介護の仕事をしていると、年に1~2回、目標設定や自己評価するときがあります。これは、処遇改善加算の取得のためにも必要な目標で、取り入れている事業所はたくさんあります。しかし、介護の仕事はゴールが見えにくく、目標設定に苦手意識を持っている人は多いです。
今回は介護職員の目標設定について解説していきます。最後までみていただくことで、目標設定の重要性や目標の立て方がわかります。経験年数別に目標例を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
個人目標を持つことは、介護される側だけでなく介護する側にも必要です。介護は日々、同じような作業を繰り返す仕事で単調になりがちです。同じ時間にトイレ誘導・お風呂の介助・食事介助と作業的にこなしていくうちに、介護の本質を忘れてはいないでしょうか?
目標を設定することで、介護の質やコミュニケーション手段が変わってきますので、ぜひ目標をしっかりと作りましょう。
個人目標を持つことで、見えてくるものが変わります。「きれいごと」「理想論」と片付けてしまう人もいますが、それは大きな間違いです。
介護の仕事において成長している人は常に、個人目標を明確に持っています。それは、目標を持つと成長のビジョンが見えてくるからです。
個人目標を持つとこんなことが変わってきます。
ひとつずつ確認していきましょう。
介護の仕事を続けていると、本来あるべき思考が欠落してしまうことがあります。それは利用者の方の「自立支援」や「ニーズの尊重」です。介護は人手が少なく、多忙な仕事です。しかし、それを言い訳にして、本来するべき業務や声掛けを忘れていないでしょうか。一度、確認してみましょう。
しっかりと目標設定できていれば、「自立支援のためにはどのようなケアが必要だろう?」「人手が足りない中、どうしたらニーズに応えられるだろうか?」と考え方が前向きになります。
介護職員は自信を持っていない人が多い印象があります。人の役に立つ仕事をしているのに、胸を張れていないのです。誰でもできる仕事ではないので胸を張るべきではないでしょうか?
自分の仕事に疑問を持っている方は、自信を持てない傾向にあります。介護職員目線の都合の良い介護を提供していませんか?
目標を達成していくことで、自分に自信が持てるとともに、利用者の方も前進しているはずです。胸を張れるような目標を考えてみましょう。
介護の仕事を続けていく上で、「施設長を目指したい」「リーダーになりたい」といった気持ちがある人こそ、しっかりと目標を掲げましょう。
目標を明確にすることで、施設長になるために必要なスキルや行動がわかるようになります。目標をしっかり作ることで、次の行動が明確になります。逆を言えば、目標を設定していない人には見えにくいのです。
ここからは個人目標の立て方と進め方を紹介していきます。目標設定は自由です。参考としてみてください。
【目標の立て方】
上記の方法で進めていきます。目標を立てる一番のポイントは具体性です。ひとつずつ考えていきましょう。
まずは大きな目標を立てましょう。ここではケアプランと同じ表記で、長期目標・短期目標と記載していきます。
長期目標を考えるときは、「1年先」短くても「6カ月先」を意識してみましょう。ここで考えるのは、「なりたい自分」と「環境」です。長期目標をあいまいにしてしまうと、いくら立派な目標を立てても実現できない場合が多いので、しっかりと熟考しましょう。
注意点は無理のない範囲で目標を考えるということです。少し背伸びすれば届きそうな目標が良いでしょう。たとえば、以下のよう内容です。
長期目標ができたら、短期目標を設定しましょう。長期目標の半分の期間を設定することが多いですが、長期目標1年に対して、短期目標を3カ月や1カ月に設定しても問題ありません。短期目標は、長期目標を目指すための途中目標であることを意識してください。
目標ができたら達成方法を考えていきます。たとえば「1年後リーダーになりたい」と長期目標を立てたら、半年後は介護職員の中心になれるようにと考えます。そのためには、毎月の会議で「業務改善をする」「必ず発言する」「会議で中心に座る」といった短期目標が生まれます。
さらに、会議のために必要な情報を整理するというタスクが発生します。そのためには、毎日、他の職員とのコミュニケーションが必要となるのです。
ここまで明確に目標設定ができれば、日々、目標に対しての行動が明確になるので、一つひとつの行動に意味が生まれ、目標に向かってしっかり行動できます。
目標には必ず期間を設けましょう。期間は適当に設定せず、適正な期間を考えましょう。1カ月程度で解決するような目標は、目標設定には不向きです。
目標がしっかり設定できていれば、そこから逆算して「半年で何をするのか?」「毎月何をするのか?」「週単位で何をするのか?」「日々何をするのか?」と一日単位で行動が見えてきます。目標は3カ月から1年程度で解決できるものが望ましいです。
設定した期間が近づいたら、目標達成についてしっかりと評価しましょう。評価の方法は「できた」「できていない」だけではありません。「なぜできたのか?」「どこに問題があったのか?」と、成果に対して理由を深堀していきましょう。評価をあいまいにしていると、せっかく立てた目標が台無しになってしまいます。
また、目標の結果だけでなく、目標自体を適宜評価することも大切です。1年後としていた目標が、6カ月後に達成できたということもあるでしょう。この場合は、更に向上した目標を再設定するとよいでしょう。
ここからは目標設定の例を紹介していきます。参考程度に確認してください。また、人事考課などでも、活用できるかもしれません。
就職して間もないため、目標と言われてもなかなか思いつかないのではないでしょうか?自分自身のスキルアップを中心に考えがちだと思いますが、最初はそれで良いと思います。
【就職して間もない介護職員の目標の良い例と悪い例】
悪い例 | 良い例 |
利用者の顔と名前を一致させる | 6カ月以内に利用者の方の過去にやっていた仕事内容・家族構成・好きなことを把握する |
安全な介護技術を習得する | 3カ月以内にどの利用者の方にも安全な移乗介助を習得する。 |
報連相をしっかりする | 報連相の意味を理解し、可能な限りその日の内に相談・連絡・報告をおこなう。 |
実務者研修の取得 | 〇月〇日から実務者研修取得に向け、最終日の〇月〇日に実務者研修資格を取得する |
ポイントは、目標の内容よりも明確さです。期間を定めることで、ゴールを意識できます。
次は中堅にあたる職員の例をみていきましょう。
悪い例 | 良い例 |
チームケアを意識して適切なケアをおこなう | 各職種の連携が図れていないので、月1回の他職種連携会議を実施する。 |
行事・イベントを企画し、実行する | 年3回、行事イベントを実施する |
介護リーダーを目指し、指導や教育を学ぶ | 介護リーダーのおこなっている業務を担当させてもらい、リーダーの業務を把握する。10カ月で、リーダーの業務を吸収し、代わりが務まるまで成長する |
新人職員の指導方法を見直し、自立できる職員を育成する | 3カ月以内に指導内容を見直し、マニュアルを作成する |
中堅になると、指導や教育に関わることが増えます。就職して間もない頃は、自分を中心に目標を立てていましたが、中堅になったら他の職員との連携を意識してみましょう。また、キャリアアップの目標を立てるのも良いでしょう。
さいごにベテラン職員の目標例をみていきましょう。
悪い例 | 良い例 |
利用者の方が安全に過ごせるように、ヒヤリハットを集め、事故を減らす | ヒヤリハットを月50件集める。事故件数は前年比20%減を目指す |
離職率を減らす | 離職率が前年比〇%だったので、〇%まで下げる |
働きやすい環境を作る | 残業が発生しないような業務改善をおこなう |
高稼働率を維持できるように、利用者の方の体調管理をおこなう | 稼働率通算93%、月々の売り上げ目標〇〇〇〇円を維持する。 |
10年以上のベテラン介護職員は、指導や教育はもちろんですが、事業運営にも目を向けてきましょう。数字を極力明確にすることがポイントです。また、目標に記入した数字の根拠まで説明できれば完璧です。
ここまで考えて目標を立てる人は少ないのかもしれません。しかし、目標はしっかり裏付けを考えて立てることが、実現の近道です。
目標が明確だと、するべきことが自然と見えてきますので、日々の仕事に活力が生まれます。また、目標を持っている人は、輝いて見えるものです。そうすると周りの職員も引っ張られて、良いチームワークが生まれます。
ぜひ目標を、しっかり考え楽しく仕事をしていきましょう。
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