介護人材を対象にした制度の1つに「再就職準備金」があります。介護職員として再就職したい人にとってはとても重要な制度ですが、どのような制度なのか知らない方は多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、再就職準備金の概要についてご紹介いたします。どのような人が対象になって、どれくらいの貸与額なのか、実際に利用したい人に向けて、手続き方法もまとめて解説していきます。
再就職準備金は、介護職員として働いていた人が再び介護職員として就職する際に、再就職にかかる費用を最大40万円まで借りられる制度です。再就職準備金は就職後に2年以上勤務すると返済が全額免除になります。
介護職員の雇用形態は正規職員、非常勤/パート職員であることに決まりはありません。再就職準備金の申請窓口は、住まいの地域にある都道府県の社会福祉協議会が運営している福祉人材センターです。
ここでは、再就職準備金の対象になる人と条件についてご紹介いたします。
前職と再就職先で介護サービス事業所や施設で介護職員として就職する方が再就職準備金の対象です。再就職準備金の対象となるためには、以下の事業所で介護を主とした業務に従事することが求められます。
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設等
介護予防等を行う事業所
勤務形態に関しては、正規職員、非常勤/パート職員であることの決まりはありません。
再就職準備金の対象になる方は以下の条件をすべて満たす必要があります。対象条件については都道府県によって多少異なりますが、以下の内容は概ね共通です。
介護保険サービス事業所や施設での介護職員としての実務経験を証明する必要があります。1年以上という基準は、雇用期間が365日以上、介護業務への従事期間が180日以上を満たす必要があります。
介護職員基礎研修、1級課程(ヘルパー1級)/2級課程(ヘルパー2級)の方も該当します。
前職と再就職先が介護保険サービス事業所や施設で介護職員として就職していることが必要です。
住まいの地域にある都道府県の福祉人材センターで「離職介護人材」の届出を行ったのち、「再就職準備金利用計画書」を提出する必要があります。
再就職準備金の貸付を行うことができるのは1人1回限りです。対象条件について都道府県によって多少の違いがある場合がありますので、住まいの地域にある福祉人材センター(都道府県の社会福祉協議会)のホームページで確認してください。
【参考】厚生労働省 介護職として再就職をお考えの方、初めて働くことをお考えの方へ(再就職準備金、就職支援金のご案内)
再就職準備金の貸与と返還に関してご紹介いたします。
再就職準備金の貸与額については、全国一律で40万円を上限としています。コロナ禍以前は、介護人材不足が顕著な問題となっていた首都圏・関西圏及び東日本大震災の被災地では上限40万円、それ以外の地域は上限20万円でした。
再就職準備金は「介護職員として継続して2年間勤務する」ことで全額返還免除されます。再就職準備金の返還義務が発生する場合は以下の場合などがあります。
介護職ではない異業種への転職、1ヶ月以内に介護職員として別の事業所へ転職できなかった場合は再就職準備金の返還義務が発生します。
ケアマネジャーなどの相談支援が主な義務になる場合、施設長等の管理職が主な義務になる場合など、同じ事業所で勤務をしていても業務変更がある場合は、再就職準備金の返還義務が発生します。
再就職準備金の返済には利子がありませんので、借り入れた金額のみを返済することになります。再就職準備金の返還方法については、月賦や半年賦、年賦の均等払い、または一括払いの方法があります。
返還について気をつけてほしいこととして、返還期限が定められていること、返還計画どおりに返済できずに滞納した場合は、残金対する延滞利子が加算されますので気をつけてください。返還に関しては、都道府県によって多少の違いがある場合がありますので、住まいの地域にある福祉人材センター(都道府県の社会福祉協議会)のホームページ等で確認してください。
再就職準備金の申請方法、返還方法及び気をつけることについて解説していきます。
再就職準備金の申請方法については、以下の流れで申請を行います。申請方法、提出期日については都道府県によって多少の違いがある場合がありますので、住まいの地域にある福祉人材センター(都道府県の社会福祉協議会)のホームページなどで確認してください。
(書類は福祉人材センター窓口でもらう、インターネットからダウンロードするなどの方法があります。)
申込者と連帯保証人に関する情報、再就職準備金の希望額と目的を記入する必要があります。連帯保証人が個人と法人で書類様式が異なります。
介護職員として働いた経験が1年以上あることを過去に従事していた事業所から証明してもらう必要があります。1年の従事期間が複数事業所に渡る場合は、「従事日数内訳書」を作成して提出することで証明されます。
介護福祉士、介護福祉士実務者研修、介護職員初任者研修のいずれかの有資格者であることの資格証明書の写し(コピー)を準備します。
離職後から再就職先決定までの期間に、申請先である福祉人材センターで「離職介護人材」の届出を行っていることを確認できる書類を準備してもらいます。
毎月20日までに届いた申請に対して、翌月5日までに結果が通知される流れになっています。貸付決定されると、貸付決定通知書、借用証書などが郵送で届きます。
貸付決定日の約2週間後が期限です。借用証書で必要なのは以下となります。
【参考】大阪福祉人材支援センター 令和5年度離職した介護人材の再就職準備金貸付制度 募集要領
再就職準備金の返還義務が発生した場合、その翌月から返還義務が生じます。再就職準備金の返還時の手続きについては以下の内容となります。
申請者本人が返還できない場合、連帯保証人となっている個人・法人が返済する責任が生じることになります。
再就職準備金の申請時に気をつけることについて、以下の内容をご紹介いたします。都道府県によって多少の違いがある場合がありますので、住まいの地域にある福祉人材センター(都道府県の社会福祉協議会)のホームページで確認してください。
再就職準備金の対象になる介護職員は介護サービス事業所に従事している介護職員になります。障害者福祉サービスにおける介護職員は障害福祉分野就職支援金貸付事業での貸付になり、金額や条件等が再就職準備金と異なります。申請窓口は再就職準備金と同じですが、申請時には気をつけてください。
再就職準備金を1人で複数回申請することはできません。既に活用されたことがある方は利用できない制度なので気をつけてください。
再就職準備金は「介護職への再就職のための費用」として、使用用途が定められています。生活費として使用することはできません。再就職のために学び直す、就職に向けた活動をするために使用する、再就職先で必要な服装や備品の費用、転居に関する費用、通勤用車両の購入費等が該当します。
再就職準備金の返還について気をつける必要があることを以下でご紹介いたします。
2年以内に退職すると返済義務が発生します。1ヶ月以内に介護職員として再就職先を見つけるか、2年以上同じ事業所で介護職員として働くことで返還義務は発生しません。
再就職準備金は申請者が生活している地域で活用できる制度になるため、2年以内に他県に介護職員として転した場合でも返済義務は発生します。ただし、同じ法人内で他県にある事業所へ介護職員として異動になる場合は返還義務の対象になることにはなりません。
再就職準備金の貸与開始から2年以内に介護職員からケアマネジャーに転職、同じ勤務先で就業変更すること、昇進などで管理職になり介護業務を主として行わなくなった場合は返還義務の対象になりますので気をつけましょう。
再就職準備金は介護職員として実務経験のある人が転職する際に活用できる制度です。最大40万円まで貸付申請できること、2年以上就業できた場合は返還免除になるメリットがあります。申請条件、申請方法や貸付に関する内容が都道府県によって多少の違いがある場合があります。
今回の記事で興味を持たれた方、申請を考えている方は、お住まいの地域にある福祉人材センター(都道府県の社会福祉協議会)への問い合わせ、情報の確認をしてみてはいかがでしょうか。
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