ホームヘルパー1級は2013年度末で廃止され、介護福祉士実務者研修へと位置付けられました。ヘルパー1級と実務者研修には、いくつかの違いがあります。特に、実務者研修は介護福祉士に大きく関わる資格です。こちらでは、ホームヘルパー1級を取得した方が介護福祉士を目指すメリットや、資格取得の流れについて解説していきます。
「ホームヘルパー1級」「ホームヘルパー2級」といった資格は現在、廃止されている資格です。2013年3月末(2012年度末)からは、「介護福祉士実務者研修」「介護職員初任者研修」へと引き継がれています。
ホームヘルパー資格は、かつては介護の仕事に携わるために必要な資格でした。「ヘルパー」という呼び名で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
介護福祉士実務者研修もまた、介護の仕事に役立つ資格であり、国家資格である介護福祉士になるために欠かせない資格でもあります。
ヘルパー1級から介護福祉士を目指す方は、まずはそれぞれの違いをしっかりと理解しておきましょう。
ホームヘルパー1級は、2013年3月で廃止された資格です。ホームが「家」、ヘルパーが「介助人」を意味するように、ホームヘルパーは自宅で介助をする人を指します。介護業界では「訪問介護員」と呼ばれ、高齢者の在宅生活を支援するのが仕事です。
ホームヘルパー1級は、ホームヘルパー2級修了者を対象としていた資格です。さらに、1級を受講するためには実務経験が必要でした。
現在、ホームヘルパー1級が介護福祉士実務者研修を受講する場合は、基本的スキルを有しているとみなされ、一部の科目が免除になります。
介護福祉士実務者研修は、ホームヘルパー1級と同等の資格です。ホームヘルパー1級であれば、実務者研修を条件とする求人にも応募できます。
ただし、ヘルパー1級だからといって実務者研修を名乗れるわけではありません。修了するためには、あらためて追加科目を受講する必要があります。
また、実務者研修は医療的ケアに関するスキルを持ち、介護福祉士試験の受験資格であることも大きな違いだといえます。
ホームヘルパー1級と実務者研修の違いのひとつに「医療的ケア」のスキルの有無があげられます。医療的ケアとは、痰吸引や胃ろうといった医療的な専門知識とスキルが必要なケアです。実務者研修の講習では、50時間をかけて医療的ケアに関する知識とスキルを身に付けます。
実務者研修の受講科目は全20科目(450時間)。ホームヘルパー1級を取得している場合は、そのうち355時間分の科目が免除となります。受講必須科目は、医療的ケア(50時間)と介護過程Ⅲ(45時間)の2科目です。
つまり、現在ホームヘルパー1級を取得し、新たに実務者研修を修了したいという場合は、費用も時間も大きく削減できることになります。
実務者研修は、介護職で唯一の国家資格である介護福祉士にも大きく関わる資格です。介護福祉士試験を受験するためには、以下の4つのルートがあります。
「実務経験ルート」は、介護職として働きながら資格取得を目指す方法です。実務経験3年以上と実務者研修修了、または実務経験3年以上と介護職員基礎研修および喀痰吸引等研修修了が受験資格となります。
「養成施設ルート」と「福祉高校ルート」は、それぞれ専門機関を卒業していることが受験要件です。高校によっては、実務経験や講習修了が必要となります。また「経済連携協定(EPA)ルート」は、日本と協定を結んでいるインドネシア・フィリピン・ベトナム3カ国で条件を満たしている方が対象です。
ホームヘルパー1級取得者の多くは、実務経験ルートが受験への近道だと考えられます。この場合、ホームヘルパーとしての実務経験が3年以上あったとしても、実務者研修修了が必須であることを覚えておきましょう。
ホームヘルパー資格が廃止になった背景には、少子高齢化問題が影響しています。2009年(平成21年)時点の高齢化率は22.8%。総世帯数4,801万世帯の約4割にあたる2,013万世帯に高齢者が暮らし、その半数以上は単独または夫婦のみといった状況でした。
一方で、2008年(平成20年)の介護職員数は128万人。今後増え続ける高齢者数と照らし合わせると、2025年(令和7年)には212万人から255万人の介護職員が必要になると推計されていたのです。
こういった状況を鑑み、政府は介護人材の安定的確保と質の向上を検討。特に、現場の中核を担う介護福祉士の資質向上を図る観点から、資格の取得方法の見直しを図ります。
当時は、介護福祉士を養成するための体制は複雑で、分かりづらい一面がありました。また、介護福祉士取得後のキャリアパスに十分な仕組みがないことも問題のひとつでした。
そのため、介護のキャリアパスを「初任者研修」「実務者研修」「介護福祉士」「認定介護福祉士」の順に統一。ホームヘルパー2級は初任者研修に位置づけられ、在宅や施設を問わず介護職の基礎知識やスキルを身に付けるための資格となりました。
さらに、ホームヘルパー1級は実務者研修と同等の資格として廃止されました。実務者研修から介護福祉士へと、介護福祉士への道筋が明確化されたのです。
介護のキャリアパスは、優秀な介護人材をより多く育成するために設けられた制度です。現在はホームヘルパーがその経験と知識を活かし、介護の現場でさらに活躍するための体制が整えられているといえます。
【参考】厚生労働省「今後の介護人材養成の在り方について(報告書)」
ホームヘルパー1級から介護福祉士を取得すると、以下の3つのメリットが生まれます。
実務者研修修了や国家試験の勉強など、介護福祉士になるためには時間と労力が必要です。しかし、長期的にとらえると、資格取得には大きなメリットがあると考えられます。
介護福祉士資格を取得すると、給与アップが期待できます。令和2年度の調査によると、介護福祉士の月給は329,250円。一方、実務者研修の月給は303,230円とその差は26,020円です。
近年の処遇改善の取り組みにより、介護職の給与は年々増額傾向にあります。将来を見据えると、介護福祉士として勤務したほうが給与面でより多くのメリットが得られるでしょう。
介護福祉士は、介護のキャリアパスの上位資格であると同時にキャリアアップに役立つ資格でもあります。
介護福祉士として5年以上の実務経験を積むと、ケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格が得られます。また、最上位資格である認定介護福祉士を取得し、介護現場や事業所内で活躍の幅を広げることも可能です。ひとつの事業所で経験を重ね、管理職に就く道も考えられるでしょう。
介護職は無資格未経験からでもチャレンジできる仕事です。しかし、介護福祉士資格があれば転職の幅が広がります。即戦力として期待され、採用時も有利に働くでしょう。
高齢社会では今後も安定した需要が見込まれ、年齢性別問わず活躍できる仕事だと考えられます。
【参考】厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
ホームヘルパー1級の資格取得者が介護福祉士を目指す場合、より時間と費用を削減できるのが実務経験ルートです。実務経験ルートの主な流れは以下のとおりです。
ここからは、資格取得の具体的な流れと試験の概要をあらためて確認しておきましょう。
実務者研修の受講には、年齢や経験の要件はありません。民間のスクールやハローワークが開講する講座に申し込めば誰でも受講できます。
ホームヘルパー1級を取得している場合は、免除科目があるため費用と時間を大幅に節約できます。職場によっては実務者研修修了をサポートする体制が整えられているため、転職時は確認してみると良いでしょう。
また、介護福祉士試験を申し込む際は、指定日までに実務者研修を修了している必要があります。申し込みに間に合うよう、逆算しながら受講スケジュールを組み立ててくださいね。
受験資格にあたる実務経験は、指定施設における業務の範囲内と定められています。指定施設とは、主に児童、障がい者、高齢者分野に関連する施設です。具体的には、児童発達支援センターのような児童施設や障がい者支援施設、特別養護老人ホームなどがあげられます。
そのほか、救護施設や厚生施設で介護業務にあたった場合も該当となります。自分の今の仕事が実務経験にあたるかどうか、介護福祉士を目指す際はしっかりと確認しておきましょう。
介護福祉士国家試験は、年に1度全国同時におこなわれます。その年によって違いはあるものの、筆記試験は主に1月中に開催されます。3月には実技試験もありますが、実務経験ルートの場合は筆記試験の合格のみで資格を取得できます。
試験問題は、以下の4領域から総合的に出題されます。
これらの領域は、介護の技術だけではなく、人間的かつ社会的な営みも重視されていることを意味しています。
合格点は、総得点の60%を基準に、問題の難易度によって補正されます。なおかつ、試験科目11科目すべてに得点があることが合格条件です。
介護福祉士試験の合格率は、毎年70%前後。確実に合格するためには、過去問題集を繰り返し解きながら苦手分野を克服するのがおすすめです。費用やスケジュールに問題がなければ、受験対策講座の受講もひとつの方法となるでしょう。
ホームヘルパー1級を取得している場合、実務者研修と同等の扱いとして現場で活躍できます。しかし、医療的ケアはおこなえないため注意が必要です。また、介護福祉士を目指すためには実務者研修修了が必須です。ヘルパー1級から経験を重ね、介護福祉士へとキャリアアップし、さらなる活躍を目指しましょう。
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