人手不足が深刻化している介護職では、その業務量の多さや責任の重さ、人間関係などさまざまな要因により精神を病んでしまう方が多いと言われています。そこで当記事では、介護士が精神を病む原因・対処法についてご紹介いたします。
うつ病になった場合の対処法は、医者にかかることが最優先であることを前提に、対処法を解説いたします。また、防止策もご紹介いたします。
ここでは、介護職が精神を病んでしまう原因について5つご紹介いたします。具体的には、
それでは、順に解説していきます。
介護職は、職場の人間関係にストレスを感じやすい傾向にあります。なぜなら介護は一人で行うことはできず、「チームプレイ」を必要とするからです。
介護現場には、さまざまな年齢や職歴を持つ人が集まります。価値観や考え方の違いから、人間関係に深い溝ができてしまうこともあるでしょう。
性格が合わない人と仕事をしなければならず、大きなストレスを抱えてしまうこともあるのです。
正当な待遇や評価を得ている実感が得られず、ストレスになってしまうこともあります。令和元年に実施された調査では、約40%の介護職が「仕事の割に賃金が安い」と答えているのです。
また、介護職は自分の仕事量を数字に表すことができません。「こんなに頑張っているのに、ほかの職員と給与に大差がない」と不満を感じてしまうこともあるようです。
【参考】介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査の結果」(P.5)
介護職は、人手不足の現状に大きなストレスを感じています。前章でご紹介した令和元年の調査では、介護職の約55%が人手不足に悩んでいると回答しているのです。
少ない職員でシフトを回すためには、残業や休日出勤が必要になる場合もあります。短期間であれば、体力的な負担だけで済むかもしれません。しかし、人手不足が長期化することで十分な休養が取れず、精神的なストレスを感じてしまうこともあるようです。
体力的な消耗は、精神的ストレスにつながることがあります。体力と精神は、密接に関連しているからです。
介護職は、入浴や排泄、移乗の介助など多くの場面で体力を必要とします。人手不足などが原因で、必要な休養が取れないこともあるかもしれません。体力の消耗から、精神的なストレスを感じてしまうこともあるのです。
施設や法人の理念に共感できず、ストレスを感じてしまうケースもあります。個人の希望が必ずしも施設・法人の理念と一致しているとは限りません。
たとえば、人員体制について、スタッフを増員し安心してケアを提供できる体制の構築を個人が希望したとします。しかし、施設側は予算や効率の都合から、必ずしも増員に応じられるとは限りません。
このように個人の希望が叶えられず、ストレスを感じてしまうことがあるのです。
介護職が「うつ病」などになり、労災請求するケースが増加しています。介護職の労災請求件数は、全業種の中でトップです。令和3年度、介護職が「精神障害に関する労災」を請求した件数は336件でした。(うち82件が支給)
ここでは、介護職がかかりやすい「うつ病や燃え尽き症候群」について詳しく解説いたします。
【参考】厚生労働省「令和3年度 精神障害に関する事案の労災補償状況」(P.17、18)
うつ病とは、気分障害の1つです。気分の落ち込みが現れ、生活に支障が生じる場合は、うつ病の可能性があります。普通の体調不良や疲れは数日で改善しますが、うつ病では慢性的に症状が現れるのが特徴です。
以下は、うつ病の代表的な症状です。
うつ病になってしまう原因は、正確には解明されていません。うつ病の治療は、しっかり休養をとることが重要と言われています。
「うつ病かもしれない」と感じたら、主治医などの専門家に相談しましょう。また、厚生労働省は、電話やLINEなどで相談できる窓口を設置しています。一人で悩まずに、相談することが重要です。
【参考】厚生労働省 「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト 相談窓口案内」
燃え尽き症候群は「バーンアウトシンドローム」とも呼ばれ、医療や福祉職などの対人サービス業で多くみられると考えられてきました。一生懸命に仕事をしていた人が心身の疲労により、燃え尽きたように意欲を失ってしまうことを指します。うつ病の一種と考えられることもあるようです。
主な症状は、以下のとおりです。
うつ病と同様に、しっかり休養をとることが重要と言われています。症状を感じたら、主治医や専門家、前章の相談窓口へ相談されることをおすすめします。
ここでは、介護職が精神的に病んでしまいそうなときの対処法5つをご紹介いたします。具体的には、
それでは、順に解説していきます。
精神的に病んでしまいそうなとき、信頼できる人に話を聴いてもらうことは有効です。職場の上司や同僚、家族、友人などに話してみましょう。
すぐに解決策は見つからないかもしれません。しかし、話を聴いてもらうだけでも、気持ちが軽くなることもあります。まずは、身の回りで悩みを打ち明けられる相手を探してみましょう。
気持ちをリフレッシュするために、生活習慣を見直してみるのも重要です。健康的な生活習慣は、精神的な落ち着きを得られる効果が期待できます。
具体的には、以下のことを心掛けてみましょう。
どれも健康的な生活を送るためには欠かせないことです。身体と精神は、深い関わりをもつと言われています。精神的な安定のためには、生活習慣を見直すことも重要なのです。
介護の現場には、さまざまな価値観を持つ人がいます。年齢や職歴も多様です。「価値観が違うのは、当然のこと」と考えてみましょう。少し気持ちが楽になるかもしれません。
相手を変えることは大変難しく、大きなストレスが発生します。しかし、自分の対応を変えることは可能です。「この人は、こういう価値観の人」と割り切り、接することでストレスを軽減できるかもしれません。
日々の業務に苦痛を感じたとき、「これは将来のキャリアアップのためだ」と前向きに考える方法も有効です。今の状況は、永遠には続きません。「管理者になって、雰囲気を変えたい」「いつかケアマネジャーになりたい」など、将来の自分をイメージしてみるのもよいでしょう。
どうしても状況が好転しない場合は、環境を変えることも必要です。1つの職場に留まり努力することも、自分が成長するためには欠かせません。しかし、苦しい思いをして体調を崩してしまっては本末転倒です。その前に、部署異動や転職を検討してみましょう。
自分の気持ちや体調を優先することは、決して悪いことではありません。
ここでは、介護職が精神を病まないための防止策を5つご紹介いたします。具体的には、
それでは、順に解説していきます。
精神的に安定するためには、よき相談相手を持つことが重要です。職場でもプライベートでも構いません。
悩みや不安を話せると、自然と気持ちも楽になります。ストレスが大きくなってしまう前に、日常から気軽に話せる相談相手を持ちましょう。
職場以外の交流を持つことを意識しましょう。自宅と職場の往復では、息が詰まってしまいます。職場以外の交流は、リラックスできるだけでなく視野も広げてくれるはずです。たとえば、スポーツや趣味のサークル、習い事などもよいでしょう。
肉体と精神は密接に関連しています。ですから、精神的な安定のためには健康的なライフスタイルは欠かせません。健康的な生活のため、以下の3つを心掛けましょう。
夜勤などの不規則勤務がある場合は、常に実施するのは難しいかもしれません。まずは、できる範囲でスタートしてみてはいかがでしょうか。
「なぜか分からないけれど、モヤモヤする」場合、そのまま放置するのは避けましょう。ストレスの原因が特定できれば、対処することが可能だからです。
自分がストレスを感じることを、紙に書き出すのもよい方法です。そして、それぞれの対策を考えます。「苦手を克服するための方法はないか」「やるべきことに優先順位をつける」など、深く考えてみることも重要です。
さまざまな対策を考えても、自分ひとりの努力で打開できないこともあります。そんなときは、思い切って転職を検討してみるのもよいでしょう。介護職にはいろいろな働き方があります。
「これまでの勤務形態や部署とは異なる働き方」ができる法人を探してみるのもおすすめです。有給取得率や休日日数を公開している法人をチェックしてみるのもよいでしょう。
今回は、介護士が精神を病む原因や対処法についてご紹介いたしました。介護職は人の命を預かる重要な役割を持っています。加えて人手不足が深刻化しており、ストレスを抱えやすい状況と言えるでしょう。
「うつ病かもしれない」と感じたときには、医療機関へ相談しましょう。無料で利用できる政府の相談窓口もあります。一人で抱え込まず、相談することが重要です。
また、自分の努力だけでは状況が変えられない場合もあります。そんなときは、転職することも視野に入れましょう。これまでの経験を生かしながら、自分らしく働ける職場が見つかるはずです。この記事が、悩みを解消するきっかけになれば幸いです。
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