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    移乗介助とは?正しい移動手順やコツ、注意点を解説

    仕事を知る 2023/09/04

    介護において「移乗介助」という専門用語は頻繁に使用されます。身体の不自由な利用者の方を安全に移動させるために必要な介助ですが、どのような手順で介助すればよいのか分からない方は多いのではないでしょうか。

    そこで当記事では、移乗介助の正しい手順とコツについてご紹介いたします。また、移乗介助を行うときの注意点やポイントについても解説いたします。

    移乗介助とは

    「移乗」とは、ベッドから車いす・車いすから便座などに乗り移る動作を指します。1人では乗り移れない方に対して、介助者が移乗をサポートすることが移乗介助です。介護現場などでは「トランスファー(トランス)」とも呼ばれます。

    移乗動作は、身体が不自由になっても日常生活の行動範囲を広げ、本人らしい日常生活を過ごすことにつながります。たとえば、寝たきりになっても車いすに移乗して食卓で食事をしたり、リビングでテレビ鑑賞やトイレで排泄したりできます。身体状況や疾患によっては、移乗する際に禁止事項や注意点があるため、介助する前に確認しておくとよいでしょう。

    基本的な注意点には、以下のようなものがあります。

    立ち上がりや方向転換時のふらつきや膝折れ

    立ち上がりや動作時に、突然ふらつきや膝折れが起こることがあります。一つひとつの動作時に声かけを行い、「急にバランスを崩すこともある」と意識して介助することが大切です。

    姿勢が不安定で車いすからずり落ちる

    車いすに移乗介助した際に、座面の前方に浅く座った状態になってしまうと、徐々に身体がずれてしまい床に転落してしまうことがあります。浅く座ってしまった場合は、利用者の方に前傾姿勢をとってもらい、一度立位をとってから深く座るように促しましょう。

    移乗先との距離・角度・方向を確認する

    移動元と移動先の距離が離れていると、バランスを崩したりベッド柵にぶつかったりしてけがをしてしまうことがあります。移乗距離はできるだけ縮めて、移動方向は45度以内の角度で行うのが一般的です。片麻痺がある人は健側方向を軸に移乗を行いましょう。

    移乗しやすい環境を作る

    車いすのフットサポートやアームサポートが取り外せる場合は、外しておくとスムーズに介助を行えます。また、ベッド柵を使用しない場合は、取り外して介助すると安全に移乗できる場合もあるため、利用者の方の身体状況や介助技術に合わせて工夫しましょう

    移乗動作は、1日に複数回行う介助のため、間違った方法で行うと、骨折などの事故を引き起こしてしまう可能性が高くなります。また、介助者も不安定な姿勢や力任せで介助を行えば近い将来、腰や膝を痛めてしまうため、正しい知識や技術の習得が必要です。

    身体の使い方が大切(ボディメカニクスを活用)

    移乗介助は毎日何度も行う介助のため、介護している方にとっては担が大きい支援の1つと言えます。また、移乗介助は、利用者の方の身体機能や疾患に合わせて介助方法を変えていかなければなりません。そのためには、正しい知識や技術は必要不可欠です。間違った方法で介助を続けていると転倒・転落などの事故につながってしまい、また、介助者側の身体にも不調が現れます。このようなリスクを回避するには、身体の仕組みを知り正しく使うことが重要です。

    ここからは、「ボディメカニクス」についてご紹介いたします。ボディメカニクスは身体力学のことを指し、適切な身体の使い方を実践するだけで、最小限の力でも楽に介助ができる介護技術の1つです。

    正しい技術を身に付けて実践すれば、利用者の方の負担が減るだけでなく、介助者の身体を守ることにもなるため、必ず習得しておきましょう。

    ①  支持基底面積を広くとり重心を安定させる

    支持基底面積とは、体重を支えるために必要な床面積のことを指します。この面積は足の裏だけではありません。支持基底面積は両足を開くことで広くなり、これにより介助者の身体が安定します。このとき、移乗介助の方向に合わせて足を開く方向を変えるとより効果的です。

    左右に開くと横からの力に、前後に開くと前や後ろからの力に強くなり、身体を安定させやすくなります。膝を曲げて重心を下げることで、さらに安定します。移乗介助時の基本的な姿勢の1つです。

    ②  重心を近づける

    介助者と利用者の方の重心が近ければ近いほど、介助時に感じる重さを軽減できます。移乗介助時はできる限り密着し、お互いの重心を近づけることを心掛けましょう。

    また、利用者の方の重心が安定していると、移乗介助はうまくいきません。利用者の方の重心がどこにあるかを見極め、重心を不安定にすることも技術の1つです。

    ③  大きな筋肉を使って介助する

    大きな筋肉とは、大胸筋・広背筋・大腿四頭筋・腹直筋などを指します。介護が慣れない人や力任せに介助している人は、腕の筋肉(主に上腕二頭筋)だけで持ち上げようとしがちです。腕の力だけで介助を続けていると、首・腰・肩・腕を痛めてしまう可能性が高くなるため、注意しましょう。全身の筋肉を意識して、自分の体重をうまく利用すると、介助も楽になります。

    ④  利用者を小さくまとめる

    利用者の方の身体を小さくまとめるとは、具体的には、手足を曲げ身体に密着した状態にすることです。たとえば、寝ている場合は、膝を立てかかとを臀部に近づけ、両手を胸の前で組むことで小さくまとまった状態になります。

    小さくまとまった状態では、利用者の方の重心が不安定になり、動かしやすい状態になるため、移乗介助前には小さくまとめることを意識しておくとよいでしょう。

    ⑤  水平移動を意識し押さずに引く

    移乗介助は、持ち上げずにできるだけ水平に移動することが理想的です。持ち上げる動作は身体への負担が大きくなるため、極力避けるようにしましょう。必要以上に持ち上げようとすると、利用者の方に負担がかかります。また、介助者の腰や膝にも負荷がかかるのです。利用者の方にとって、どの程度立ち上がる必要があるのかを理解した上で介助してください。

    また、身体をうまく使うためには、押す動作よりも引く動作を意識しましょう。引く動作は、介助者の体重をかけやすく、押す動作よりも容易に力を入れやすいためです。そのため、介助するときの方向や立ち位置を考えておくとよいでしょう。

    ⑥  身体をねじらず平行を保つ

    介助者が利用者の方を抱え移乗する際に、身体をひねってしまうと重心がぶれてしまい、力が思うように出せません。さらに、身体をひねることで腰に負担がかかり腰痛の原因になってしまいます。移動したい方向に足先と身体を向け、できるだけ身体をねじらないように移乗介助することが大切です。

    ⑦  てこの原理を活用する

    てこの原理を使うと、小さい力で重たいもの(大きなもの)を動かすことができます。支点・力点・作用点があり、支点を中心として力点に力を加え作用点で物を動かします。

    介護の場面では、ベッド上に仰向けで寝ている人にベッドの端に座ってもらう(端座位)際、利用者の方の肩甲骨あたりと膝裏を支え臀部を支点にすることで、最小限の力で起き上がり介助ができます。

    ⑧  重心を低くする

    介助者が腰を落とすと重心が低くなり身体は安定します。この姿勢は介助を行うときの基本姿勢として覚えておきましょう。介助者の身体が安定すると、利用者の方は安心して身体を託せます。また、介助者側も腰や膝への負担が軽減し、楽に介助できるでしょう。

    【補足】スペースを広くとる

    介護の場面では、介助スペースを広くとっておくことが大事です。狭いスペースで介助すると、ボディメカニクスを活かすことができません。また、環境整備を行い介助時に効率よく動けるように準備しておくことも重要です。

    身体を壊さないようにする重要なポイント

    「介護は身体を壊す」というイメージを持っている方も少なくありません。しかし、一般事務のように長時間座った姿勢が続く仕事よりも身体に負担が少ないという見方もあります。つまり、身体の使い方を間違わなければ、健康的な仕事とも言えるのです。

    人間が行う自然な動きを意識する

    人間が無意識で行う身体の動きは、一番身体に負担のない動きと言えます。つまり、その動きを阻害してしまうと無駄な力が必要になったり、負担がかかってしまったりするのです。たとえば、椅子からの立ち上がり動作では、人間はまず座ったまま頭を下げる動作をとります。この動きがないとスムーズに立ち上がることはできません。

    立ち上がり介助の場面でよくある例としては、介助者が前に立ち、利用者の方の頭を下げる動作を邪魔してしまうことです。この場合、立ち上がりができる方であっても、動作を邪魔され立てなくなってしまうのです。

    動作のたびに声かけをして了承を得る

    利用者の方の協力があれば介助者の負担は軽減されます。また、介助は身体に触れて行うものです。動作に対して声をかけ了承を得る、または協力を依頼することで、お互いの負担は軽減されます。

    声かけがない場合、介護される人からすれば「何をされるかわからない」「急に身体を触られた」など、不安や恐怖を感じる方もいます。このような心情になると、無意識に身体がこわばり、余計な力が働くのです。認知症の方であれば、理解できず混乱する可能性もあります。説明と同意は介護技術の中で、とても大切な工程になります。

    残存能力を引き出し自立支援を促す

    身体が不自由になったからといって、すべてのことができなくなる理由ではありません。また、同じ疾患があったとしても、一人ひとりできる能力に違いがあります。本人ができることまで介助者が支援してしまうと、能力低下につながり、次第にできないことが増え意欲低下につながってしまいます。利用者の方のできることとできないことを把握し、どこまで支援が必要かを見極めましょう。

    介助者は、本人ができないことの支援を行い、できることでは声かけ・見守りを行って自立支援を促すことが介護の本質です。できることが増えれば、介助の回数が減り介助者にとっても負担が減ることにつながります。

    危険や事故を予測し先回りする

    介護の場面では、危険を予測し未然に防ぐ対応がとても重要になります。少しの油断が大きな事故やけがにつながることもあるため、介助を行う前に安全に介護できる環境かを確認しておくとよいでしょう。

    たとえば、ベッドの高さが適切か・車いすとベッドの距離は離れていないか・フットサポートやアームサポートは取り外しているかなど、1つずつ確認しながら介助を行いましょう。

    また、移乗介助前に利用者の方がしっかり覚醒しているかや、いつもと様子が違うところはないかも確認しておきましょう。様子が違うときは、移乗する前に医療職(医師・看護師など)に相談しましょう。状態によっては動かさない方がよい場合もあります。さらに、介助者の体調も重要な要素す。体調が悪いと感じた場合は無理に介助を行わず、誰かに代わってもらうことはできないかを検討しましょう。

    介助者は身なりにも注意が必要です。髪飾り・ピアス・ネックレス・指輪などの装飾品で利用者の方を傷つけてしまうこともあります。

    まとめ

    今回は、移乗介助のポイントや注意点についてご紹介いたしました。移乗介助は、日常生活の中で頻度が多く重要な介護の1つです。身体機能が低下しても、今までの暮らしに近い環境で自分らしく生活するためには必要不可欠な介助になります。

    しかし、正しい知識や技術を持っていないと介助者が身体を壊し、介助ができなくなってしまうことも少なくありません。自身を守るためにも、身体の仕組みや使い方を知り、技術を習得することで、利用者の方と介助者の双方に負担が少ない移乗介助を行う必要があります。

    ぜひ、ボディメカニクスを活かして介助を実践してみてください。

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