介護現場にはケアカンファレンスという業務があります。利用者の方へより良いケアを提供するために、他職種で話し合い、ケアの方向性を確立する重要な会議です。新人職員にとっては、難しいと感じることもあり、苦手意識を持ってしまうケースがあります。
そこで、今回はケアカンファレンスの重要性と目的について紹介していきます。
カンファレンスをおこなう目的を理解しておくことで、参加する時の心構えや取り組む姿勢も変わってきますので、より良い会議につながるでしょう。ぜひ、最後まで読んで参考にしてください。
ケアカンファレンスは医療・福祉分野の事業所にておこなわれる会議をさします。介護現場でおこなわれるケアカンファレンスでは、要介護者に対してのケアの方法や、今後の方向性、情報のすり合わせと共有をおこなうために必要な会議です。
会議の重要性は以下の通りです。会議の意義をしっかりと確認していきましょう。
【会議の重要性のポイント】
ケアカンファレンスには、医師・看護師・リハビリ・栄養士・ケアマネジャー・相談員などさまざまな職種が参加することが望ましいです。他職種が参加することで、各専門分野からの評価や課題を確認・共有できるでしょう。
業務も違うことから、なかなか時間を共有できない場合もありますが、他職種が連携することが大切なので時間を調整していきましょう。
各職種で情報共有することで、新しい気づきが生まれることも多く、よりよいケアにつなげることができます。利用者の方に対しよりよいケアを提供できれば、職員の意識が向上し、やりがいにつながるといった効果も期待できます。
明確な開催期間はありませんが、週に1回や月に1回というように、定期的な開催が望ましいです。
情報の共有だけでなく、新たな問題提議や解決法の検討などがおこなわれます。そのため、経験の浅い職員にとっては、たくさんの知識や気づきを学ぶことができるので育成に適した会議といえます。
しかし、経験の浅い職員ばかりで構成してしまうと問題提議すらおこなわれずに終わってしまうこともあるため、構成員の中には必ず、経験が豊富で発言のできる職員を配置しましょう。
前項で説明したようにケアカンファレンスに参加することは、職員にとっても、利用者の方にとっても大きなメリットをもたらします。
しかし、ただ参加するだけでは、時間を浪費してしまうだけになってしまうので準備が必要ということを覚えておきましょう。
【準備しておく内容】
ケアカンファレンスは就業時間内におこなわれることが多いため、限りのある時間内で結論まで導くことが目的です。以上の内容を準備しケアカンファレンスに参加しましょう。
ケアカンファレンスで話し合う利用者の方は事前にわかっていることが多いので、情報収集をしておきましょう。病名や疾患といった基本情報はもちろんですが、「最近食欲が低下している」や「帰りたいと話していた」などが挙げられます。
情報を集め、自分の意見をまとめておくとスムーズにケアカンファレンスで発言できるでしょう。
問題提議だけでは他の参加者に丸投げしてしまうことになり、話し合いにならないといった状況になります。
「〇〇の状況なので□□してはどうかと考えていますがいかがでしょう?」のような発言ができることが望ましいです。
「〇〇で困っています」だけだとケアカンファレンスの進行の妨げになりますので、注意しましょう。
ケアカンファレンスでは、前回話し合った議題の評価がおこなわれますので、結果がどうなったかを評価してから参加するようにしましょう。
新しい業務やケア方法を改善して様子をみているのであれば、「改善して良かった点」や「新たな課題が生まれている」などの評価が必要です。
ケアカンファレンスで意見を集めようとする人がいますが、これではケアカンファレンスの妨げになります。他の会議も同様ですが、参加するからには、提案や評価、結論などをまとめ、発表するというような心構えが必要です。
ケアカンファレンスに参加しても発言せずに終わってしまう人がいます。状況にもよりますが、できるだけ自分の意見を発言することを心掛けましょう。ケアカンファレンスは他職種が参加しており、多くの職員の意見を集めよりよいケア方法を探すことを目的としています。
経験が浅いからと遠慮するのではなく、経験が浅いからこそ見えているものもありますので、前述した情報収集をしっかりした上で発言しましょう。
ケアカンファレンスの内容は会議録(カンファレンス記録)にまとめる必要があります。参加者の中から書記を任命することもあれば、担当制・固定制になっている場合もあるでしょう。
書記かどうかに関わらず、カンファレンス中はしっかりとメモをとる習慣を持ちましょう。メモに書き出すことで情報を整理できます。また、急に書記に任命されることもあるかもしれませんので必ずメモをとりましょう。
各専門職の集まる話し合いのため、専門用語もたくさん出てきます。わからなかった専門用語などをメモし、後で確認することで学びにつながります。
ケアカンファレンスに参加したからには、話し合った内容を他の職員に共有することが大切です。書記として記録用紙にまとめる場合は、長文でダラダラと書くのではなく、端的にわかりやすく記載していきましょう。
記載する内容はおおむね以下の通りです。
【記載内容】
特に重要なのは話し合いの内容です。内容は「5W1H」を意識して記載します。対策やケア方法は全職員が周知できるようにわかりやすく記載していきましょう。
また、持ち越しになった課題を記載しておくことで、次回のケアカンファレンスの前に確認できるので、次回のケアカンファレンスにスムーズに取り組むことができます。
最後に、全職種・職員に回覧し、話し合った内容やケア方法を周知することが大切です。
ケアカンファレンス以外に「デスカンファレンス」という会議があります。デスカンファレンスは亡くなった方におこなったケア方法の振り返りをおこなう会議です。
デスカンファレンスは、看取りや終末期のケアを振り返り、今後に活かすためのカンファレンスです。主に看取りや終末期のケアに関わった職員でおこなわれます。
「〇〇すれば良かった」「○○であるべきだった」と精神的負担を感じている職員もいるため、責任追及のようなカンファレンスでは意味がありません。
感情を落ち着かせ、関わってきた職員が今後の糧にできるように配慮することが大切です。
経験の浅い職員は、利用者の方や家族との関わりを持ちたいと思いつつも、自信が持てず消極的になってしまう傾向にあります。自信を持つためには、さまざまな経験を積みながら意見や意思を確立していくことだと言えるでしょう。
デスカンファレンスは望んで参加できるものではないため、参加できる場合は積極的に参加することをおすすめします。先輩職員の意見や考えを聞くことで、自分の知見が広がり成長できるでしょう。
利用者の方・家族の苦しみや死への悲しみを目の当たりにすることで、関わった職員も悲しみの感情を受けることがあります。人の死に関わるというのは、精神的にも大きな影響があることでしょう。デスカンファレンスの参加は、実際におこなったケアの方法を確認し課題を見出しながら、気持ちの整理をおこなうことができます。
また、デスカンファレンスに参加している職員と「悲しみ」を共有することで、安心感や安堵感を感じることも期待できます。
介護の現場では、カンファレンスの他に「サービス担当者会議」というものがあります。サービス担当者会議はケアプランの作成・更新時におこなわれるもので、他職種が集まり、今後のケア方法について話し合います。
ケアカンファレンスと似ていることから混同している職員も多いですが、「サービス担当者会議」の開催は介護保険法で義務化されています。
ケアプランの作成にあたっておこなわれるため、各事業所や職種からの課題提議や対応可能な時間の調整などがメインとなるでしょう。サービス担当者会議で話し合った内容をもとに、ケアプランが出来上がります。
反対にカンファレンスにはルールがなく、事業所がモニタリングをする際の意見交換や、業務改善・ケアの見直しのために独自におこなわれているものです。実際の現場の状況や前述している今後の方向性など、より細かい話し合いになります。
ケアカンファレンスは、利用者の方に対してより良いケアを提供するためや、現状を振り返り評価をしていくきっかけになる重要なものと言えます。ケアカンファレンスの参加には準備が必要で、課題提議や議題に対しての発言など、慣れていないと苦痛を伴うかもしれません。
しかし、参加するだけで新しい気づきや知識を得られ、自信やモチベーションアップが期待できます。さらに、利用者の方のケアに関わっているという責任感も発生するため、より良いケアにつながるでしょう。
ぜひ、ケアカンファレンスの時間を有効に利用し、価値のある話し合いをおこなっていきましょう。
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