高齢化社会の日本で、介護士は需要の高い職業であり、将来性のある職業でもあります。そのため、介護士を目指している方は決して少なくありません。しかし、文理選択で文系・理系のどちらを選ぶべきか分からない方は多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、介護士を目指すなら文系・理系のどちらがオススメなのか紹介します。最後に文系・理系のそれぞれのメリットとデメリットを紹介します。
介護士の仕事は、身体が不自由な高齢者や障害がある方の食事や入浴、排泄などの身体介護や日常生活を送るために必要な生活援助を行います。その他、利用者本人やご家族に介助方法や福祉用具の使い方などの助言や指導をすることも仕事の一つです。
また経験を積んで介護福祉士になると、チームマネジメントやケアチームのリーダーとしての役割を担います。介護業務以外に、介護職員のタスク管理・教育・指導・他職種との連携といったことも仕事内容になるでしょう。
介護士として重要な能力として、「コミュニケーション能力」「判断・観察能力」「柔軟性」があげられます。利用者の方やご家族、他の介護事業者とコミュニケーションを取る機会が多くあります。そのため、コミュニケーション能力が高ければ、利用者の方に安心できる環境を作ることができるでしょう。
また、コミュニケーション能力が高いと、意思疎通が困難な利用者の方の情報収集にもつながり、ご家族との信頼関係を良好に保つことができます。
利用者の方の体調変化や、精神状況の変化に素早く気づき対応できる判断力・観察力が必要です。利用者の方の行動を観察して問題が発生した場合でも、冷静な判断と指示、行動が求められます。その他、職員の育成や他職種とのチームケアを実現するためにも、介護士としての観察点や判断力は必要不可欠です。
利用者の方の性格やケア方法がそれぞれ異なるため、求められていることに対して、対応できる柔軟性も必要になります。
介護福祉士になると、介護職のリーダー的な役割を担うため、冷静かつ的確な指示や指導を求められるでしょう。
介護の仕事は対人的なコミュニケーションや、相談援助が必要になる場面が多く、介護記録など文章を考える場面もあるでしょう。人間関係や哲学的な知識やスキルも必要です。そのため、基本的には文系の知識が生かされる仕事といえます。
介護福祉士の資格取得には、国家試験に合格する必要があります。国家試験の内容は文系の要素が強いため、文系が有利と考えることもできるでしょう。
しかし、ボディメカニクスやトランスファーといった知識や、技術に関しては理系分野になります。最小限の力で介護をするための力学的関係、身体の構造などを学ぶ生物学は、理系の知識が生かされるでしょう。
実務経験を重ねていくと、後輩を指導することも増えます。「後輩を指導」するには、筋道を立てて根拠のある説明が必要です。この技術には、理系スキルが求められます。
介護業界は近年、ITの導入も進んでいるため、パソコンやタブレット端末の操作はもちろん、機械操作や仕組みを理解する理系分野の知識が必要になることもあります。
介護現場だけではなく、収支の管理や運営に関わる役職になれば、予算を立て計画的に行動するなどの理系のスキルが重要です。キャリアアップを考えるのであれば、理系の知識は必要不可欠といえるでしょう。
介護士になるためには法律や制度の理解・コミュニケーション・介護記録など、文系にあたる業務が多くなります。しかし、身体の仕組みの知識・医療的ケアなど、理系にあたる知識も必要です。
つまり、進学で文系・理系で悩んでいる場合は、文系・理系どちらの知識も必要といえるので、「どちらでも良い」と考えられます。
ただし、文系と理系ではそれぞれ学ぶことが異なるため、すぐに仕事で生かすことができるかどうかは別の話です。次は、それぞれのメリットやデメリットを見ていきましょう。
文系の学科に進学した場合、福祉の歴史や思想を多く学べます。コミュニケーションスキルや言葉や文章に関してのスキルの向上もできるでしょう。また、介護現場で求められる能力も文系要素が強い傾向です。
介護福祉士の国家試験を受ける場合には、「社会の理解」という科目があります。この科目は法律や制度について学ぶため、文系となるでしょう。ほかにも、心理学が必要となる「こころとからだのしくみ」は文系になるため優位となります。
文系は一般的に進学先が多く、学校の選択肢が増えることが魅力です。
「体位変換」「ベッドから車椅子、車椅子から便座や浴槽への移乗など」に必要な身体の動かし方は、物理的要素が多くあります。介護技術に適した知識を得るには、理系が適していると考えられます。
文系を選ぶと、身体的な理解が必要な場面で苦戦するかもしれません。しかし、身体的な介護技術や指導・教育は経験で補える部分も多いため、文系ではできないということはありません。
現在の理系学部は多様化し、代表的な数学科や物理学、化学に加え、畜産・水産学部、自然科学や技術職などで活用される理工学部、医学や薬学、看護学も理系に分類されています。
介護の仕事においては、医療知識や人体構造、介護技術面では、てこの原理や体の効率的な動きを正しく理解し実践することが必要です。
近年の介護業界では、国や法人等がDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進している背景もあり、理工学などの基礎的な考え方や知識が活かされる場面も増えてくると予想されます。
理系の勉強は数学や医学などの「難しい」イメージが強く、苦手意識を持つ方も少なくありません。文部科学省の調べによると、高校生が選ぶ文系・理系の割合は文系7割、理系3割であると発表されています。介護業界では、文系の人が多い傾向です。
キャリアアップとして会社や法人を運営する「管理職」などの上位職には、問題点や課題に対する分析力、コスト管理や業務の効率化の視点、人材マネジメントの知識や理解を求められるため、必然的に理系の要素が問われます。
役職者を目指すのであれば、理系のスキルは必要となるでしょう。
理系のデメリットは、介護現場において利用者の方や入居者の気持ちを理解することが苦手なことです。
理系の人は、倫理的思考(ロジカルシンキング)が得意な反面、法則性や固定概念に囚われてしまい、利用者の方や入居者の自由な感情表現に共感や理解ができず、人間関係を築くことが難しくなってしまう場合もあります。
しかし、介護業務を行っていると、コミュニケーションは必須の業務となり、日々積み重ねることでスキルとして習得することは十分可能です。また、一緒に働く介護職には、文系が多い傾向のため、関わっていくことで、文系の思考やスキルを吸収することもできるでしょう。
介護士の経験を積んでいくと、さらなるステップアップを目指すこともあるでしょう。介護士からのステップアップとして考えられる職種には、「介護福祉士」「介護支援専門員(ケアマネジャー)」や「相談員」などがあります。介護支援専門員や相談員も文系の要素が強いと考えられます。
相談援助の専門家として、「社会福祉士」という選択肢もあるでしょう。社会福祉士になるために必要な「社会福祉士国家資格」を取得するには、文系の知識が必要です。「社会福祉士」の資格が取得できれば、仕事内容も増え、活躍できる職場や職種の選択肢も広がるでしょう。
今回は、介護士を目指すなら文系がおすすめの理由について紹介しました。介護士に求められる能力として、文系要素が多くあります。将来的に相談援助などの仕事に就く際も、文系のスキルを生かしていけるでしょう。進学の際も、文系の学校が多いため、選択肢が広がります。
進学先で迷われている方は今回紹介した内容を参考に、文系を選択すると良いでしょう。しかし、将来を見据えて運営や経営に関わりたい場合は、理系のスキルも重要です。
自分自身が文系・理系どちらが得意な分野なのかを理解し学ぶことで、介護福祉士の資格取得、さらには就職後の働き方も変わってきます。
どちらを選んだとしても将来的に補うことは可能なため、じっくりと検討してください。
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