日本にはさまざまな介護施設があり、施設によって特徴や労働環境が異なります。そのため、どんな介護施設があってどこで働くべきなのか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、介護施設の種類・特徴についてまとめて紹介します。また、介護士が働く場合どこの施設がいいのか解説します。記事最後では施設を選ぶときに何を意識するべきなのか紹介します。
介護施設には「公的施設」と「民間施設」の2つのタイプがあります。
公的介護施設は、自治体や社会福祉法人などが介護保険法に基づき介護サービスの提供を行います。公的施設の種類には以下の施設があります。
民間施設は独自でさまざまなサービス提供を行います。その中で入居者がサービスを選択して利用できる仕組みです。民間施設には以下の施設があります。
公的施設の特徴は、民間施設より安価に利用できることです。その反面、利用希望が多いため待機期間が長くなるケースや、利用条件が細かく設定されているなどの条件があり、誰でも利用できるわけではありません。
それぞれの施設の特徴を見ていきましょう。
基本的に要介護3~5の方が利用対象となります。そのため、精神疾患(認知症や統合失調症など)があり常に見守りや手助けが必要であったり、身体が不自由で日常生活全般に手助けが必要であったりなど、常に誰かしらの手助けが必要な方がほとんどです。
要介護1〜5の方が利用対象です。在宅生活の継続が難しい方に対して、医師の医学管理のもと多職種(医師・看護・リハビリ職・介護職・管理栄養士など)と連携して高齢者の自立を支援し、在宅復帰を目指します。
また、24時間看護師が常駐している施設が多く、医療依存度の高い方(褥瘡・在宅酸素・経管栄養など)の利用もあります。元気な人から寝たきりの人まで幅広い対応が求められる施設です。
介護医療院は、要介護1〜5の方が利用対象となります。日常的に医療的ケアが必要な方や長期療養が必要な方が入所する施設です。容態が急変するリスクが高い方も入居されています。介護サービスと医療的ケアを同時に受けられる特徴があります。
また、介護療養型医療施設も介護医療院同様に介護と医療のサービスを提供する施設です。しかし、2024年3月に完全廃止される予定となっています。廃止後は介護医療院に転換する計画が進んでいます。
経済的に困窮しており一人では在宅生活の継続が難しい65歳以上の高齢者を受け入れています。病状が安定していない人や経済的に困窮していない(資産・収入含む)などひとつでも要件を満たしていないと利用できません。
また、障がいや身寄りがいないなどの他に近親者などからの虐待・認知症や精神疾患などの状況も入居要件に含まれます。
また、年齢的に条件を満たしていない場合でも、市区町村が認めれば入所できるケースがあります。生活支援サービスや健康管理などを提供して社会復帰を促す施設です。
民間の企業が運営しているため、多種多様なサービス提供をおこなっている施設です。そのため、自分自身で日常生活の過ごし方を選択し、サービスを検討することができます。しかし、公的な介護施設に比べると利用料金は高くなる傾向です。
要介護状態の人でも安心して日常生活を過ごすことができるよう24時間介護職員を配置した施設です。食事の提供・生活に関する相談・生活支援サービス・身体介護サービスを提供します。要介護度が自立の人~要介護5の人まで幅広く入所可能です。
基本的に自立または軽度の支援が必要な方が利用する施設です。食事の提供・生活支援サービスを提供します。身体的な介護サービスの提供は行いません。そのため、生活支援が主なサービスとなります。
身体介護が必要な場合は、外部サービスなどを利用します。
介護を必要としない自立した高齢者向けの施設です。自立した方が対象のため、主な支援は生活相談や食事の提供のみとなります。介護が必要になった場合は、生活を継続することが困難になるため、退去するケースがほとんどです。全国に数か所しか施設がありません。
60歳以上の高齢者が利用できる高齢者向けの住宅で、サ高住とも呼ばれています。介護サービスの提供は基本的にはおこなわず安否確認・生活支援サービスを提供します。
介護サービスが必要になった場合は、生活の継続が困難になるため、退去するケースがほとんどです。
認知症を患っている人が住み慣れた地域で生活するための施設です。ユニットケア(5~9人のグループ)のサービスを提供します。入居者が各々役割を持って共同生活を行います。
職員は日常生活の支援を行い、安心して生活できる環境をサポートする施設です。
社会福祉法人や自治体・民間事業者などが運営する福祉施設です。軽費老人ホームC型(他にA・B型がある)に該当し、軽費老人ホームでは最もポピュラーなタイプです。近年では、A型・B型は新設されていません。食事の提供・生活支援サービスが基本で介護型では介護サービスを提供します。
高齢者でも暮らしやすいよう住環境が整っている分譲マンションです。日常の安否確認・フロントでの来客対応などを行います。マンション内には食堂(レストラン)・図書館・フィットネスクラブなどを併設しているケースが多く、介護サービスが必要な際には、外部の介護事業所に委託します。
働く施設は自身のスキルや経験によって選ぶと良いでしょう。それぞれおすすめする施設は以下の通りです。
介護関係の資格を取得した後、どこで働こうか迷うこともあるでしょう。何も経験していないうちから身体介護や認知症介護に慣れていこうと考える方は、特養や老健などがおすすめです。また、医療的ケアの知識が必要な介護医療院なども良いでしょう。
次に、「最初から色々覚えるのはちょっと心配」と考える場合は、民間企業が運営しているサ高住や住宅型有料老人ホームなど、身体介護を提供しない施設がおすすめです。コミュニケーションや介護の仕組みをゆっくりと勉強できるでしょう。
介護職として専門性を生かしたいと考える場合は、多くの介護を必要とする特養や老健、介護医療院がおすすめです。また、認知症専門施設であるグループホームでは、認知症ケアを学べるため、認知症のプロフェッショナルを目指せるでしょう。
老健では、医療職の配置があるため、リハビリスタッフや看護師との関わりも増え、医療の知識を身に着けられます。
どのスキルの向上を目指すのかでも選ぶ施設は変わります。介護技術であれば寝たきりや身体的障害が重度の人が多い特養を選ぶと良いでしょう。さまざまな状態の利用者の方と関わることで、新しい介助方法を習得できるでしょう。
ただし、自身の向上心があれば、どこの職場で働いていてもスキルアップは可能です。
介護職は資格によって、給料が変わります。資格手当として支給している施設が多く、金額は事業所によって違いがあります。また、夜勤の回数・年末年始手当・役職手当でも差が出るでしょう。施設の種類・運営元(民間企業・社会福祉法人・医療法人など)によっても違いがあります。
厚生労働省が発表している、令和4年度の各事業所別介護職員の平均給料調査では以下のようになっています。
介護施設 | 平均給料 |
特別養護老人ホーム | 348,040円 |
介護老人保健施設 | 339,040円 |
介護医療院(介護療養型医療施設) | 320,700円 |
有料老人ホーム・養護老人ホーム・ケアハウス(軽費老人ホーム)・サ高住の一部 | 313,920円 |
グループホーム | 291,080円 |
参照:厚生労働省「令和4年度介護職員平均給料等」(P131)
また、介護職員処遇改善加算の分配などによって大きく異なるため、入職前に確認しておくと良いでしょう。
今回は、介護施設の違いや特徴について解説しました。近年、さまざまな形態の介護施設が増えたため、介護職として働く場所を選択できるようになりました。経済的な理由で給料が高い職場を選ぶことも大切ですが、自身の性質や目的に合った介護施設を選びましょう。
今回、紹介した内容がこれから働く施設選びの参考になれば幸いです。
(c) 2025 LIKE Staffing, Inc.