介護において、「臥床介助」という専門用語は頻繁に使用されます。しかし、どのような介助なのか詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
そこで当記事では、臥床介助についてと就寝介助・起床介助の違いについてご紹介いたします。また、臥床には仰臥位や背殿位、側臥位など姿勢の種類があることも解説いたします。
臥床(がしょう)とは、「ベッドなどで横になること」を意味します。よって臥床介助とは、「ベッドで横になっている人を介助すること」です。
介護現場では、ベッドで過ごす時間が多い方へのサポートを行う場面も多くあります。臥床介助の具体的な例として、以下のものがあります。
同じ姿勢でベッドに寝ていると、褥瘡(じょくそう)のリスクが高くなります。褥瘡は床ずれとも呼ばれ、お尻や腰骨周囲、かかと、肘など圧迫を受けやすい部位で発生します。重症化すると皮下組織や筋肉にも影響が及んで、治癒するまでに時間がかかります。
また、関節の拘縮や筋力低下を招くケースも少なくありません。それらのリスクを防ぐためにも、体位変換などを行う必要があります。
ちなみに、臥床の反対語は「離床(りしょう)」です。離床は、ベッドなどに横になっている状態から起き上がることを意味します。
臥床介助とは、「ベッドで横になっている人を介助すること」であると前章で解説いたしました。介護現場で使用される、よく似ている言葉に「就寝介助」と「起床介助」があります。ここでは、その違いについて詳しくご紹介していきます。
就寝介助とは、利用者の方が夜寝る前に行う一連の準備をサポートすることを指します。具体的な内容は、以下のとおりです。
また、利用者の方が安心して眠れるような声掛けを行うことも重要です。室温や照明などについても、希望を聞きながら調整しましょう。ベッドからの転落を防止するため、サイドレールなどが正しく使用されているかを確認します。
起床介助とは、利用者の方が朝起きる際に行う一連の動作をサポートすることです。モーニングケアと呼ばれることもあります。具体的には、以下のような介助を指します。
利用者の方に気持ちよく目を覚ましてもらうために、コミュニケーションは有効です。「よく眠れましたか?」「体調はいかがですか?」などの声掛けを行いましょう。
また、目覚めてすぐに起こそうとすると血圧が急激に下がり、失神やめまいを引き起こしてしまうことがあります。この症状は、「起立性低血圧症」と呼ばれます。利用者の方へ声掛けを行いながら、丁寧に対応しましょう。
臥位(がい)とは、「ベッドなどで横になっている姿勢のこと」です。ここでは、臥位の種類について詳しく解説していきます。
臥位の種類 | 内容 |
仰臥位(ぎょうがい) | あお向けになっていて、足が真っすぐに伸びた状態です。 |
背殿位(はいでんい) | あお向けで両膝を立てた状態。腰や腹部にかかる負担が軽くなる姿勢です。 |
側臥位(そくがい) | 体を横向きにして寝ている姿勢で、仰臥位から90度回転して横を向いた状態です。オムツ交換や更衣介助でとることが多いです。腕や骨盤などに体重がかかるので、褥瘡に注意します。 |
半側臥位(はんそくがい) | 仰臥位から45度ほど横を向いた状態です。自分ではとりにくい姿勢なので、背中やお尻にクッションをあてて体を支えます。褥瘡対策のため、よくとられる姿勢です。 |
屈曲側臥位(くっきょくそくがい) | 横を向いた状態で手足を抱え込み、胎児のように丸まった姿勢です。安定感があり、安静時に自然にとられることが多いです。 |
腹臥位(ふくがい) | お腹を下にして寝る、うつ伏せの姿勢です。痰を出すためにとることがありますが、窒息する恐れも。特定の状況や治療目的で使用される姿勢です。 |
半腹臥位(はんふくがい) | 側臥位と腹臥位の中間にあるような、ねじれが起こりやすい姿勢です。斜め45度で下を向いている状態なので、クッションを入れると安定します。 |
利用者の方の状態に応じて、以上の臥位を使い分けます。適切な姿勢を保つことによって、体への負担や褥瘡のリスクを軽減することが可能です。
状況によっては腹部が圧迫され、窒息を引き起こしてしまう可能性もあります。主治医や看護師などと相談しながら、その方に合った姿勢を保ちましょう。
臥床状態が長く続き、過度に安静にしてしまうと「廃用症候群」を引き起こすリスクが高くなります。廃用症候群は、心身の機能を低下させます。具体的な症状は、以下のとおりです。
また高齢者は、廃用症候群の進行が速い傾向にあります。安静臥床が1週間続くと、筋力低下が10~15%程度、3~5週間だと約50%までみられると言われているほどです。
いったん廃用症候群になると、もとの状態に戻るには長期間の運動が必要になります。高齢者にとっては負担が大きく、回復が見込めない場合もあるのです。
可能な範囲で利用者の方に動いてもらい、廃用症候群を予防する姿勢が重要なのです。
臥床介助を行う際には、過度な安静が引き起こす「廃用症候群の予防」を意識しなければなりません。また、臥床介助は介護職にとっての負担も大きく、適切な方法で実施することが求められます。利用者の方や自分自身を守るためにも、介助のポイントを押さえておきましょう。
臥床介助を行うときのポイントは、以下のとおりです。
それでは、順番に解説していきます。
臥床介助はベッド上で行うため、介助者にとって腰や背中への負担は大きいと言えます。自分の腰への負担を減らすためには、前かがみの姿勢で長時間作業しないことが重要です。
介助者は膝を曲げ重心を下げることで、姿勢が安定し、腰への負担も軽減されます。ベッドの高さを調整して、前かがみにならないようにすることも有効です。
また、移乗や移動の際に滑らせて使うスライディングボードやスライディングシートなどを活用するのもよいでしょう。福祉用具を適切に使用できれば、介助者が楽であることに加えて安全性を高めることが可能です。
廃用症候群を予防するためには、利用者の方に自分でできることをしてもらうことも大切です。利用者の方ができることまで介助してしまうと、さらなる筋力の低下を招きます。また本人の意欲も低下させてしまう悪循環に陥ってしまうのです。
具体的には、以下のようなことを実践してみましょう。
立つのが難しい場合は、足に力を入れてもらうだけでも効果があります。ただし、無理な動作を強いると、事故につながってしまう可能性もあります。「どこまで自分でしてもらうか」については、医療職やケアマネジャーと相談しましょう。
介助の際に、利用者の方とコミュニケーションをとることも重要です。ベッドで過ごす時間が長くなると、ほかの人と話す機会が少なくなってしまう傾向にあります。
寂しい気持ちを誰にも相談できない方もおられるかもしれません。利用者の方とのコミュニケーションを大切にし、介護職として心理面でもサポートしたいものです。
孤立感や不安感を軽減するために、利用者の方の困りごとや不安な気持ちに耳を傾けましょう。
今回は、臥床介助について解説いたしました。臥床介助とは、ベッドで横になっている利用者の方へのサポートを行うことです。具体的な介助内容には、おむつ交換や食事介助、体位変換などが含まれます。
臥床している状態が長く続くと、廃用症候群が引き起こされるリスクがあります。廃用症候群によって、筋力低下や褥瘡、関節の拘縮などが生じる可能性が高くなるのです。
臥床介助を適切に行うためには、適切な姿勢で介助することや利用者の方にできることを自分でしてもらうこと、そしてコミュニケーションを重視することが重要です。
廃用症候群を予防し、利用者の方の心身の健康を保つために、丁寧な介助とコミュニケーションを心掛けることが求められます。
また、仰臥位や背殿位など、日常では聞き慣れない専門用語も多くあります。これらの介護用語を正しく理解しておくと、スムーズに情報共有することも可能です。
今回の記事を参考にして、臥床介助への理解を深めていただければ幸いです。
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