人と接する職業では、少なからずクレームが発生します。
いきなりのクレームに、どのような対応を取るべきか混乱してしまう方は多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、介護職のクレーム事例や対応方法についてご紹介いたします。
クレームとはどういったものか、また、クレーム時の基本姿勢ややってはいけない対応についても解説いたします。
介護現場でのクレームとは、どのようなときに発生するのでしょうか?
また、スタッフはクレームをどのように受け止めるとよいかについて、以下でご紹介いたします。
クレームは、利用者の方やご家族が期待していた水準のサービスが受けられなかった場合に発生します。「苦情」という言葉と同じ意味で使用されます。
介護現場でのクレームとは、「もっと大切にしてほしい」「本当なのか事実確認をしたい」などの要望から始まることが大半です。
ご家族は介護現場を常時見ていることはできないので、大抵は利用者の方やスタッフから話を聞いて状況を知ることになります。そのため、スタッフからすると、とんでもない内容の質問をご家族から受けることもあるでしょう。
クレームを受けると、スタッフはネガティブに考えがちです。どうしても「文句を言われた」という感情を持ってしまうからです。
しかし、クレームはサービスに対して満足できなかったり、事実を確認したかったりする利用者の方とご家族の、あくまでもサービスに対する「意見」です。
クレームを伝えてきた利用者の方やご家族と真摯に向き合うことで、信頼が深まる場合もあります。
またクレームの原因を明らかにし、ほかのスタッフとも情報を共有することで今後のサービスの質を高めることにもつながります。
不満を顔に出すなど、不適切な対応は火に油を注ぐだけです。
スタッフは、「クレームをサービスの質を向上させる良い機会」ととらえ、利用者の方のため、自分たちのため、問題の改善に取り組むとよいでしょう。
クレームに対応するときにポイントとなる基本姿勢は以下の3つです。
それでは1つずつ確認していきましょう。
クレーム対応で最も重要なのは、相手の話を最後まで聴くことです。
特に批判されている時は、相手の誤解を解くために途中で話したくなるのが人心です。
そんな時こそ、ぐっと我慢して相手の話を最後まで聴く必要があります。
こちらが口を挟んでしまうと、相手の怒りに拍車をかけてしまうからです。
クレーム対応では、相手の目を見て必ず最後まで話を聴きましょう。その間、「分かります」「そうなんですね」「ごもっともです」などのあいづちを打つことで、相手の話がスムーズに進むでしょう。さらに、こちら側も真剣に話を聴いているという誠意を伝えることができ、相手に安心してもらえます。
相手に不快な思いをさせてしまったことに、素直に謝罪しましょう。
事故対応などで、「謝ると不利になるから」と謝罪しない人がいます。
しかし、「非を認めること」と「不快な思いをさせてしまったことに謝罪する」ことはまったく別です。
クレームに対して真摯に対応することで、不安や怒りが収まるケースも多いのです。
逆に、謝罪がないことにより利用者の方やご家族の怒りを買い、裁判にまで発展してしまうこともあります。
クレームを受けたら、まずは不快な思いをさせてしまったことへの謝罪をしましょう。
事故の疑いなどに関するクレームは内容確認後、上司や責任者から連絡してもらうことが大切です。
クレーム内容に関してあいまいなまま対応してしまうと、ご家族に不信感を与えてしまいます。
例えば転倒事故であれば、
など、必要な情報を整理した上でご家族へ連絡するべきです。
今後の解決策や賠償については、提供されるサービスや費用・ルールなど重要なことが記載された「重要事項説明書」の内容に基づいて説明することになります。
事故に関する情報をまとめた後、管理者からご家族へ連絡するのがもっともスムーズな方法です。
ここでは、介護のクレーム事例を2つご紹介いたします。
それでは詳しく解説していきます。
以上の事例について検討してみましょう。
最初のクレームに対して、スタッフが即答してしまったことに注目です。
クレーム対応では、事実を確認してから返答するのが鉄則です。
最初に、「このたびは、ご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございません。事実を確認し、改めて管理者よりご連絡を差し上げます」と謝罪するべきでした。
最も重要な点は、Dさんが「もうデイサービスへ行きたくない」と話していることです。
私たちにとっては、昼食をどれだけ食べたかは「ささいな問題」かもしれません。
しかしDさんからすれば、楽しく通っているデイサービスのスタッフに適当に扱われたように感じたのでしょう。
スタッフと利用者の方の価値観に違いがあるかもしれません。ささいなことが人を傷つけてしまうことを念頭に置き、常に相手の気持ちに寄り添って考え、対応していく必要があります。
以上の事例について検討してみましょう。
転倒後、スタッフはご家族へ連絡していました。その後、ご家族からの折り返し電話がなかったのは不運なことでした。
施設からの連絡に気がつかなかったご家族にも責任はあるかもしれません。
Aさんをお送りした時にも娘さんは不在でした。高齢のご主人に転倒した旨を伝えたものの、通院などの対応はありませんでした。
最も大事なことは、Aさんが骨折していたことです。
まずは、転倒時に看護師などの医療チームに判断を仰ぐべきでした。
ご本人は大丈夫と話していましたが、強打した右膝について看護師に診てもらっていれば骨折に気づけたかもしれないからです。
骨折に気付けていれば、病院へ連れて行けたかもしれません。
もしくは、「何か異変があれば、すぐに事業所へご連絡ください。病院受診のお手伝いをいたします。」など、「気にかけている」ことを伝えるべきだったでしょう。
ここでは、介護のクレーム対応でNGな行動について3つご紹介いたします。
それでは、順番に解説していきます。
利用者側の主張を否定してはいけません。
クレームの際には、相手が感情的になっているケースも珍しくありません。
相手の主張を否定すると、相手の怒りを大きくしてしまいます。
たとえば、ご家族から次のようなクレームがあったとしましょう。
「デイサービスから帰った後、母の右腕に青いアザを見つけました。何か心当たりはありませんか?」
ここで事実確認をしないまま、「絶対にうちでは転倒されていません。」などと言い、否定してしまうのはよくありません。
一度電話を切り、全スタッフに確認してから折り返し電話することが必要です。
間違っても、「前からあったのでは?」などの発言はNGです。
利用者の方やご家族の主張を否定せず、誠意をもって対応することで利用者側の信頼を得られます。
クレームを受けた後、すぐに対応しようとして正確でない情報を伝えてしまうのもNGです。
利用者の方やご家族は、最初に言われたことを信じます。
後から訂正して正しい情報を伝えようとしても、混乱を招くだけだし、時として「施設は隠ぺいしている」などと思われてしまうかもしれません。
どのようなクレーム内容であっても即答せず、まずは内容確認をしましょう。
電話で長時間待たせるのも、たらい回しにするのもNGです。
クレームを伝えたいのに電話で待たされると、イライラが倍増してしまいます。
スタッフからすれば、現場の介護の仕事もあるので仕方がないかもしれません。
しかし、長時間待たせた上に「折り返します」はよい印象を与えません。
「相手の話をしっかり聞いて、待たせず責任者から折り返し連絡する」を心がけましょう。
今回は、介護のクレーム事例と対応方法についてご紹介いたしました。
クレームと聞くと、どうしてもネガティブな印象を持ってしまうかもしれません。
しかしクレームは、利用者の方やご家族からの不満や不安な気持ちを分かってほしいというメッセージでもあります。真摯に対応することで、今までよりも強固な信頼関係を築くチャンスにもなるでしょう。
過去のクレーム例とその対応の記録を盛り込んだ、クレーム対応時のマニュアルを作成することをおすすめします。チームで一貫した対応がとれるように、全スタッフに周知徹底させることが再発防止につなげることになります。
チーム全体でクレームに対応し、介護サービスを向上させつつ、利用者の方やご家族からより強い信頼を得ながらじっくりと良好な関係を築いていってください。
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