生活リハビリは、リハビリの専門職だけでなく介護職も担当できます。本記事では、生活リハビリを行う介護職の方に向け、生活リハビリの目的や効果を詳しく解説します。具体的なリハビリメニューや生活リハビリをおこなう際のポイント、役立つ資格もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
生活リハビリは、着替えや入浴、食事といった普段の行動をリハビリと捉え、日常生活動作の維持向上を支援する方法のことです。日々の暮らしをサポートする介護職にとって、身近なリハビリといえます。
利用者の方それぞれに合った生活リハビリをおこなうために、まずは具体的な目的と効果について理解していきましょう。
生活リハビリの大きな目的は、利用者の方の日常生活動作(ADL)を支援することです。起床から就寝まで、普段私たちが何気なくおこなっている動作も、身体能力が衰えると徐々に難しくなっていきます。
たとえば、布団から起き上がる動作ひとつとっても、体を起こす筋力とバランス力が必要です。指先が不自由になると、服のボタンを留めたりズボンを上げ下げしたりといった動作も困難になります。介護職が生活リハビリをおこなう際は、これらの日常生活動作を通し、利用者の方の自立した生活を支援する意識が必要です。
生活リハビリを続けると、身体機能を維持向上させる効果が期待できます。腕や足などの個別の能力を回復させながら、体全体の機能を向上できることが大きな特徴です。
寝たきりの方が起き上がれるようになれば、活動範囲の幅が広がります。活動範囲が広がるということは、体を動かす機会が増えるということです。少しずつでも自分でできることが増えれば、結果的に筋力アップにつながります。
活動範囲が広がることは身体面だけではなく、精神面でも良い作用を生み出します。外出を機に人と接する機会が増え、引きこもり予防の効果も期待できるでしょう。
介護職をしていると「個別リハビリ」や「集団リハビリ」といった言葉を耳にすることもあるのではないでしょうか。これらは似ているようでいて、目的や内容がそれぞれ異なります。
デイケアと呼ばれる通所リハビリテーションのような施設では、介護職でも個別リハビリや集団リハビリに触れる機会が訪れます。具体的な内容を正しく理解しておきましょう。
個別リハビリは、利用者の方とスタッフがマンツーマンでおこなうリハビリです。個々の身体状況や抱える課題により、実施するメニューは異なります。施設や病院のリハビリ室のほか、実生活の場面でも個別リハビリは実施されます。
集団リハビリは、何人かが集まり同時におこなうリハビリのことです。簡単なスポーツやゲームのようなレクリエーションや、手先を使う手芸や書道なども集団リハビリに該当します。
集団リハビリは、身体機能だけでなく、コミュニケーション能力を向上できることが特徴です。利用者の方が自宅から通う通所施設だけでなく、入所施設でも集団リハビリはおこなわれます。
生活リハビリには専門的な資格は必要ありません。しかし、本格的なリハビリをおこなう際は「理学療法士」や「作業療法士」、「言語聴覚士」といった資格が必要になります。
理学療法士は、主に身体機能のリハビリテーションをおこないます。作業療法士は、日常生活に必要な動作のリハビリテーションが主な仕事です。言語聴覚士は、言語や聴覚、発声に関わるリハビリテーションを実施します。
介護の国家資格である「介護福祉士」も、生活リハビリに必要な知識と技術を身に付けられる資格のひとつです。これから介護の仕事を始めようという方は「介護職員初任者研修」がその入り口となります。
介護職員初任者研修の取得には、特別な経験や資格は必要ありません。利用者の方に直接触れる身体介護をするために必要な資格です。生活リハビリを含めた介護サービスを提供したい方にとって、スタート地点のひとつとなります。
初任者研修修了後は「介護福祉士実務者研修」が目標です。経験とともにステップアップできる道が開けます。生活リハビリをおこなう介護士を目指す方におすすめの資格といえるでしょう。
介護職がおこなう生活リハビリには、暮らしに沿ったさまざまな種類があります。介護サービスの大きな目的は、利用者の方の自立支援です。つまり、介護職が提供するサービスがそのまま生活リハビリに直結しているともいえます。ここでは具体的な生活リハビリの内容をみていきましょう。
入浴介助の場面では「服を着替える」、「浴槽をまたぐ」といった体を動かす動作が多く見られます。また、入浴介助をおこなう脱衣所や浴室は、転倒リスクが高い場所です。段差があったり濡れたりしているため、介護職は安全に留意しながら生活リハビリをおこなわなくてはいけません。
服を着替えたり、体や頭を洗ったりする際は、自分でできる動作はなるべく自分でしてもらうよう声をかけます。浴槽をまたぐのが難しい場合は、介助グッズを使うのもひとつの方法です。
壁に手すりを付けたり、スムーズに入浴できるチェアを使ったりするなど、安全面に配慮しながらリハビリにつながる方法を検討していきましょう。
利用者の方が自分で箸やスプーンを持つのが難しい場合は、食事介助が必要です。食べ物が間違って気管に入らないよう、注意しながらゆっくりと食事を口まで運びます。
生活リハビリの視点では、利用者の方がなるべく自分で食事をできるよう、補助具を検討するのもひとつの方法です。皿が滑らないようにマットを敷いたり、麻痺がある方でも持ちやすいスプーンを使ったりといった方法が考えられます。
食事は健康を維持するために必要な行動であると同時に、多くの方にとって生活の楽しみのひとつです。自分で食べる楽しみを持ち続けられるよう、食材を細かく刻んだり、とろみをつけたりといった工夫も重ねていきましょう。
自分で衣服を上げ下げしたり、陰部を拭いたりといった行為は、生活リハビリだけでなく利用者の方の尊厳を守ることにつながります。なるべく自分でできることは自分でしてもらうように促しましょう。トイレは狭いので転倒しないよう、じゅうぶんな注意も必要です。
料理や掃除、洗濯といった生活支援も生活リハビリのひとつです。特に、在宅生活をサポートする訪問介護の場面では生活支援を軸にしたリハビリを検討する機会が多々あります。
利用者の方が安全に調理できる方法を考えるほか、買い物の機会を検討するなど、さまざまなケースがあるでしょう。
介護職が生活リハビリをおこなう際の大きなポイントは、次の2つです。
生活リハビリの内容は、利用者の方ひとりひとりによって異なります。2つのポイントを意識しながら、より良いリハビリを実施できるように心がけましょう。
身体能力を維持向上させるリハビリを提供するためには、まずは利用者の方の身体能力を把握する必要があります。リスクを防ぎ、安全にリハビリを実施するためにも重要なポイントです。
「立ち上がる際はどの程度バランスが保てるのか」「更衣の際はどこまで腕が上がるのか」など把握したうえで、能力を活かせる方法を検討していきます。
生活リハビリの内容は、多職種と連携しながら検討していきます。医師はもちろん、理学療法士や作業療法士といった専門スタッフと相談することが大切です。各専門家の視点から課題を捉えることで、より効果的で安全なリハビリを提案できます。
また、利用者の方本人の意思を尊重することも重要です。したいことや困っていることなど、現在のニーズにしっかりと耳を傾ける必要があります。ご家族の意見も聞きながら、利用者の方が自立して生活するための方法を模索していきましょう。
生活リハビリは、介護の大きな目的である「利用者の方の自立支援」につながります。効果を最大限引き出すためには、ひとりひとりに合った内容を正しく理解する必要があります。多職種と連携しながら、介護職として適切なサポートを目指していきましょう。
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