介護ケアにおいて重要な「入浴介助」。こちらの記事では、入浴介助の手順を詳しく解説していきます。入浴介助のポイントも紹介するので、ぜひ日々の介護に役立ててください。
入浴介助は、利用者の方が安全かつ安心して入浴するためにおこないます。日常生活のひとつである入浴時の介助は、介護をするうえで欠かせないもの。入浴には身体を清潔にする以外にもメリットがあり、介護者はそれらを理解しておくことが大切です。
また、入浴介助をおこなう浴室は、高齢者にとってリスクの高い場所でもあります。介助をおこなう前はそれらのリスクをふまえ、注意点をしっかりとおさえておきましょう。
入浴には、高齢者に次の効果をもたらします。
身体を清潔に保つことは、感染症予防につながります。高齢者は免疫力が低く、わずかな細菌感染が病気の引き金となるケースもあるため注意が必要です。入浴で皮膚の汚れを洗い流し清潔を保つことで、感染症のリスクを軽減できます。
さらに、入浴にはリラックス効果も期待できます。温まったお湯に身体を浸すと、ふーっと力が抜けて、心地よさを感じることができますね。
入浴すると手足の末梢神経が拡張し、血流が良くなり筋肉や関節が柔軟になります。さらに、水圧がリンパの流れを促進し、疲労回復効果が得られるのです。これらの効果はシャワーでは得られないため、入浴介助でも可能な限り湯船につかるように促しましょう。
入浴介助は、「浴室」と「脱衣所」という他の介助とは異なる空間でおこないます。そのため、次の3つのリスクを理解しておくことが大切です。
脱衣所と浴室の間のわずかな段差も、高齢者にとっては転倒の原因となり得ます。また、イスから立ち上がったり、浴槽をまたいだりするときも注意が必要です。足元が濡れていると、さらに滑りやすくなります。
さらに、冬場に発生しやすいのがヒートショックです。ヒートショックとは、急激な温度変化で起こる体調の変化のこと。温かい部屋から寒い脱衣所、その後に温かいお湯へと移動するたびに、血圧は急激に変動します。血圧の変動で心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性になるのです。
また、気持ち良いからと長湯をすると脱水のリスクが高まります。高齢者は喉の渇きに気付きにくいので、特に脱水症には注意が必要です
入浴介助のリスクを回避するためには、利用者の方に合った介助法を検討することが大切です。身体状況に応じて手すりを設置すれば、転倒予防になります。ヒートショックを予防するためにも、冬場の浴室や脱衣所はあらかじめ温めておくと良いでしょう。
脱水を防ぐためには、入浴前後にコップ1杯の水分をとるのが効果的です。慌てたり忘れたりしないよう、脱衣所に用意しておくと安心ですね。
また、介助中は利用者の方から決して目を離さないようにしましょう。歩行状態や脱衣にかかる時間を見極めながら、利用者の方に負担の少ない介助を目指しましょう。
安全に入浴するための準備ポイントは、「物品」と「環境」の2つにわかれます。介助を始めてから慌てないよう、必要な物品を用意し、環境を整えておきましょう。
入浴介助前に準備する物品は、主に以下のような内容です。入浴後は爪がやわらかくなり手入れしやすいため、必要に応じて爪切りを準備しましょう。
衣類の着脱介助は、利用者の方に負担のないよう、スムーズにおこなうことが大切です。また、できることはなるべく自分でしてもらうように促します。腕や足を上げたり、ボタンをかけたりといった行為が、ADL(日常生活動作)の維持向上に役立つからです。
ここでは、身体の左側に麻痺のある方の着脱手順を紹介します。ポイントをおさえ、入浴時間がより快適になるよう介助しましょう。
(首の部分を引っ張って脱ぐのではなく、下から持ち上げるのがポイント!)
(バランスが崩れたときのために、後ろに椅子を用意するのがポイント!)
(手首を上からつかんだりせず、下から全体を支えるのがポイント!)
ここからは、入浴前から入浴中、入浴後の介助の手順を紹介します。身体を洗う「洗身(せんしん)」の順番もきちんと把握しておきましょう。
入浴前の洗髪、洗身はお湯の温度に気を付け、声をかけながらおこなうことが大切。すべてを介助するのではなく、できない部分をお手伝いする意識を持ちましょう。利用者の方の身体機能の維持向上だけでなく、プライバシーの配慮の意味もあります。
(「お湯をかけますね」「熱くないですか?」など声かけを忘れずに)
(力を入れすぎてこすりすぎないように気を付ける)
誤って溺れたりすることのないよう、利用者の方が入浴している間は決して目を離さないように心がけます。ここでは、左半身に麻痺のある方の入浴方法について紹介します。
(手すりがない場合は右側を支える)
入浴後は体調に変化がないか確認しながら介助をおこないます。ふらつきに注意して脱衣所まで案内したら、タオルを敷いたイスに座ってもらいましょう。できない部分をサポートしながら、水分をしっかりと拭き取り新しい衣類を着用します。
(背中や足の指の間の拭き残しに気を付ける)
(合間をみながら水分補給をしてもらう)
機械浴は、寝たまま入る「ストレッチャー浴」と座ったまま入る「チェアー浴」があります。比較的介護度の高い方が対象となるため、介助時は以下の3点を心がけておきましょう。
機械浴は、専用のベルトを使い利用者の方の身体がずれないように固定します。基本的な機械の操作のほか、安全装置の使い方もきちんと把握しておきましょう。介護を受ける方は裸なのでストレッチャーやチェアは温めておくことも大切です。また、裸で横になったまま脱衣所から浴室へと移動する際は、身体全体にタオルをかけプライバシーへの配慮も忘れないようにしましょう。
入浴介助には、安全な入浴をサポートするためのさまざまな介助器具が用いられます。在宅介護や訪問介護でも役立つ介助器具への理解を深めておきましょう。
歩行や立ち上がり、浴槽への出入りの際に身体を安定させるのに役立ちます。壁に付けるタイプのほか、浴槽のふちに付けるタイプもあります。
身体を洗うときに座るイスです。座面がやわらかく、手すりが持ち上がるタイプもあります。
足に車輪が付き、移動に便利な車椅子です。座ったまま部屋から移動できます。
浴槽のふちにかけ、座りながら浴槽内に移動できます。浴槽をまたげないときに便利です。
入浴は健康な毎日を送るために欠かせません。リラックス効果が得られる反面、転倒やヒートショックなどのリスクも考えられます。安心で安全な入浴介助のためには、利用者の方に合った介助法を事前にイメージしておくことが大切です。慌てないようにしっかりと手順とポイントをおさえ、日々の介助に活かしましょう。
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