介護も看護も、高齢者や障がい者などをサポートするという共通点があります。では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか?こちらの記事では、介護と看護の違いやそれぞれの役割について詳しく解説していきます。介護士と看護師が連携するためのポイントもぜひ参考にしてください。
介護と看護には、それぞれ異なる役割があります。介護士も看護師も、施設や病院で高齢者をサポートする仕事ですが、サポートの種類や目的は異なります。
実際に介護の現場で働いていると「具体的にどう違うのだろう?」と不思議に思う場面もあるかもしれません。まずは、役割の違いを正しく理解していきましょう。
介護の役割は、利用者の方の「自立支援」です。身体介護や生活支援をとおし、一人ひとりが自分らしく、いきいきと暮らせる毎日を目指します。
身体介護は、利用者の方に直接触れる支援を意味します。ベッドから車いすへ乗り移る移乗(いじょう)や、排泄の介助、入浴介助も身体介護です。
生活支援では、利用者の方の自宅で調理や掃除などのサポートをします。訪問介護とも呼ばれ、訪問介護員が利用者の方の自宅を訪問しておこなうものです。利用者の方の身体に直接触れない生活支援は、介護の資格がない方でもおこなうことができます。
看護の大きな役割は「医療的なサポート」です。医療に関する専門知識をもとに、利用者の方や患者をサポートします。医師と同様に「医療従事者」にあたると考えると、役割がより明確になるのではないでしょうか。
そのため、高齢者施設で働く看護師には、医療的な側面での見解やサポートが求められます。介護士と同じ現場で働いていても、看護師のみおこなえる医療行為があるのも特徴です。
ここからは、それぞれの資格についてより詳しく確認していきましょう。資格の種類や内容を理解しておくと、実際に介護福祉や医療の現場で働くときにも役立ちますよ。
介護分野には、主に次の3つの資格があります。
1つめの「介護職員初任者研修」は、介護の入門編ともいえる資格です。かつてのホームヘルパー2級にあたり、取得すると身体介護がおこなえます。
2つめの「介護福祉士実務者研修」は、初任者研修の次の段階にあたる資格です。初任者研修との大きな違いは、喀痰吸引や経管栄養といった医療行為がおこなえること。また、介護福祉士資格の受験要件にもなっています。
3つめの「介護福祉士」は、介護資格のなかで唯一となる国家資格です。必要条件を満たしたうえで介護福祉士試験を受験し、合格すると取得できます。介護のキャリアパスの上位であり、現場でリーダーとしての活躍が期待される資格といえるでしょう。
看護師は、看護の仕事をするために必須の国家資格です。看護師になるためには「看護師国家資格」を受験し、合格する必要があります。
受験するための条件は、3年または4年制の看護大学、看護師養成所、5年一貫看護師養成課程校等を卒業していること。なお、免許取得前の教育では、看護や医療の基本的な技術を学ぶだけでなく、思考力や洞察力、コミュニケーション能力を身に付けることが大切だといわれています。
介護と看護では、仕事内容に違いがあります。それは、病院だけでなく、高齢者施設などでも同様です。入浴介助や食事介助など同じ業務にあたっているようでも、目的や内容は違うことを理解しておきましょう。
介護の仕事は、「身体介護」や「生活援助」がメインです。それぞれの介助をとおし、利用者の方の自立した生活を目指します。
掃除や洗濯といった生活援助は、主に利用者の方の居宅でおこないます。訪問介護サービスのひとつであるものの、介護資格がなくてもできる仕事です。サービス時間はケアプランとう計画書で定められているため、時短勤務を希望する方も多数従事しています。
身体介護は、介護のさまざまな場面で必要な仕事です。特に、介護度の高い方になると身体介護の場面が多くなります。老人ホームのような入所施設はもちろん、デイサービスのような通所施設でも身体介護の知識とスキルは必要です。
看護師の仕事は「医療分野」がメインです。介護施設で働いている場合、介護士がおこなえない医療行為を看護師が担当します。
例えば、褥瘡(じょくそう)と呼ばれる床ずれの処置は、介護士にははできません。そのため、入浴介助をおこなっても、浴後の褥瘡の処置は看護師に依頼する必要があります。
糖尿病の方のインスリン注射や、点滴の管理なども看護師の仕事です。介護士として勤務するときは、医療行為の線引きをきちんと理解しておくと良いでしょう。
介護士と看護師では、給与にも違いがあります。これは、初任者研修と介護福祉士とで給与が違うことも影響しているようです。実際に、介護士と看護師の間にはどのくらい給与に差があるのでしょうか。厚生労働省の令和2年度の調査を参考に違いをみていきましょう。
「令和2年度介護従事者処遇状況等調査」によると、介護職員の平均給与額は315,850円です。平成31年の300,120円と比較すると、15,730円アップしていることがわかります。なお、この額は平均勤続年数8.1年を対象とした額です。勤続1年では283,480円に対し、10年以上では350,820円という結果も出ています。
また、介護職員の平均給与額は保有資格によって以下のように異なります。
平均勤続年数(年) | 令和2年2月(円) | |
全体 | 8.1 | 315,850 |
保有資格あり | 8.2 | 318,150 |
介護福祉士 | 8.9 | 329,250 |
実務者研修 | 6.7 | 303,230 |
介護職員初任者研修 | 7.3 | 301,210 |
保有資格なし | 5.5 | 275,920 |
このように、介護士の給料は資格を保有し、キャリアを重ねるほど高くなるといえるでしょう。
同調査によると、看護職員の平均給与は379,610円です。これは、介護従事者のなかでもっとも高い額にあたります。次に平均給与額が高いのは、理学療法士や作業療法士などの358,560円。次いで介護支援専門員(ケアマネジャー)の357,850円です。
一方、平成31年の給与額との差をみると、介護職員15,730円に対し看護職員は6,670円と、介護職員のほうが大幅にアップしていることがわかります。これは、近年の介護職員処遇改善加算の取り組みが良い方向に影響した結果だといえるでしょう。
【出典】厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護士と看護師が連携し、より良いケアを提供するためには、次の3つのポイントを心がけることが大切です。
介護士と看護師は、役割や仕事内容の違いから、ときには意思疎通がうまくいかないケースがあります。「看護師にケアの方針を理解してもらえない」という介護士もいれば、「介護士ばかりの現場で孤立感を感じる」という看護師もいるかもしれません。
介護も看護も、チームで連携することが何より大切です。うまくいかないと悩むときは、ぜひこれらのポイントを振り返ってみてくださいね。
介護士と看護師がうまく連携するためには、お互いの立場や意見を尊重することが大切です。お互い「介護」と「医療」のプロフェッショナルだからこそ、ときには意見が食い違うこともあります。それぞれの立場で、見えるものや利用者の方への意識が異なるからです。
「介護士だから」「看護師だから」といった理由で意見を否定するのではなく、その立場だからこそわかることに目を向ければ、より良いケアを提供できます。お互いの意見が食い違うときには、なぜそう思うのかを理解することから始めてみましょう。
チームで連携して仕事をするためには「報告」「連絡」「相談」が欠かせません。「これくらいはわかってくれるだろう」と思っていることでも、相手には伝わらないケースも多々あります。小さな連絡ミスが、大きな事故へとつながることもあるでしょう。
業務が忙しく直接対話する機会が得られないときには、メモやカルテを通して報告するのもおすすめです。何気ないことでも相談を重ねれば信頼関係が生まれ、より円滑に業務を進められるでしょう。
連携して仕事をするためには、普段から良好な関係を築いておくことが大切です。「プライベートまで仲良くするのは負担」という場合も、日常のあいさつは欠かさないようにしましょう。
特に、「ありがとうございます」「助かりました」というポジティブな言葉は、職場を良い雰囲気に変えてくれます。スタッフ間の雰囲気は、利用者の方にも伝わるものです。仲の悪いスタッフに介助されるよりも、関係が円満なスタッフに介助されるほうが利用者の方も安心ですよね。
特に、身体介護の場面では息の合った介助が求められます。利用者の方に安心安全なケアを提供するためにも、日頃からコミュニケーションを深めるように心がけましょう。
介護と看護は、それぞれの役割や仕事内容が異なります。しかし、介護の現場は多職種の連携が不可欠です。利用者の方のためにも、お互いがきちんと理解を深め合う必要があります。介護と看護の違いを正しく理解し、お互いの立場を尊重したうえでより良いケアを目指していきましょう。
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