として働く場合は、言語訓練だけでなく、口腔機能に関するリハビリ指導を行います。
ものを飲み込む力が弱まると、食べ物が肺に入り誤嚥(ごえん)を引き起こす可能性もあります。
介護の現場では、特に食べる力を維持するためのリハビリが求められるでしょう。
柔道整復師は、骨折や脱臼といったケガに対し、整復や固定などの治療を行う資格です。
国家資格であり、主に接骨院の先生やスポーツトレーナーとして活躍します。
骨や関節、筋や靭帯の損傷は高齢者に多くみられ、介護施設での活躍も期待される資格です。
あん摩、マッサージ、指圧といった手技を用い、身体の不調を改善する国家資格です。
患部をなでる、押す、揉むなどの手技により、ツボに刺激を与え血行を促進します。
介護現場でも同様の手技を用い、利用者の方の首のコリ、筋肉のハリをほぐすとともに機能訓練を実施していきます。
国家資格である「はり師」と「きゅう師」、両方を保有する鍼灸の専門家です。鍼(はり)や灸(きゅう)で患部やツボに刺激を与え、病気の治療や予防にあたります。
鍼灸師は、平成30年から新しく機能訓練指導員の要件に追加された資格です。
対象となる資格のなかでは、鍼灸師のみ実務経験が必須となっています。
機能訓練指導員が在籍する施設で半年以上実践を積み重ねることで、機能訓練指導員としての勤務が可能です。
機能訓練指導員は、多くの介護福祉施設や医療現場で活躍する仕事です。
介護施設のなかには、配置が義務付けられている施設もあります。
高齢者が日中通う通所介護(デイサービス)、短期入所する短期入所生活介護(ショートステイ)には1人以上の機能運動指導員の配置が義務付けられています。
入所施設である特別養護老人ホームも、機能運動指導員が配置される施設です。
これらの施設では、以下の方を対象に個別機能訓練加算が算定できます。
また、介護予防施設でも、機能訓練指導員を配置することによって運動機能向上加算を算定が可能です。
加算 | 対象施設 | 対象者 |
運動器機能向上加算 | ・介護予防通所リハビリテーション
・介護予防通所介護事業者 ・介護予防通所介護(介護予防通所型サービス) |
・要支援1または要支援2
・地域包括支援センターなどで事業対象者に該当した高齢者 |
個別機能訓練加算 | ・通所介護(デイサービス)
・短期入所生活介護(ショートステイ) ・特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設) ・特定施設入居者生活介護 |
・要介護1~要介護5 |
加算を算定する場合、機能訓練指導員は利用者の方の長期目標と短期目標を設定し、個別に機能訓練を行います。
運動機能は定期的に評価され、身体状況に応じた訓練を実施することが可能です。
介護福祉施設で活躍する機能訓練指導員は、施設形態やサービス内容によって役割が異なるのが特徴です。
デイサービスのように、利用者の方の介護度が比較的低い介護施設では、身体機能の向上が大きな目的となります。
ADLを向上させ、生活の幅を広げながら社会参加を目指していくのがポイントです。
一方、特別養護老人ホームや有料老人ホームといった入居型の施設では、生活のなかでできることを増やす訓練が中心となります。
身体機能向上に重きを置くのではなく、よりスムーズな日常生活動作を目標とするのが特徴です。
また、身体介護や利用者の方の送迎など、訓練以外の役割も担うケースが多くなります。
介護老人保健施設、病院併設型リハビリテーション、介護療養型医療施設といった医療施設でも、機能訓練指導員の活躍は求められています。
入居者は比較的介護度が高く、病気や障がいを抱える方が多いものの、長期的に入所することはありません。
そのため、在宅復帰する場合は、機能訓練の役割が特に重要になってくるのです。
身体状況と住宅環境を照らし合わせ、必要と思われる福祉用具を提案する場合もあります。
医療や看護、ケアマネジャーなどと連携をはかりながら、施設を退所したあとの生活に向けた訓練を進めていくことになるでしょう。
厚生労働省の調査によると、令和2年度の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を含む機能訓練指導員の月給は358,560円です。
ほかの介護従事者と比較しても、機能訓練指導員の給与は比較的高いことがわかります。
実際には、施設の形態や保有する資格によって給与は異なってくるでしょう。
職種 | 常勤(単位/円) | 非常勤(単位/円) |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士または機能訓練指導員 | 358,560 | 261,900 |
介護職員 | 315,850 | 196,630 |
看護職員 | 379,610 | 249,190 |
【参考】厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概況」
対象となる国家資格を有していると、多くの現場で機能訓練指導員として勤務できます。
それぞれの施設で異なる目的に対応しながら、スキルをあげるために役立つのが研修会や講習会です。
日本鍼灸師会や全国病院理学療法会などでは、機能訓練指導員のための以下のような会が開催されています。
詳細は年度によって異なるため、参加希望の場合は各協会への問い合わせを検討ください。
機能訓練指導員実務者研修会 | |
日時 | ・令和2年12月6日および13日 |
場所 | ・東京都柔道整復師会館 |
受験資格 | ・機能訓練指導員であること |
受講費用 | ・柔道整復師会会員、または日本鍼灸師会会員 10,000円
・その他の機能訓練指導員 30,000円 |
受講内容 | ・機能訓練指導員の役割
・認知症サポーター養成講座 ・機能訓練指導員としての対象者アセスメント支店 ・安全管理と運動の実際 ・栄養学 ・口腔機能と嚥下機能 ・福祉用具と住宅改修 など |
申込先 | 日本機能訓練指導員協会事務局
【参照】公益社団法人日本鍼灸師会「令和2年度 認定機能訓練指導員実務者研修会」のお知らせ |
運動療法機能訓練技能講習会 | |
日時 | ・7月~1月までの土、日、祝日
(2月に認定試験あり) |
場所 | ・神奈川県、大阪府 |
受講資格 | ・機能訓練指導員 |
受講費用 | ・会員 10万円
・非会員 18万円 (その他技能試験、技能認定料が必要) |
受講内容(200時間) | ・リハビリテーション概論
・神経内科、脳神経外科 ・整形外科 ・老年医学 ・臨床心理学 ・社会福祉概論 ・運動学 ・理学療法評価 ・理学療法(運動療法) ・日常生活動作(ADL) ・介護 |
申込先 | ・全国病院理学療法協会 |
少子高齢化問題により「要介護状態を予防するための支援」に注目が集まっています。
高齢者一人ひとりに合った訓練を指導する機能訓練指導員は、介護予防の現場でもニーズの高い仕事です。
また、介護が必要な方が入居する施設では、日常生活動作の向上を目指した訓練が求められます。
このように、機能訓練指導員はさまざまな場で活躍が期待される仕事です。
対象となる資格を保有されている方、これから取得を目指す方にとっては、介護・医療施設で働く際の選択肢のひとつとなっていくでしょう。
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