訪問介護の仕事をしたいけれど具体的にどんな仕事なのかを知りたい、訪問介護に必要な資格や必要な条件が分からないという方のために、訪問介護に必要な資格・取得要件について解説していきます。また、訪問介護職に向いている人や訪問介護の仕事で得ることができるやりがい・魅力についてもご紹介いたします。
まず、訪問介護の仕事についてご説明いたします。訪問介護(ホームヘルプ)とは、ホームヘルパーと呼ばれる訪問介護員が利用者の方の自宅に訪問し、その利用者の方が自宅で自立した日常生活が送れるように介護や支援、介助を行うサービスのことです。訪問介護で提供されるサービスは、生活援助、身体介護、通院介助の3種類に分けられます。どのような仕事内容なのか、具体的に見ていきましょう。
【参考】どんなサービスがあるの? – 訪問介護(ホームヘルプ) | 公表されている介護サービスについて | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
訪問介護サービスの利用者の方に関わる家事支援を行います。主な仕事は以下の内容になります。
利用者の方に関係する家事支援が生活援助の内容になりますので、同居している家族に関わる家事行為は生活援助の対象外になります。
利用者の方の身体に関わる介護を行います。直接身体に触れて行う介助サービスです。
通院介助は利用者の方が通院している医療機関への通院や受診手続きをお手伝いする仕事です。
医療機関への通院は公共交通機関を使用する場合と「介護タクシー」として訪問介護員が車を運転して医療機関へ送迎する場合があります。
通院介助に関しては、以前は介護保険が適用されない自費サービスとなっていましたが、2021年4月の介護報酬改定により、通院介助にあたる医療機関への通院と受診手続きに関する支援は介護保険によるサービスとして適用されるようになりました。ただし、受診の待ち時間や診察の際の身体介助に関しては介護保険によるサービスの適用外になるので通院介助を行う場合には注意が必要です。
訪問介護の仕事を行う際に必要となる資格があります。ここでは、資格の内容と取得要件に関してご説明いたします。
生活援助従事者研修は生活援助サービスを提供する人を対象とした、2018年から定められている資格研修です。必要な研修時間は約59時間となっていて、そのうちの29時間は通信学習で学ぶことが可能とされています。
そのため、通信教育などの自宅学習と通学(スクーリング)を活用して研修を短期間で修了することができます。研修を修了すると、ホームヘルパー(訪問介護員)として生活援助業務を行うことができるようになります。
気をつけないといけないのは、生活援助従事者研修を修了後に担当できるようになるのは、生活援助に関わる内容に限定されるということです。身体介護や通院介助を行うには、介護職員初任者研修などの資格が必要となります。
介護職員初任者研修は、介護職として働く上で必要になる基礎的な知識・技術を習得するための研修になります。
必要な研修時間は約130時間となっていて、そのうちの40.5時間は通信学習で学ぶことが可能です。資格取得にかかる期間は、約1ヵ月~4ヵ月です。講義と実技演習を経て、全課程終了後の修了試験に合格することで資格を取得することができます。
介護職員初任者研修の資格取得により、生活援助や身体介護、通院介助の仕事を担うことができるようになります。
【参考】カイゴジョブアカデミー 介護職員初任者研修修了者は無資格者とどう違う?
介護職員初任者研修を修了した後には、介護に関する専門的な知識と技術を習得するための研修として実務者研修があります。
介護職員初任者研修を修了していなくても研修を受けることはできますが、その場合の研修時間は450時間になり、修了まで6ヵ月ほどかかります。一方、介護職員初任者研修を修了している場合は、カリキュラムの130時間分が免除されます。
実務者研修での特徴的な研修内容として、医療行為に該当する「たん吸引」や「経管栄養」に関する介助があります。たん吸引や経管栄養は医療行為になりますので、介護職員初任者研修の資格だけでは行うことができません。しかし、実務者研修を修了していれば追加で実地研修を修了することで、現場でたん吸引や経管栄養などの一部の医療行為を行えるようになります。
また、実務者研修を修了することは、国家試験である介護福祉士試験を受験するための要件の1つを満たすことになり、介護福祉士を目指す方には重要です。
さらに、実務者研修の資格を得ると、サービス提供責任者になることもできます。サービス提供責任者は、訪問介護事業所の業務と訪問介護員の指導や管理を担う責任者です。訪問介護計画書の作成や利用者の状態の把握、訪問介護員への指示および情報伝達などリーダー的存在として、事業所の利用者の方が適切なサービスを受けることができるよう専門的にサポートを行います。重要な職種のため、待遇面がよく収入面でも高い傾向があります。より高いスキルを身に付け、専門職であるサービス提供責任者を目指してみてはいかがでしょうか。
【参考】
PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)
介護福祉士は介護職に関わる国家資格です。介護に関する専門的な知識や技術を習得していることを公に証明することができるようになります。
各事業所にもよりますが、介護福祉士の資格取得によって毎月のお給料に資格手当が加わり、収入アップにつながることが多いです。
試験は1年に1回、筆記試験と実技試験(筆記試験合格者対象)があり、合格して国家資格登録手続きを済ませることで取得することができます。
受験資格を満たすには、主に以下の4つの方法があります。
介護職としての実務経験3年以上(1,095日以上、かつ従事日数540日以上)と実務者研修を修了していることが必須条件です。この場合、実技試験は免除となります。
介護福祉士養成施設である専門学校や大学を卒業することで受験資格を得ることができます。通学方法によって2年~4年の通学期間が必要になります。
介護福祉士養成施設ではない福祉系大学、社会福祉士養成施設、保育士養成施設を卒業している場合は、さらに介護福祉士養成施設で1年以上学び卒業することで受験資格を得ることができます。この場合も、実技試験は免除となります。
福祉系高校を卒業することで受験資格を得ることができます。この場合は、平成21年度以降の入学者は実技試験が免除されます。
経済連携協定(EPA)により、インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者として来日して、日本で3年以上介護の実務経験を積むことで受験資格を得ることができます。
【参考】公益社団法人 社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)
訪問介護の仕事に向いている人とはどのような人なのでしょうか。訪問介護の仕事に向いている人の特徴をご紹介いたします。
介護の仕事は人と常に関わる仕事です。人と関わることが好きな方は介護の仕事に向いていると言えます。利用者の方と信頼関係を築くことができれば、良好な関係のなかでより適切な介護を可能にしてくれることでしょう。利用者の方によって、必要な支援の内容や生活環境は異なります。利用者の方を尊重した関わりができる人は、対人関係重視の仕事である訪問介護の仕事に携わることに適しているでしょう。
訪問介護は限られた時間のなかで必要な支援を行うことが求められます。
状況によっては身体介護と生活援助を同時進行させなければならないこともあるでしょう。臨機応変に限られた時間を有効に活用できる人には訪問介護は適した仕事と言えるでしょう。
1日に担当する利用者の方が複数になる場合も少なくありません。介護サービスの訪問時間に遅れることなく、時間を守ることができる人材が求められます。
訪問介護では生活援助を通じてさまざまな家事を担うことになります。食事の調理方法や掃除、整理整頓などで利用者の方から求められる内容や特徴は一人ひとりによって変化します。
生活援助で柔軟に対応するためには家事ができることが必須なので、家事が得意な人、好きな人は訪問介護の仕事に適しているでしょう。
訪問介護では1対1で関わる場面が多くなります。身体介護のなかでも、入浴介助や排泄介助、衣服の着脱介助や移乗介助は体力が必要になります。
介護技術を上手く活用することで体力の消耗を抑えることも可能ですが、夏や冬など季節によって体力を消耗しやすい時期もありますので、体力に自信がある人は訪問介護の仕事ではかなりの強みになるでしょう。
訪問介護は利用者の方の生活を守り、命を守る仕事になります。責任感をもって、利用者の方の意思を尊重した支援を行うことができる人が求められます。
誰しも、自分の仕事に対してやりがいを感じていたいと考えることでしょう。訪問介護の仕事で得ることができるやりがいや魅力についてご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。
利用者の方からの「嬉しい」・「ありがとう」・「訪問してくれるのが楽しみ」などの感謝の気持ちやポジティブな言葉が、介護職に就く人の心を癒し、励まし、働くことへのやりがいにつながります。
訪問介護で働くなかで、大変なことや辛いことがたくさんあるかもしれませんが、利用者の方からの心のこもった言葉はそのようなネガティブな思いをきれいに忘れさせてくれることでしょう。
訪問介護を利用される方はさまざまな人生経験を経てきた人たちです。多くの利用者の方から人生について学ぶことができ、今まで知らなかった人生観を得る機会になりますので、自分自身をいっそう磨くことができるはずです。
日々の訪問介護でさまざまな利用者の方に合わせた支援を行うため、介護技術を高めていくことができます。生活援助従事者研修や介護職員初任者研修から実務経験を積み重ねることで、実務者研修の資格や、国家資格である介護福祉士の資格取得へと自分自身の専門性を磨くことにつなげることができます。
訪問介護は短時間で行うことが多いため、出産や子育て、自分自身の都合などで働く時間を調整したい場合でも受けもつことができます。
所属する訪問介護事業所で勤務時間を調整してもらうことで、訪問介護の仕事にやりがいと充実感を感じながらプライベートの生活も充実させる、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)を実現させることが可能になります。
訪問介護の仕事は人と接し、触れ合うことのできる仕事です。日々の仕事を積み重ねることが介護技術の向上につながり、資格取得を通して専門性を高めてキャリアアップすることができるでしょう。スキルを磨きながら、利用者の方の誠実な笑顔を1つでも多く受け取ってくださいね。
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