今後、介護福祉士が不足するといわれている中、潜在介護福祉士と呼ばれる介護職に就かない人が存在します。なぜ、復職しないのか、そもそも潜在介護福祉士とはどのような人を指すのかご存じない方も多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、潜在介護福祉士の詳細について解説いたします。また、国内にいるとされる潜在介護福祉士の人数や復職しない理由についても紹介いたします。
潜在介護福祉士とは、国家資格である介護福祉士の資格を持っていても、介護福祉士として働いていない人たちのことです。
以前は介護福祉士として働いていても、現在は離職している、介護福祉士とは別の仕事をしている人たちも潜在介護福祉士とされています。
公益財団法人社会福祉振興・試験センターの「介護福祉士就労状況調査」では、約12万人が潜在介護福祉士であるという調査結果が出ています。
同調査では、2020年時点で登録のある介護福祉士の有資格者1,377,091人のうち、有効回答数が582,319人とされています。
有効回答数の約20%が潜在介護福祉士となっており、実際の潜在介護福祉士の人数は、調査結果の約12万人よりも多い可能性が考えられます。
調査によると、潜在介護福祉士の可能性のある方の割合は以下の内容になっています。
【参考】介護福祉士就労状況調査結果報告書 (sssc.or.jp) p.47
潜在介護福祉士が復職する際に活用できる支援制度を紹介していきます。
潜在介護職員復職支援プログラムは、公益社団法人全国老人福祉施設協議会と公益社団法人日本介護福祉士会が運営する復職支援の取り組みです。過去に介護福祉士等の介護職員として働いていた方で復職を希望すれば無料で受講できます。
内容は、動画による講義(約80分)と施設紹介(約90分)です。動画による講義内容は、現在の介護保険制度の紹介、求められる介護福祉士や介護職のあり方、近年の介護福祉士や介護職で必要とされている認知症のある方のケアや看取り期の対応などの研修、復職に際した仕事選びのポイントという内容になっています。
施設紹介では、全国にある介護施設・事業所の様子を撮影した内容になっており、希望する施設・事業所の求人募集があれば面接を申し込むことができます。
潜在介護職員復職支援プログラムは、再就職への不安を緩和し、復職後の具体的なイメージを持ちやすくすることがポイントとなっています。
潜在介護職員復職支援プログラムは申し込み期間が定められており、受講を希望する場合は公益社団法人全国老人福祉施設協議会のホームページから申し込みすることができます。
【参考】【開催要項】R4潜在介護職員復職支援プログラム.pdf (istsw.jp)
潜在介護福祉士の復職を支援するために、各都道府県では再就職支援に関する取り組みが行われています。
介護福祉士として復職を希望しているが、不安を感じている潜在介護福祉士の人たちが、介護現場で求められる介護技術を実技講習で身につけられること、再就職に関する情報提供を得られることがポイントです。
大阪府を例にすると、公益社団法人 大阪介護福祉士会に委託し、潜在介護福祉士等再就業支援事業を行っています。現在就業していない介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者で再就職を希望している方を対象にした、3日間の研修を無料で実施しています。
【参考】大阪府/潜在介護福祉士等再就業支援事業 (osaka.lg.jp)
また、各都道府県にある福祉人材センターやハローワークでは、介護職の求職者へ支援を行なっています。資格取得や求人の支援だけでなく、福祉キャリア支援専門員による再就職へ向けた支援を受けられます。
潜在介護福祉士の再就職支援について、各都道府県によって内容に多少の違いがあります。興味がある方は、お住まいの都道府県の自治体ホームページで確認してください。
再就職準備金貸付制度は国が行っている、介護職員の復職を支援する取り組みです。潜在介護福祉士などが復職する際の準備に必要となる資金の貸し付けを受けられます。
復職に関して必要な学び直し、資格取得にかかる費用、生活環境の変化で購入が必要な物品にかかる費用、引っ越し費用などで活用できます。
介護福祉士として復職を具体的に考えている場合に金銭面のサポートを受けられるのがポイントです。貸付金額は最大40万円ですが、介護職員として復職後に2年間勤務すれば全額が返済免除となります。
申請窓口は居住地の社会福祉協議会です。再就職準備金貸付制度を活用できる対象者は以下の条件のすべてを満たす必要があります。
要件の詳細は各都道府県により多少の違いがあります。申請窓口である、居住地の社会福祉協議会に確認をしてください。
介護職として再就職をお考えの方、初めて働くことをお考えの方へ(再就職準備金、就職支援金のご案内) (mhlw.go.jp)
潜在介護福祉士の復職に向けた課題と解決策について解説していきます。
公益財団法人社会福祉振興・試験センターの「介護福祉士就労状況調査」では、潜在介護福祉士が福祉・介護・医療分野を離職した理由について以下の内容が記載されています。
この調査結果から、精神的・身体的への慢性的なストレスが離職の理由となっていること、介護現場の労働環境などの改善ができていないことが、復職につながらない、潜在介護士の増加の背景にあることが考えられます。
介護福祉士として復職する際に働き方、環境を考慮した就職活動をすることで精神的・身体的なストレスが少ない職場への復職につながります。
通所の事業所は入所施設と比べると夜勤がない、規則的な生活や勤務形態からワークライフバランスを考えやすいというポイントがあります。
訪問介護事業所は介護実践の場が利用者の自宅へ1人で訪問する形になるので、職員間の人間関係で精神的なストレスを抱えることが少なくなることがポイントです。
また、介護福祉士として支援業務に従事する選択肢もあります。生活相談員として、利用者が利用するサービスの調整や相談業務、サービス利用に関わる手続きをすることで介護業務に直接従事しない方法で介護福祉士として働くということもできます。
【参考】介護福祉士就労状況調査結果報告書 (sssc.or.jp) p.64
公益財団法人社会福祉振興・試験センターの「介護福祉士就労状況調査」では、潜在介護福祉士が福祉・介護・医療分野を離職した理由として給与の低さという項目が取り上げられています。
【参考】介護福祉士就労状況調査結果報告書 (sssc.or.jp) p.64
介護職の給与の低さを改善しようとする動きが国の施策として行われています。
加算に対する給与への反映については、事業所により金額に多少の違いがあります。特に、介護職員等特定処遇改善加算に関しては、算定根拠として、勤続年数10年以上の介護福祉士には月額平均8万円相当の処遇改善を行うこととして考えられているという内容になっています。
介護業界における人手不足と他業種と比較した際に平均よりも低い給与になっている問題に対して、国が取り組みをしている内容です。
潜在介護福祉士からの復職にあたり、離職前と現在の介護業界の給与の状況を考慮すること、復職にあたり、満足できる給与がある施設・事業所を探していきましょう。
約12万人いるとされている潜在介護福祉士の背景には、精神的・身体的への慢性的なストレスや給与面の問題から介護職ではない分野での仕事を選択した状況が考えられます。
国としても介護業界の現状を改善するための給与面の取り組みを行っています。また、自治体が行っている復職に向けた支援や制度を活用することで、復職のために動きやすい環境を作れます。
介護福祉士として働く環境や働き方を考えて、自分らしく介護福祉士として働き続けられるように取り組んでいきましょう。
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