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    【介護士必見】ノーリフティングケアとは?導入のメリットや今後の課題を解説

    仕事を知る コラム 2021/09/07

    「ノーリフティング」は、近年の介護業界で注目を集めている言葉です。人の手を使わず、電動リフトや福祉器具を用いる介助のことです。こちらの記事では、ノーリフティングケアの意味や導入のメリットを詳しく解説していきます。導入事例や課題など、ぜひ今後の参考にしてください。

    ノーリフティングケアとは?

    ノーリフティングケアは、持ち上げないことが基本です。介護する側、される側にとってやさしいケアと注目を集めています。

    ベッドから車いすへ移動したり、トイレの座面に移ったりと、身体介護はなにかと体力を必要とするもの。また、安全性が求められる介助でもあります。

    介助にはつきものの持ち上げる行為をおこなわないノーリフティングケアは、介護者の腰痛予防にも効果的。身体的な負担が減ることで、離職予防にもつながるといわれています。

    オーストラリアで生まれたケアメソッド

    ノーリフティングケアは、1998年にオーストラリアで誕生しました。きっかけは、腰痛が原因で離職者が増え、深刻な看護師不足に陥ったことにあります。看護連盟は腰痛予防対策として、人力のみの移乗を禁止するノーリフト介助を考案したのです。

    ノーリフトケアでは、介護する側の腰痛対策だけでなく、介護される側の自立度も考慮しています。そのため、利用者の方の身体状況に合わせ、福祉用具を有効的に活用するのが大きな特徴です。

    腰痛を軽減するノーリフティングケア

    オーストラリアでは、ノーリフティング導入後、労災申請にともなう申請費用が1年間で46%減少したという調査結果が出ています。さらに、人力による移乗や移動に関するケガは約56%減少しました。

    ノーリフト協会の調査によると、介護職で腰痛に悩む人の割合は全体の72%。実に多くの職員が腰痛を抱えていることがわかります。

    また、腰痛をきっかけに離職が増えることで心配されるのが、介護業界の人材不足です。介護職で当たり前となりつつある腰痛問題は、職員だけでなく、事業者側も積極的に取り組むべき課題といえるでしょう。

    2021年4月から介護報酬加算の対象に

    2021年4月の介護報酬改定では、職場における腰痛予防対策が加算の対象となりました。ノーリフティングケアの腰痛予防効果が認められ、ノーリフティングに取り組む事業所が評価されることになったのです。

    これは、介護職の腰痛は労働災害であり、職場全体で解決すべき課題だと政府が認識した結果だといえます。今後ノーリフティングケアを導入する事業所は、さらに増加すると考えられるでしょう。

    【参考】一般社団法人日本ノーリフト協会「ノーリフティングケアとは」

    ノーリフティングケアがもたらす3つの効果

    ノーリフティングケアは、介護現場に次のような3つの効果をもたらすといわれています。

    1. スタッフの腰痛予防につながる
    2. 利用者の方の負担が軽減される
    3. 介助にゆとりが生まれる

    腰痛予防に効果的なノーリフティングケアは、利用者の方にとってもメリットがあります。だからこそ、介護する側、される側にとってやさしいケアだといえるのでしょう。

    1.スタッフの腰痛予防につながる

    移乗や移動に福祉用具を使うノーリフティングケアは、スタッフの腰痛予防に効果的です。厚生労働省の腰痛予防対策指針では、「男性は体重の約40%以下、女性は体重の約24%以下」を取り扱いできる重量の制限としています。

    しかし、ノーリフティングケアでは、重量に関係なく人の力だけで人を抱え上げることを禁止しています。福祉機器を利用したり、人員配置を見直すことで腰痛予防の効果をあげているのです。

    2.利用者の方の負担が軽減される

    ノーリフティングケアは、介助者だけでなく、利用者の方の負担も軽減してくれます。無理な抱え上げや移動は、利用者の方にとっても負担が大きなものです。間違った介助により、身体に痛みを感じるケースもあるでしょう。

    また、無理な抱え上げは、人が本来持つ能力を妨げてしまいます。抱え上げられることに身体がグッと身構えることで、全身がこわばってしまうのです。リフトを使うことで介助される側の視界が変わり、自立への意識が高まる効果もあるといわれています。

    3.介助にゆとりが生まれる

    ノーリフティングケアは、介護現場にゆとりを生み出します。今まで2人がかりだったケアも、福祉機器を使えば1人でおこなえるようになるからです。人手不足の介護現場では、大きなメリットだといえます。

    時間のゆとりは、心のゆとりにもつながります。腰痛の悩みや不安から解消されれば、介護職への意識も変化していくのではないでしょうか。誰もが「痛い」「つらい」「忙しい」と思うよりは、楽しくやりがいを持って業務にあたりたいものですよね。

    介助にゆとりをもたらすノーリフティングケアの導入は結果的に、利用者の方により良いケアを提供することへとつながるでしょう。

    ノーリテフィングケアの具体的な方法

    ここからは、次の3つの動作時の具体的なケア方法を紹介していきます。

    • 起き上がり
    • 立ち上がり
    • 移乗

    ノーリフティングケアは、「引きずらない」と「持ち上げない」の2点が介助の基本。日常生活でも中腰に気を付ければ、より腰痛予防の効果が高まりますよ。

    起き上がり

    利用者の方がベッドに寝た状態から起き上がるときは電動ベッドの機能を利用します。ベッドがフラットな状態からの介助は、介助者の腰に負担がかかるものです。また、起き上げられる利用者の方にも負担がかかります。

    ノーリフティングケアでは、起き上がり介助時は電動ベッドの上半身部分を介助しやすい角度まで持ち上げます。人力で持ち上げるのではなく、あくまでもベッドの機能を利用するのがポイントです。

    立ち上がり

    立ち上がり介助をするとき、無理に引っ張ったり、必要以上に持ち上げたりしていないでしょうか。ノーリフティングケアでは、利用者の方に沿ったケア方法で立ち上がりをサポートします。

    例えば、体重を前に移し、前傾になる自然な動きに沿った介助もノーリフティングケアのひとつです。福祉用具が必要な介護度の高い方だけでなく、介護度が低い方のサポートにもノーリフティングケアは役立ちます。

    移乗

    移乗介助は、ボードやリフトを活用し、より負担のない方法を検討します。特に、移乗時に身体をねじる動作は腰に負担がかかるので要注意。ボードやリフトを使用する際も、中腰にならないように気を付けましょう。

    ボードを使って滑らせるように移乗すれば、利用者の方への負担も軽減できます。両者にとってより良いケアであることが、ノーリフティングケアの大きなメリットです。

    事例にみるノーリフティングケアの効果

    実際にノーリフティングケアを導入した施設では、さまざまな効果が得られています。ここでは、介護負担が軽減した事例と、利用者の方の体調が改善した事例を紹介します。ノーリフティングケアの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

    事例1.ノーリフトケアが介護負担を軽減

    社会福祉法人伸こう福祉会は、定年を満70歳としていることで高年齢の職員が増加。同時に、腰痛対策も大きな課題となっていました。

    同法人は職員間で常態化している腰痛を改善するため、ノーリフトケアを導入。第1ステップとしてノーリフトコーディネーターを養成し、職員に対して研修を実施します。職員が必ずリフトに触れ自分で体験することで、確実にノーリフト技術を習得することを目指しました。

    リフト導入後に職員に対しておこなったアンケートでは、82.1%が「身体的負担が軽減された」と回答。人力の介護で生じていた拘縮や褥瘡の悪化が軽減されたほか、利用者本人が自ら動けるようになるなど「自立支援」につながったことも明らかになっています。

    事例2.リフト導入で利用者の方の体調が改善

    介護老人保健施設「聖和苑」は、日頃のケアが利用者の方の拘縮の一因になっている」という講演会の説明をきっかけにノーリフティングケアを導入しました。

    同施設ではノーリフティングケアの必要性を職員間で理解するため、利用者のための「拘縮ゼロ宣言」を実施。要介護度5で拘縮のある男性にリフトを使用しリラクゼーションをおこないました。

    結果、肩と骨盤の傾き、胸部・胸郭・骨盤間のねじれといった全身の過剰な筋緊張が改善。表情が良くなり、精神的にも温和になるなどの結果を得ました。さらには座位が安定し、食事などのADLも大きく向上しています。

    【参考】中央労働災害防止協会「働く人に安全で安心な店舗・施設づくり推進運動の先進的な取組事例集」

    ノーリフティングケアの2つの課題

    利用者と介助者、双方にメリットのあるノーリフティングケアですが、導入には以下の2つの課題があるとされています。

    1. 福祉用具の導入
    2. 職場の環境整備

    1つめは、福祉用具導入に必要な費用の問題です。大型な電動リフトは、購入も設置も多大な費用がかかります。安全に利用するためには、適切な管理も必要です。ノーリフティングケアを普及させるためには、今後より一層の行政による支援が求められます。

    また、2つめにあげられるのが職場環境の整備です。ノーリフティングケアの効果を引き出すためには、職員間が共通認識を持たなくてはいけません。ノーリフティングがもたらす、利用者の方へのメリットを理解する必要もあるでしょう。

    そのためには、まず事業所側がノーリフティングケアの意義を理解し、腰痛予防に取り組む意識が大切です。より良い職場環境を整えようという取り組みが、結果的に利用者の方へのケアの向上へとつながっていくでしょう。

    ノーリフティングケアは介助する側、される側にやさしいケア

    ノーリフティングケアは、介護職員の腰痛予防に効果的なケアです。引きずったり持ち上げたりしないため、身体的負担を大きく軽減できます。また、無理なケアをおこなわないことは、利用者の方の負担軽減にもつながります。

    これまで介護士の職業病といわれていた腰痛。これを当たり前にしないノーリフティングケアは、介護の必要性が高まる現代社会で必要性の高いケアとなっていくでしょう。

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