介護士は利用者の方との密なコミュニケーションが重要な仕事です。しかし、どのようにコミュニケーションを取っていけばよいのか分からない方は多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、介護士がコミュニケーションを取るときのコツについてご紹介いたします。また、コミュニケーションの必要性や実際の会話で役立つ話題についてもご紹介いたします。
コミュニケーションとは、お互いの感情や意思、考えを音声言語や書き言葉、身振りなどを活用してキャッチボールするかのように伝え合うことです。
介護士が関わる介護の現場では、高齢者と関わる場面が多くあります。高齢者だけでなく、同じ職場で働いている職員同士とのコミュニケーション、介護士が関わる高齢者の家族や他機関の支援者などとのコミュニケーションが必要になります。
高齢者は聴力や視力、コミュニケーションを行うために必要な言語処理能力が低下していきます。また、介護士は認知症や病気などが原因でうまくコミュニケーションができない方と関わる機会も多くあります。日常生活の何気ない会話の積み重ねや声かけひとつが、高齢者が安心して介護サービスを利用することにつながっていきます。
コミュニケーションはさまざまな介護場面に共通して求められることであり、信頼関係を築くために重要な介護技術です。
コミュニケーションの種類は大きく区分すると2種類あります。
言語コミュニケーションは、自分の感情や意思、考えを相手に伝える際に言語・言葉を使って伝える方法です。
言語コミュニケーションには以下の方法があります。
など
非言語コミュニケーションは、自分の感情や意思、考えを相手に伝える際に言語・言葉以外の方法を使って伝える方法です。非言語コミュニケーションには以下の方法があります。
など
「メラビアンの法則」によると、人が話すときに相手の印象に影響する割合は、ボディランゲージが55%、声のトーンが38%、言葉そのものは7%と言われています。つまり、人とのコミュニケーションにおいて非言語コミュニケーションは大きく影響を与えるということが分かります。
ただし、内容がきちんと相手に伝わるように言葉の選択も重要です。すなわち、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションは組み合わせて使うことが効果的であるということになります。
【参考】独立行政法人 福祉医療機構 「連載コラム 職場のコミュニケーション力」
介護士が介護現場で求められるコミュニケーションの基本的な姿勢についてご紹介いたします。
受容とは、利用者の方の言葉や感情をありのままに受け入れることを言います。受容では言葉や感情に対する否定や肯定を行いません。利用者の方は気持ちを受け止めてもらえることで、その介護士に対して信頼する感情(ラポール)を築くきっかけになります。
傾聴とは、利用者の方の話を介護士が気持ちをくみ取りながら耳を傾けて聴くことを言います。利用者の方の気持ちをくみ取ろうとしないで「聞く」ことと傾聴は違いますので、気をつけてください。
介護士が利用者の方の言葉や感情に親身になって耳を傾けることで、利用者の方にその介護士を信頼していいんだという安心感が生まれます。
共感的理解とは、介護士が利用者の方の心情に共感し、利用者の方の立場で話を理解しようと努めることです。利用者の方の心情と介護士の価値観が違うと感じても、相手の価値観を受け入れるように意識しましょう。
しかし、利用者の方の話に対して、自分ごとのように感情を共有することは大切ですが、介護士としてすべてを受け入れることが難しいこともあります。利用者の方と共感的理解を持った上で、「できないことはできない」と伝えることもときには大切になります。
秘密保持は、介護士が利用者の方やご家族から得た情報について秘密を守ることです。
介護福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」において、秘密保持義務(第四十六条)により専門職として遵守することが定められています。
利用者の方が話したことを不特定多数の人たちに話をすることは介護士の専門性から考えると行うべきではない行為ですし、利用者の方も口が軽そうな介護士には自分のことを話すことを控え、信頼できる人ではないと判断されても当然の状況になります。
【参考】厚生労働省 「社会福祉士及び介護福祉士法」(第四十六条)
ここからは、介護士が介護場面で求められるコミュニケーションのコツについて解説いたします。
高齢になると高い音が聞き取りにくいため、トーンの高い声で話をするとコミュニケーションが円滑にできない場面が多くなります。声のトーンを低くすることを意識してコミュニケーションを行うようにしましょう。
また、口元がよく見えるようにし、はっきり、ゆっくりと話をすることで伝わりやすくなります。
注意が必要なこととして、声の大きさがあります。声の大きさの程度によっては、怒鳴っていると利用者の方が感じる場合がありますので気をつけましょう。
開かれた質問とは、「はい」または「いいえ」では答えられない質問をする方法です。一方、閉ざされた質問は、「はい」または「いいえ」や簡単な一言で答えられる質問をする方法です。
開かれた質問は、利用者の方の言葉を引き出すことができます。しかし、もし開かれた質問への回答が難しそうな場合は、閉ざされた質問を使用してコミュニケーションを行うことも考える必要があります。
コミュニケーションの流れとして、閉ざされた質問から始めていき、徐々に開かれた質問を活用することで、利用者の方が感情や意思、考えを表現できるようになるということがあります。
言語機能に障がいがある方の場合には、はい・いいえで答えられる閉ざされた質問やいくつかの選択肢で解答できる質問を行うこと、非言語コミュニケーションを意識して活用することが効果的です。
会話の中で利用者の方が話すキーワードになる言葉を介護士が繰り返し声に出すことや、声の大きさやトーンなどの非言語コミュニケーションを利用者の方に合わせることで、利用者の方の会話の意欲を引き出す効果を期待することができます。
しかし、不自然な言葉の繰り返しや、キーワードが利用者の方と介護士で異なってしまうと、オウム返しをしているだけだと思われたり、介護士は理解してくれていないと認識されたりすることになりますので気をつけましょう。
利用者の方とのコミュニケーションの中で、話が途切れて沈黙になることもあります。そこで、介護士から話題を探して沈黙を破ろうとする場合もあるかもしれません。しかし、利用者の方に無理に会話を求めてしまうと利用者の方にとって負担になってしまうかもしれません。
言葉を交わさずに同じ時間を過ごすことも大切なコミュニケーションの1つです。沈黙することはよくないことだと考えず、複数あるコミュニケーションの1つとして活用できることを理解しておきましょう。
介護士が介護現場で利用者の方とコミュニケーションを取る際に役立つ話題をご紹介いたします。
季節や季節にまつわる行事、天気に関することは話題にしやすい内容です。特に、コミュニケーションを導入するタイミングで活用できます。
「桜がきれいな季節になりましたね」、「今日はよい天気ですね」など、季節や天気に関することをきっかけにして話を広げていくことが期待できます。
利用者の方の趣味や好きなことを話題にすると、今現在の話だけでなく、利用者の方が生きてきた人生を振り返ることもできます。
趣味や好きなことについて話すことがよい刺激となって、再び趣味や好きなことに取り組むきっかけとなるなど、日常生活によい影響を与える可能性があります。介護士と利用者の方の信頼関係を築くきっかけにもなるかもしれません。利用者の方の趣味や好きなことについて、事前に介護士が情報収集をしてからコミュニケーションを取るとより効果的です。
利用者の方との信頼関係を作るにあたり、介護士から心をオープンにし、ありのままの自分を伝えるということもコミュニケーションとして大切な要素にはなります。また、自分の趣味や興味があることについて話すことによって会話を広げられる可能性もあります。
しかし、気をつけないといけないことは、介護士自身の話をあまり多くしすぎると、利用者の方から介護士の個人情報をいろいろと詮索される可能性がないとは言えないことです。介護士が自分自身を守るためには、自身の話を多用するのは控えた方がよい場合もありますので留意しておきましょう。
コミュニケーションはさまざまな介護場面に共通して求められることであり、信頼関係を築くために重要な介護技術です。
利用者の方の様子を見ながら、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションを組み合わせて活用することで利用者の方の感情や意思、考えを引き出していくことが介護士として求められます。
季節や天気などの何気ない話から、利用者の方の趣味や好きなことなどに話を広げて、利用者の方にとって介護してもらってよかったと感じてもらえるようにさまざまな話題や情報にアンテナを広げていきましょう。
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