介護職が利用者の方と関わっていくなかで、コミュニケーションはとても重要になります。
しかし、どのようにコミュニケーションを取るべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
今回は、介護職に必須な2種類のコミュニケーションをご紹介する中で、コミュニケーションを取るときのポイントや注意点について解説していきます。
コミュニケーションは、自分の意思や気持ちなどを言語や文字、身振りといったさまざまな手段を活用して相手に伝えることと、相手の意思や気持ちなどを受け止めることを互いに繰り返していきます。
介護職におけるコミュニケーションは、介護職と利用者の方が互いに自分の意思や気持ちを伝え合うことです。コミュニケーションを通じて思考や気持ちを伝え合うことで、介護職と利用者の方の信頼関係の構築につながります。
しかし、利用者の方の中には老化による聴覚や視覚、言語能力の低下、認知症による症状や障害によりコミュニケーションが難しい状況になり、うまく伝えられないという場合も少なくありません。
コミュニケーションができない状況が続くと、利用者の方は孤独感を感じてしまい、自分の意思や気持ちを伝えられないストレスによる精神的な負担が生じてしまいます。
利用者の方とコミュニケーションができない状況が続くと、介護職が独りよがりな支援を行っていることになり、利用者の方の意思や気持ちを尊重した支援ではなくなってしまうでしょう。
介護職に必須となる2種類のコミュニケーションをご紹介いたします。
言語コミュニケーションとは、意思や気持ちなどを相手に伝える際に言語を用いて伝える方法です。言語コミュニケーションは以下のように分類することができます。
平成23年(2011年)の障害者基本法の改正より、手話は言語であると法的にも位置づけられています。
【参考】一般社団法人 全日本ろうあ連盟 「手話言語に関する見解」
非言語コミュニケーションとは、言語以外を使って自分の意見を相手に伝える、相手から受け取る方法です。非言語コミュニケーションは以下のように分類することができます。
介護職が円滑に利用者の方とコミュニケーションを取るための、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションについて解説していきます。
話の内容が次々と変わっていったり、たくさん話をしてしまったりすると、利用者の方に伝えたい内容が何かが分からなくなってしまいます。それはコミュニケーションが円滑に取れていない状態です。
伝える順序をよく考え、筋道を立てて話して、利用者の方に分かりやすく、より確実にコミュニケーションが取れるための方法を考えていきましょう。
介護職が一方的に話をしてしまうと、利用者の方は話したいことも話すことができないかもしれません。
介護職が一方的に話すのではなく、介護職としての話はいくつかに区切ることで、利用者の方から話を引き出すことにつながります。
受容とは、利用者の方の言葉や気持ちをありのままに受け入れて、介護職が主観的に否定や肯定をしないコミュニケーション技法です。
介護職が受容することで、利用者の方が介護職に話をしたいという気持ちを引き出し、信頼関係を築くことにつながります。
介護職が利用者の方の話に親身になって耳を傾けることで、利用者の方に介護職とコミュニケーションを取る安心感や信頼感を持ってもらえるようにします。
利用者の方の気持ちに寄り添って耳を傾けるコミュニケーション技法は、傾聴(けいちょう)と言われています。
利用者の方が話す会話の中から大切だと思うキーワードを引き出して、介護職が利用者の方に話をしたり、利用者の方が話した内容をまとめて伝えたりすることで、利用者の方から会話の意欲を引き出すことができます。また、コミュニケーションができている状態の確認や修正を行うことができます。
利用者の方との信頼関係を築くために、介護者自身の気待ちや介護者の趣味や興味があることを会話のきっかけにすることも有効です。
しかし、自分自身のことを利用者の方に伝えすぎると介護職から利用者の方に依存してしまう状況になったり、利用者の方からの関わりに疲弊したりする可能性があります。
自分自身の中で、自己開示はどの範囲でできるかを考えておくことが大切です。
言語コミュニケーションの活用を工夫したらコミュニケーションが取れると考えられる場合は、はい・いいえで答えられるクローズドクエスチョンや選択肢で解答できる質問をするとよいでしょう。効果的な手段になります。
利用者の方と落ち着いて話をしたいときは、話しやすい場所や環境、雰囲気を考えることが大切になります。
利用者の方の希望を尊重した環境づくりを行うことで、利用者の方のコミュニケーションに対する意欲が向上することにもつながります。
利用者の方が普段から活用している非言語コミュニケーションに介護職が合わせることで、利用者の方の会話の意欲を引き出すことができます。
ことわざに「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。コミュニケーションで表情や目から受ける印象は相手に強く残る特徴があります。
介護職として利用者の方とコミュニケーションを取るときには、利用者の方が不快に感じないような表情やアイコンタクトを意識することが大切です。
介護職の性別や身体の特徴、身だしなみは、利用者の方が介護職に話をできるかどうかの気持ちに影響を与えることがあります。
身だしなみが整っていないと落ち着いた印象には見えず、利用者の方が介護職と会話をしたいと思う意欲が減ってしまうかもしれません。身だしなみは日頃から整えることを意識しておきましょう。
言語コミュニケーションを活用することが難しい場合、うなずきや首を振ること、表情やアイコンタクトで思いを伝えることができる質問方法を考えてみましょう。非言語コミュニケーションを効果的に活用できます。
言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションは組み合わせて活用することで、より意見を伝えやすくなります。
たとえば、利用者の方の話を介護職がにこやかな表情で受容して、うなずきながら傾聴するという会話の状況は、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの組み合わせによるものと言えるでしょう。
言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションは組み合わせて活用することで、利用者の方は介護職が「聞いてくれているな」と思うようになり、安心感と信頼関係を築くことにつながります。
【参考】老人ホームマップ 「傾聴・共感・受容がコミュニケーションの基本姿勢です」
言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの介護職としての注意点を解説いたします。
介護職が利用者の方と友人のような言葉遣いで関わることは、利用者の方に不快感を与えてしまう可能性があることを考えてほしいです。ふさわしくないと少しでも思う場合は、言葉遣いを見直してください。
介護職と利用者の方との関係性の中で、介護職が利用者の方より立場が上になるということはありませんので注意しましょう。
介護職が利用者の方の身体に触れるスキンシップに関して注意が必要です。スキンシップは利用者の方の人生における生い立ちや文化などにより、不快に感じることがあります。ハイタッチでも、利用者の方が不快に感じる場合は行わない方がよいでしょう。
言語コミュニケーションで確認をすることも大切ですが、表情や目線などの非言語コミュニケーションの中で利用者の方に否定的な様子があれば、スキンシップに対する考え方を検討する必要があります。
言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションのどちらかに偏りがあると、利用者の方は「介護職の人はしっかりと話を聞いてくれていない」と感じるでしょう。
言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションがバランスよくできていることがコミュニケーションの質を高めることにつながります。
「話を聞いてくれていない」と利用者の方から話があったときには、自分自身のコミュニケーションの中で言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションがどのように活用されていたのかを振り返り、考える時間を作ってみましょう。
利用者の方が介護職に話をしたいと思ってもらえるように、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションを組み合わせながらコミュニケーションを行っていきましょう。
利用者の方とのコミュニケーションがうまくいかないと悩んでいる場合は、利用者の方とのコミュニケーションの中で言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションをどのように活用していたのかを振り返り、考える時間を作りながら、介護職としてのコミュニケーション力を磨いていきましょう。
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