介護の仕事をしていると、利用者の方の状況に応じ「清拭介助」が必要になります。この記事では、清拭介助の手順を詳しく解説します。あわせて介助に必要な道具や具体的な注意点も紹介しています。頭や胸、腕や足といった部位ごとの清拭法も、ぜひ参考にしてください。
清拭とは入浴できない方の身体を、温かい蒸しタオルなどで拭くケアです。身体を清潔に保つために、入浴介助がありますが、体調が悪かったり、体力が弱っているときの入浴は体に負担がかかります。
そのような場合は、ベッド上で身体を拭く「清拭介助」が必要となります。より良い清拭介助を行うためには、以下のような目的や効果を理解しておくことが大切です。
皮膚を清潔に保つことは、感染予防につながります。また、体位を変えながら身体に触れるため、褥瘡予防にも効果的です。直接皮膚に触れて目視すれば、身体の異常を発見できます。温かいタオルで身体を撫でるため、入浴と同様に血行促進効果も期待でき、体が温まることにより、利用者の方にリラックスした気分を感じてもらえるでしょう。
清拭前にチェックしておきたいのが、以下の3つのポイントです。スムーズに清拭介助を行うために、しっかりと確認しておきましょう。
清拭前は利用者の方の体調確認を行います。血圧や体温を測定し、体調に変化がないことを確かめましょう。体調に合わせて、上半身や下半身のみといった部分清拭に変更する配慮も大切です。
清拭介助をするときの理想の室温は23~25℃です。特に、夏場の冷房の効きすぎには注意が必要です。ベッドで温まっている状態から肌を露出すると温度差を感じやすいため、冬場の温度調整も気を付けましょう。
清拭前には手順を振り返り、物品はすぐ手に取れるよう、必要な場所にセットしておきます。「タオルが足りない」「石鹸がない」など、介助を始めてから慌てることがないようにしましょう。
また利用者の方の体調や身体状況によって、必要な介助は異なります。部分清拭か全身清拭によっても手順は違ってくるため、事前によく確認しておきましょう。
清拭にはタオルや石鹸以外にもいくつかの清拭グッズが必要です。介助を始めてから慌てないよう、事前に確認しておきましょう。
タオルは利用者の方の身体を拭くものと、身体をおおう大きめのものを準備します。陰部を拭くためのタオルやガーゼは別に用意しましょう。
利用者の方の身体は、蒸しタオルで拭いていきます。そのため、50~55℃のお湯をはった洗面器やバケツが必要です。お湯は最後に用意すれば、冷めてしまう心配もありません。陰部を洗浄する際は、専用の陰洗ボトルも準備します。
高齢者の肌は乾燥しがちなので、石鹸は低刺激性がおすすめです。陰部専用のソープもあります。必要に応じて使い分けましょう。
清拭中は感染予防のために手袋を使用します。必要に応じ、ビニールエプロンも準備しましょう。
下着などの新しい衣服は、手の届く場所に準備しておきましょう。皮膚の乾燥を防ぐためのクリームやパウダーなどを使用する場合もあります。
清拭中は以下の3つポイントに気を付けながら介助を行います。利用者の方が安心できる正しい方法をマスターしましょう。
清拭介助は10分以内に終わるのが理想的です。長時間にわたると、利用者の方に負担をかけてしまいます。手際よく進めるためには、必要な物品を準備し、流れをよく確認しておくことが大切です。
清拭介助では利用者の方の体調確認も行いましょう。特に清拭中は皮膚疾患がないか確かめることが大切です。褥瘡が見られたり、普段と違う状態を発見した際は、すみやかにケアマネジャーや医師に報告しましょう。
清拭は身体の中心から末端に向かって行うのが基本です。胸やお腹を拭くときも、身体の中心から円をかくようなタオルの動かし方を心がけましょう。
準備や注意点をふまえた上で、詳しい手順を確認しましょう。それぞれの介助を思い浮かべながらイメージトレーニングすると、実際の介助にも役立ちますよ。
清拭介助は利用者の方に声かけをしてから始めます。「体調はいかがですか」「身体を拭いていきますね」と声をかけ、必ず本人の了解を得てから始めましょう。利用者の方の身体を冷やさないよう、拭く部分だけ脱衣します。
準備したタオルはお湯で濡らし、しっかりと搾ります。拭く前には、必ず濡れタオルの温度を自分の肌で確認しましょう。皮膚の薄い手首の内側にタオルを当て、心地よい温度が保てていることを確かめます。
高齢者の皮膚は傷つきやすいため、力を入れてこすってはいけません。固まった目ヤニなどは、蒸しタオルで柔らかくしてから拭き取りましょう。
清拭は「気持ち悪いところはありませんか?」「寒くないですか?」など声をかけながら行うことがポイントです。利用者の方が、リラックスした状態で介助を受けられるよう心がけましょう。清拭後、利用者の方の体調に変化がないか確認することも忘れないようにしてください。
必要に応じ、保湿剤などのクリームを皮膚に塗布します。その後、用意した衣服に着替え清拭介助は終了です。ベッド上での清拭介助でも、更衣はすべてを介助するのではなく、利用者の方のできない動作のサポートを念頭に置きましょう。声をかけながら残存機能を活用することが、利用者の方の自立支援につながります。
清拭は、「顔→耳→首→手・腕→胸→腹→背中→臀部→足→陰部」の順に行います。それぞれの正しい清拭方法をチェックしていきましょう。
頭部はあらかじめ蒸しタオルで頭全体を包み、上からビニールをかけ温めておきます。全身清拭の場合は、蒸らしている間に身体を拭くと良いでしょう。頭皮が十分に蒸されたら、ドライシャンプーを用いて洗浄します。頭皮をマッサージするように洗浄し、きれいな蒸しタオルで拭きとってからドライヤーで乾かします。
顔はまだ使用していないきれいなタオルで拭いていきます。目ヤニが付いている場合は、蒸しタオルで柔らかくしてから拭き取りましょう。目頭から目尻、鼻から頬と、中心から外側に向かってやさしく拭くのがポイントです。
耳の後ろや首のシワの間は汚れがたまりやすい箇所です。耳の中も忘れないように拭きましょう。首は縦ではなく、横にタオルを動かしながら拭いていきます。
腕の清拭のポイントは指先から肘、脇へ向かって拭いていくことです。心臓から離れた場所から中心に向かって撫でる方が、血流が促進されます。腕は持ち上げるのではなく、手首のあたりを下から支えるように心がけましょう。指の間や脇の下といった、細かい部分もていねいに拭いていきます。
鎖骨部分は身体の中心から肩へやさしく撫でるように拭いていきます。そのあとに、胸の部分へと移りましょう。中心から外側へと、円を描くようにタオルを動かします。乳房の下は汚れがたまりやすいため、ていねいに拭き取るよう心がけましょう。
脇腹部分は上から下へと縦方向にタオルを動かします。腹部は、おへそを中心に外側へ円を描くように拭いていきましょう。お腹の調子がよくない方には、蒸しタオルで下腹を温めるケアもおすすめです。
身体が倒れないように気を付けながら、横向きに寝た状態に体位変換を行います。背骨から左右に向かって、タオルを動かしましょう。肩から腰へと、下に向かって拭いていくのがポイントです。
寝たり座ったりするときに力のかかる臀部は、褥瘡の起こりやすい場所です。そのため、臀部の清拭は温かいタオルでやさしく念入りに行いましょう。左右それぞれ、円を描くように撫でながら血行を促進します。
足の清拭は少しひざを曲げた状態で行うのがポイントです。腕と同様、血流を良くするために足先から始めます。足首の部分をやさしく持ち、足が倒れないように支えましょう。汚れがたまりやすいのは、足の指やひざの裏です。これらの部分もていねいに拭きながら、脚の付け根へ向かってタオルを動かします。
陰部の清拭は、陰部から肛門へと拭き取るのが基本です。陰部洗浄には、別のタオルやガーゼを使用します。可能であれば、利用者の方に自分で拭いてもらえるようお願いしてもいいでしょう。必要に応じ、陰洗ボトルのお湯で汚れを洗い流します。
清拭は、利用者の方にさまざまな良い効果をもたらします。身体の清潔を保つだけでなく、感染予防や血行促進につながります。介護士としては、皮膚や身体の異常発見も大切な役割です。身体がさっぱりきれいになるのは、健康な方でも気持ちの良いものですよね。清拭には、身体だけでなく心の健康につながる効果もあると考えられます。
利用者の方が安心して介助を受けられるよう、入念な準備と正しい手順で清拭介助ができるようにし、介護士として心身の健康をサポートしていきましょう。
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