介護職の業務のひとつである排泄介助では、日常的におむつの交換を行います。
しかし、おむつの正しいあて方・交換方法を知らない方は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、ベッドで行うおむつの交換方法についてご紹介いたします。
また、交換にあたって必要な事前準備や注意するべきポイント、スムーズに交換できるようになるコツについてもあわせて解説いたします。ぜひご覧ください。
三大介護のひとつ排泄介助において、おむつを交換する場面は昼夜問わず何度もあるでしょう。介護の現場ではおむつ交換は次の手順で行います。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
まずは必要な物品を準備します。準備する物品は以下のとおりです。
物品は必ずすべて準備しておきましょう。オムツ交換中に足りないものがあると途中でその場を離れて取りに行くこととなり、利用者の方を待たせてしまいます。
服を脱がせてしまう前に、おむつとパッドをセットして、利用者の方の足元辺りに置いておくとよいでしょう。こうしておくと、おむつを外した状態を少しでも短くできるため、利用者の方の羞恥心を軽減できます。
清拭タオルやおしり拭きで優しく拭き取りましょう。こするのではなく、優しくたたくように拭くことで皮膚トラブルを防ぎます。
また、前方(お腹側)から後方(背中側)に拭き取っていきましょう。後方から前方に拭き取ると尿路感染のリスクが高くなるのでやめましょう。
必要に応じて陰部洗浄を行いますが、水分は残さず乾いたタオルなどで丁寧に拭き取りましょう。水分が残ると褥瘡(床ずれ)の原因になります。
汚れたおむつを外します。外すときはおむつ・パッド内は不潔な状態になっているため、内側に丸めるようにして外していきましょう。布団やシーツ、衣類を汚すことなく交換できます。
また、汚れが少ない場合は、パッドを少しずらして清拭や陰部洗浄に使うと効率的です。使い捨てのおしり拭きを使用したら、おむつと一緒に丸めてしまいましょう。
新しいおむつをあてるときは、慣れていないと横にずれたり前後のバランスが悪かったりして、最後にテープで止められないことがあります。背骨とおむつの中心を合わせて、左右のバランスを確認しましょう。
また、おむつ背面部と背骨の一番下の辺りで合わせて、前後のバランスも確認してください。人によって体格が違うため、あてる位置は個別に調整が必要です。
おむつの前方を利用者の方の股の間に通して、下腹部へと持ち上げます。このとき、ただ持ち上げるのではなく、左右に引っ張りながら行いましょう。左右に引っ張ることで、そけい部にしっかりと沿わせることができるため、漏れを予防できます。
最後に、おむつがずれていないか確認してテープで固定します。おむつは両サイドから出ているテープで固定するタイプが多いです。その場合、まっすぐ止めずにやや下向き(斜め)に止めます。テープを斜めに止めると座った時に腹部の圧迫を防げるため、食事の時でも窮屈にならずに過ごせるでしょう。
ここからは、尿漏れを予防するおむつ交換のコツを6つご紹介いたします。
尿取りパッドには横漏れ防止の「ギャザー」がついているものが多いです。パッドを縦に折ることで、自然とギャザーが立ち上がり、尿が横に流れにくい機能が働きます。ただし、折るときは吸収面を内側にして折り、折った後はギャザーの立ち上がりを確認しましょう。もちろん利用者の方にあてるときにもギャザーのあたり方を確認し、しっかりと横漏れを防止しましょう。
尿漏れが多い利用者の方に対して、尿取りパッドを複数枚使いたくなりますが、それは逆効果です。本来、パッドは一枚だけあてることを想定して作られているため、複数枚使用してしまうと不自然な隙間ができ、漏れを起こしやすくなります。どうしても尿の漏れる量が多い場合は、パッドの変更やおむつのサイズを小さくするなどの工夫が必要です。
また、重ねてあてることのできるパッドもあるため、必要な場合はいろいろ試してみるとよいでしょう。
おむつをまっすぐあてることで機能が最大限発揮され、漏れや肌トラブルの軽減につながります。おむつをあてたときに、前後にズレがある・左右対称でない場合は、あて直しが必要です。漏れや肌トラブルがある場合は、おむつをまっすぐ適切にあてることができているかを再チェックしてみるとよいでしょう。
漏れの原因として、サイズが合っていないことも考えられます。身体に合っていない場合は隙間ができ、横漏れの原因となります。メーカーによって、使用感やサイズが異なるため、パッケージに表記されたサイズ表を確認しながら、最もおしりにフィットするおむつを選んでください。微調整可能なタイプのおむつもあります。
パッドの吸収量は排尿量に合わせて確認しましょう。吸収量はよく注目される点ではありますが、漏れのある方は、吸収速度こそが重要なポイントです。メーカーや商品によっては、吸収速度が2倍近くも変わります。吸収が速い分、横に流れにくくなるため漏れが減るでしょう。
ここからは、おむつ交換時の注意点をご紹介いたします。
おむつ交換時は、準備がしっかりとできているかどうかが大切です。準備不足だと、交換途中にその場を離れる必要が出てきます。その場合、いくらか下半身を出した状態で待たせてしまうことになり、利用者の方の自尊心を傷つけてしまう恐れがあります。準備は確実に行うようにしましょう。
おむつ交換は、介護職にとっては日常業務のひとつです。慣れていくにしたがって、利用者の方への声かけが減っていく方が多いかもしれません。利用者の方の羞恥心や不安解消のためにも、必ず声かけをして少しでも精神的な負担を取り除いてあげましょう。
おむつ交換は、利用者の方からすれば、羞恥心や精神的負担を感じやすいケアです。介護職員は慣れゆえにカーテンやドアを閉め忘れたり、安易な声掛けを行ったりしてしまうかもしれません。利用者の方にとっては繊細なケアであることを十分理解しておきましょう。
おむつ交換のときはベッドの高さを変えましょう。通常ベッドの高さは利用者の方に合わせた高さになっていますが、そのままだと介助者は前かがみでおむつ交換をすることになり、腰の負担が大きくなってしまいます。ベッドを上げて、腰に負担をかけず自身の身体を守ることも大切です。
交換後のおむつやパッドを一時的に廃棄する場所を確保しておきましょう。床に新聞紙を敷いたり、バケツを準備したりなど、衛生上、直接ベッドの上や足元に置かないように注意が必要です。
介護職の基本とも言えるおむつ交換ですが、行う人の能力差が大きく出ます。できる人は単なる交換にとどまらず、以下の点にも気を付けています。
排尿や排便の色・形状・臭い・量などを確認し、健康状態を把握します。
おむつ交換は1日に何度も行うため、同時にボディチェックをするよい機会です。おむつを装着しているとむれたり、かぶれたりする場合も多く、トラブルを起こしやすい傾向にあります。
また、おむつを装着している人は寝ている時間が長く、仙骨部分に褥瘡ができやすいので、ボディチェックは必須です。
おむつやパッドのシワはもちろん、衣類・シーツ・布団も注意して確認しましょう。高齢者の場合、少しのシワでも皮膚を圧迫してしまうため、発赤や褥瘡につながってしまいます。
特別な情報があるときは必ず申し送りを行いましょう。
たとえば、以下のようなものがあげられます。
これらは一時的なら問題ありませんが、継続する場合は重大な疾病につながることもあります。ささいなことでも記録に残し、申し送りをしていく習慣を持ちましょう。
今回は、おむつ交換の手順や注意するポイントをご紹介いたしました。
手順や手際は、業務を行ううちに少しずつ上達しますが、注意するポイントやコツは意識しないと、間違った自己流のやり方になってしまう危険があります。
最善のおむつ交換を行うことができれば、利用者の方にとって少しでも安楽なものになるかもしれません。
正しい方法と知識で、利用者の方に安心して任せてもらえる介護職員を目指しましょう。
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