高齢者の健康にかかわる排泄介助は、自立支援にもつながる大切なケアです。介護現場では、プライバシーに配慮したケアが求められます。こちらでは、排泄介助の具体的な方法と注意点を解説いたします。基本的なトイレ介助のほか、ポータブルトイレの介助法、ベッド上でのオムツの交換などもぜひ参考にしてください。
介護士が行う排泄介助には、利用者の方の自立を支援し、プライバシーを守るための6つの注意点があります。
排泄介助に悩む前に、まずはひとつずつ確認していきましょう。
排泄介助は、利用者の方の自尊心を大切にしながら行います。事前に声かけをしたり、周囲の目に触れないようにしたりと、利用者の方への配慮を忘れないようにしましょう。「自分がケアされるなら」という視点を持って排泄介助にあたることが大切です。
プライバシーの確保は、自尊心への配慮とともに心がけたい重要な項目です。トイレ介助を行うときは、可能な限りその場を離れます。必要に応じてひざの上にバスタオルをかけ、肌の露出を防ぎましょう。ほかの方がいる部屋でオムツ交換するときは、カーテンを引き他者の視線をさえぎります。
排泄介助は、利用者の方の自立支援を意識しながら行うことが大切です。介護士は、利用者の方ができない部分だけを手伝いましょう。日々の何気ない動作であっても、できることは自分で行えば生活機能の維持向上につながります。
排泄の時間に合わせてトイレ誘導すると、よりスムーズな介助が行えます。起床時や食事後など、利用者の方の排泄時間を把握しておきましょう。
また、認知症患者の方には介助を受け入れてもらうための適切な声かけが必要です。「食事の前にトイレに行っておきませんか」「お手伝いさせてもらえませんか」など、排泄のタイミングに合わせてトイレへと誘導しましょう。
高齢者は、トイレへ行く回数が増えるからと水分摂取を控えがちです。しかし、脱水や熱中症を防ぐためには、こまめに水分摂取しなくてはいけません。
利用者の方が水分を控える傾向が見られるときは、水分補給の声かけをしましょう。脱水予防になるだけでなく、便秘予防にもつながります。
時間がないからと、「早く早く」と排泄を促していないでしょうか。利用者の方の排泄のペースを乱すと、心理的なストレスとなり、タイミングを失ってしまう可能性があります。
また、トイレに間に合わず、失敗することがあっても責め立ててはいけません。さらに排泄のペースを乱す原因となってしまうため気を付けましょう。
排泄介助の方法は、利用者の方の身体状況に応じてさまざまです。トイレまで歩ける方と、ベッド上で過ごす方とでは介助法も異なるでしょう。
また、介護士としてどの方法が利用者の方の自立支援につながるのか、検討していくことも大切です。ここからは、高齢者の身体状況に応じた排泄介助の方法を紹介します。
介助による歩行や見守り歩行が可能な方は、安全確保しながらトイレへと誘導します。「トイレまで歩く」行為が、生活機能の維持向上へとつながるからです。自宅であれば、トイレまでの通路やトイレ内に手すりをつけると、より安心に介助できます。
「普段はベッド上で過ごすことが多い」「自力で起き上がれるが、トイレまでの歩行には不安がある」という方の場合は、ポータブルトイレを使用します。持ち運び型ポータブルトイレは、高齢者のベッドがある室内に設置できます。使用時は、ベッドからトイレまで安全な動線を確保しましょう。
「ベッド上から自力で移動できない」「自分で体位は変えられる」という方には、便器や尿器を使用します。これらの容器は、身体状況によって介助を受けなくても自分で利用できます。介護士はベッド上での使い方を正しく把握しておきましょう。
ベッド上で寝たきりの方や、便意や尿意がない方にはオムツの使用が適しています。漏れを防ぐために、オムツは体のサイズに合ったものを選びましょう。状況に応じ、内側に吸水パッドをあてて使用します。
ここからは、トイレ介助をするときに心がけたい注意点と手順を解説します。トイレでの排泄は、利用者の方にとって自然でストレスの少ない方法です。介護士としてよりスムーズな介助を心がけましょう。
トイレ介助は、利用者の方のできない部分をサポートしましょう。転倒の恐れがない場合は、「終わったら呼んでくださいね」と声をかけ、排泄中はドア越しに待機します。何かあってもすぐ対応できるよう、カギはかけずにおきましょう。利用者の方が落ち着いて排泄できるように配慮することが大切です。
トイレ介助は、以下のような5つの手順を追って行います。利用者の方を適切にサポートできるよう、事前に把握しておきましょう。
ポータブルトイレを使用する方は歩行が不安定なケースも多いため、より安全に留意しながら介助します。トイレ介助と同様に、「利用者の方の自立を支援する」という意識を持ちながらサポートしましょう。
ポータブルトイレを使用される方は、歩行や立位が不安定なことが多いため、なるべく目を離さないように心がけます。そのうえで、利用者の方のプライバシーを守れるよう、排泄中はひざ上をバスタオルで覆ったり、可能であれば仕切りをもうけましょう。
ポータブルトイレを使用した排泄介助は、ベッドからトイレまでの安全な動線を確保しながら、以下の手順で行います。利用者の方のプライバシーに配慮しつつ近くで見守り、安全に配慮しましょう。
よりスムーズに、プライバシーに配慮しながらオムツ交換するためには、必要な物品をきちんと準備しておくことが大切です。また、利用者の方に近い手は清潔な手、足元に近い手は不潔な手とし、使い分ける必要があります。ここからは、オムツ交換のときに準備する物品や手順、注意点を解説していきます。
オムツ交換の前は、以下の物品をなるべく利用者の方の顔から離れた場所に準備します。
また、オムツやパッドはあらかじめ開き、縦の中心で折って左右に伸ばしておきます。内側のギャザーも立てておきましょう。床に汚物を置かないように新聞紙の上にビニール袋を広げ、ベッドの高さを合わせたら準備完了です。
ここでは、利用者の方に側臥位になってもらうオムツ交換の手順を紹介します。利用者の方の負担にならないよう、スムーズな手順を把握しておきましょう。
オムツ交換時は「テープの貼り方」、「フィット感」、「中心線」をチェックします。テープは平行でなく、必ず上から下、下から上へ重なるようにはるのがポイントです。ギャザーはそけい部に合わせ、ぴったりとフィットさせると排泄物の漏れを防げます。同様に、前後の中心線をぴったりと合わせ、漏れや身体へのくいこみを防ぎましょう。
排泄の自立は、高齢者の生活の自立につながります。排泄介助は、利用者の方ができない部分をサポートする意識が大切です。介助の手順を知れば、利用者の方のプライバシーに配慮したスムーズな介助が行えます。
介護士として排泄介助に必要なポイントをおさえ、高齢者の自立した生活を支援していきましょう。
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