「介護でよく聞くADLって何?」「ADLの指標を出すメリットが分からない」このような疑問はありませんか?
ADLは、介護の世界で使われている評価指標の一つです。介護に携わっているけど、ADLという言葉への認識が曖昧である人は多いのではないでしょうか?ADLを知れば、高齢者の自立した生活の後押しにつながり、介護が必要かどうか把握できます。
そこで当記事では、介護におけるADLの概要について紹介します。またADLの評価方法、低下してしまう原因についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ADLとは、「Activities of Daily Living」の略で、日本語では「日常生活動作」と訳されます。日常生活を健康に送るうえで最低限必要な日常的動作のことで、以下のような動作が該当します。
移動や階段の上り下りなど、人間らしい生活を送るためには欠かせない動作であることが分かるでしょう。ADLが低下すると、要介護になる可能性が高くなるため、介護ではどれだけADLを維持できるかが重要になってきます。
ADLと似た言葉に、「IADL」という指標もあるためチェックしておきましょう。
IADLとは、「Instrumental Activities of Daily Living」の略で、日本語では「手段的日常生活動作」と呼ばれています。ADLが基本的な動作なのに対し、IADLはより高度で複雑な動作を指します。該当する動作は以下の通りです。
買い物や公共交通機関を使っての外出など、基本動作に加えて状況判断や意思決定が可能かも重要になってきます。
IADLは、ADLでも確認する移動や食事の動作も包括しています。そのため、IADLが維持できなくなると、やがてADLも維持できなくなりまです。高齢者の自立した生活のサポートのためにADLとセットで覚えておきましょう。
介護現場ではADLやIADLをどのように評価していくのでしょうか。ここでは、現場で主に使われている3つの評価方法を紹介します。
それぞれ順番に見ていきましょう。
FIMは、「Functional Independence Measure」の略で、1983年に開発されたADLの評価法です。日本語で「機能的自立度評価法」といいます。評価法の中ではもっとも信頼性や妥当性があるとされ、介護現場でよく用いられています。
FIMの評価項目は、「運動項目」と「認知項目」の計18項目です。各項目を1〜7点の7段階で評価します。点数が高いほど自立度が高く、低いとADLが低下していることになります。FIMを使うと対象者の自立度と介護度を点数で把握できるため、介護が必要か客観的に知ることができます。
BIは、「Barthel Index(バーセルインデックス)」の略で、日常生活の能力を把握できる国際的なADLの評価方法です。BIの特徴は、高齢者自身がADLを評価する点にあります。項目には環境や条件など細かい設定がされていないため、誰でも簡単に評価ができます。
評価項目は全10項目で、それぞれ0〜15点を付けていき合計すると100点満点になる仕組みです。点数によって完全自立から全介助までの介護度が分かるため、本人はもちろん家族も介護状況を把握しやすくなります。
Lawton(ロートン)は、IADLの発案に携わったアメリカの心理学者「M・Lawton」らによって作られた評価指標です。評価表は8項目あり、本人が3〜5段階の選択肢から「できる:1点」か「できない:0点で」で採点していきます。
合計点数が高いと自立できていることになり、低いと介助が必要になります。ポイントは、女性と男性で項目が異なることです。女性は8項目すべてに回答する必要がありますが、男性は洗濯や家事の項目を抜いた5項目のみに回答します。男女によって対象項目が変わる点に注意しましょう。
FIM | BI | Lawton | |
メリット | ・自立度や介護度が細かく分かる
・多職種と情報共有しやすい |
・採点が簡単で短時間でおわる
・点数が分かりやすい |
・採点が短時間でおわる
・評価基準がシンプルで分かりやすい |
デメリット | ・評価するまで時間がかかる
・評価基準の判断が難しい |
・FIMに比べ点数が大まか
・細かいADLは把握しにくい |
・ADLの評価に向いていない
・男女によって評価項目が変わる |
元気に自立した生活を送るためには、ADLを低下させないことが重要です。ADLを低下させないためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
それぞれ順番に見ていきましょう。
ADLが低い人のために良かれと思っても、過剰な介護はしないようにしましょう。介護をしすぎると自分でできる環境やモチベーションを奪ってしまいます。
自分でできることは本人にしてもらうことが大切です。寄り添って見守りながら、足りない部分だけ手を差し伸べることで、ADLの維持にもつながります。
自立した生活を送るためには、生活環境を整えることも大切です。自宅で介護されている場合は、玄関や浴室の段差を解消したり引き戸に変えたりなど、通常の生活に設備を追加するだけで、生活がスムーズに送れます。
また、歩行補助杖やシルバーカーのような福祉用具を使えば移動への障壁が低くなり、引きこもりを予防できます。常に車で送迎するのではなく、時には一緒に歩いて散歩や買い物を楽しむと良いでしょう。
筋力は、使わないと次第に能力が衰えてしまいます。そのため、定期的にラジオ体操や散歩をして、体を動かすようにしましょう。
また、バランスの良い食事も筋力維持には欠かせません。特に、筋肉を作るタンパク質はしっかり摂取しておきましょう。
ADLを維持するためにも、運動とバランスの良い食事を意識してみてください。
ADLを維持するためには、認知機能を保つことも大切になってきます。そのために、ながら作業を行うように意識してみましょう。
例えば、「買い物に行きながら献立を考える」、「洗濯を干しながら午後の予定を確認する」など、複数の作業を同時に行うことで認知能力の低下を防げます。
本人が主体的に行うのが難しそうなら、歩きながら献立を一緒に考えるなどサポートしてください。
運動の実施や過剰な介護を控えつつ、ADLの評価を定期的にとって体の状態をチェックしましょう。「毎月1日に実施する」のように評価する日を決めておけば、先月との違いや健康状態など僅かな変化も確認できます。
さらに、ADLの評価をとることが高齢者とのコミュニケーションにもなります。ぜひ、積極的に会話をしながら体の調子について話してください。
ADLの指標は、高齢者の健康的な生活をサポートするためになくてはならないものです。高齢者の行動を観察し、より高度なIADLの評価でも良さそうか確認してみましょう。
評価方法にも3種類ありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。時間を優先するなら「BI」や「Lawton」、より詳しい内容が知りたいなら「FIM」を使うなど、利用目的に応じて選ぶようにしましょう。
ここで紹介したADLを低下させない方法を実践でも取り入れて、高齢者の自立した生活を後押ししてください。
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