物や人が国境を越えて行き交い、今後ますますグローバル化が進む現代社会。「介護の仕事でも英語が必要?」と考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、介護職で英語力が活きる理由や活用シーンについて紹介します。英語力を活かし、介護職へ転職したいと考える方はぜひ参考にしてください。
介護職で英語力が活きる理由には、以下の3点が挙げられます。
少子高齢化により労働人口が減少する日本では、各業界で外国人労働者の受け入れが進められています。また、介護サービスを利用する高齢者が外国人であるケースも少なくありません。介護事業所の海外進出も含め、それぞれの理由を詳しく掘り下げていきましょう。
高齢化が進む日本では、2040年(令和22年)には約280万人の介護職員が必要だと推計されます。2008年(平成20年)、慢性的な人材不足を解決するため、政府はEPA(経済協定連携)に基づく介護福祉士候補者の受け入れを開始しました。
当初200人にも満たなかった受け入れ数は、2018年(平成30年)には4,000人を超えるまでに増加。特別養護老人ホームや介護老人保健施設を中心に、約800の施設でEPA介護職員が雇用されています。
厚生労働省の調査によると、EPA介護職員を雇用した介護施設のうち「今後も受け入れる予定」と答えた施設は全体の78.9%。外国人介護職員を雇用したことがない介護施設も、20.2%が「受け入れる予定」と回答しています。このような背景からも、介護現場での外国人労働者の人数は、今後も増加するといえるでしょう。
介護は多職種との連携のもと成り立つ仕事です。外国人労働者が一定の日本語力を有するとしても、英語力が活きるシーンは多々あると考えられます。
国内で増加しているのは、日本人高齢者だけではありません。近年は、日本で暮らす在留外国人の高齢化も進んでいます。
出入国在留管理庁の発表によると、2020年(令和2年)の在留外国人は約288万人。そのうち、60歳以上の在留外国人はおよそ28万人と全体の1割を占める割合です。2016年(平成28年)の人数と比較すると、60歳以上の在留外国人数は5万人近く増加していることがわかります。
在留外国人数の推移(単位:人) | |||||
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | |
総数 | 2,382,822 | 2,561,848 | 2,731,093 | 2,933,137 | 2,887,116 |
60歳以上の男女 | 238,735 | 250,622 | 262,532 | 272,823 | 283,777 |
【参考】出入国在留管理庁「在留外国人統計概説(令和2年末)」より集計
滞在期間が長く日本語を話せる外国人も、高齢化や認知症などで母国語しか話せなくなるケースも考えられます。本人やご家族のニーズをくみ取るためにも、英語力が求められます。
高齢化社会は日本だけでなく、海外でも解決すべき課題のひとつとして挙げられています。なかでも、2020年前後から高齢化が進むと予測されているのが中国や韓国、シンガポールといったアジア諸国です。
2016年(平成28年)、政府は官民一体型のプロジェクト「アジア健康構想」をスタート。海外に介護施設をつくり、自立支援を軸とする「日本式介護」を普及させようという取り組みが始まりました。
実際に海外に介護施設した企業は、人材育成からコンサルティングまで、介護にまつわる事業を幅広く展開。こうした介護事業所の海外進出も、英語力が介護で活きる理由のひとつとして挙げられます。
【参考】厚生労働省「外国人介護職員とその雇用状況」
介護現場では、英語をもとにした専門用語が多くあります。仕事に慣れないうちは、飛び交う用語に戸惑うことも多いかもしれません。
ここからは、介護現場で役立つ英語の専門用語を紹介します。すでに英語力がありこれから介護職を始めようという方も、ぜひ現場で活用できるワードをチェックしてみてください。
評価、査定という意味です。介護現場では、利用者の方の健康状態や生活環境を総合的に分析し、課題を明確にすることを意味します。介護サービスの第一歩ともいえる段階です。
BTは体温、BPは血圧を意味します。Pはpulse(パルス)の略語で脈拍のことです。いずれもカルテ記入の際によく使用します。
PTは理学療法士、OTは作業療法士のことです。STは言語聴覚士を意味します。いずれも介護職が関わることの多いリハビリ専門職の略語です。介護サービスの内容を検討する会議などで使用するため、あらかじめ理解しておくと良いでしょう。
Quality of life(クオリティ・オブ・ライフ)を意味するQOLは、生活の質や人生の質を表します。介護では、食事や排せつといった日常生活動作を支援しながら、利用者の方のQOL向上を目指します。
終末医療を意味する英語です。高齢化が進む現代は「看取り介護」のような終末期のケアも重視されています。
介護現場では、以下のような3つのシーンで英語力が活きると考えられます。
介護は利用者の方やご家族、スタッフ同士が密にかかわる仕事です。海外で介護の仕事をする際も、さまざまなシーンで英語が活用できます。
前述したように、介護現場では外国人労働者が増加しています。外国人スタッフが初歩的な日本語を習得していても、言語の違いが仕事の壁になることもあるでしょう。利用者の方を安心安全にケアするためには、専門用語を覚える必要もあります。
日本人スタッフに英語力があれば、外国人スタッフと利用者の方との架け橋的な役割が担えます。外国人スタッフが悩みを抱えている場合も、英語のコミュニケーションを通し的確にフォローできるでしょう。
利用者本人はもちろん、ご家族が外国人の場合にも英語力は活用できます。特に、介護保険に関する手続きは、専門用語が多く日本人でも理解しづらいものです。英語力があれば、ケアマネージャーと利用者の方のやり取りをフォローできます。
英語力が特に活きるのが、訪問介護のシーンです。訪問介護は、利用者の方が生活する居宅で介護サービスを提供します。そのため、本人やご家族との密なコミュニケーションが求められるのが特徴です。ご家族の方が英語しか話せないという場合にも、英語のできる訪問介護員は頼れる存在となるでしょう。
海外で介護の仕事をする際は、その国の介護資格が新たに必要です。日本の国家資格である介護福祉士は国外では適用されません。そのため、介護について学びなおすことになるでしょう。
とはいえ、基礎的な英語力は仕事やコミュニケーションに大いに役立ちます。習慣や文化を理解するためにも大切です。「英語力を活かし、介護職をベースに海外で活躍したい」という方の可能性を大きく広げてくれます。
英語を条件に掲げる介護求人は多くはないものの、英語力は転職時にプラスに働きます。特に、外国人スタッフを雇用する予定がある事業所では「英語を話せる介護士」は重宝されるでしょう。
すでに外国人スタッフが働いている事業所も同様です。英語力に加え、基礎的な介護資格があればさらに有利です。就職後は、外国人スタッフを指導するリーダーとしてキャリアアップする道も開けるかもしれません。
今現在は英語力が求められていない事業所でも、将来役立つ人材として自分の強みをアピールできます。
外国人高齢者が増加する日本では、今後、外国人向け介護サービスのニーズが高まると考えられます。日本語が話せない利用者の方やご家族をサポートする際は、英語力が必要です。利用者の方のニーズを反映させた、より良いケアの提供へとつながります。
また、近年の介護現場は外国人スタッフが増加しています。スムーズに仕事を進めるためにも、英語力は大いに役立ちます。国内、国外ともに介護は欠かすことのできない仕事です。介護のスキルに英語力をプラスして、介護職の可能性を広げていきましょ
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