介護士は夜勤という働き方のほかに「早番」と「遅番」があります。介護士を目指している方の中には、早番と遅番がどのような働き方なのか知りたい方は多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、介護士の早番・遅番の1日の流れについて紹介いたします。また、それぞれのメリットとデメリットも解説します。
介護や医療業界は24時間体制で運営しているため、変形労働時間制を導入しています。労働基準法では、一定の労働時間を平均して週40時間以内の範囲で、1日あるいは1週間の労働時間を超えて働くことが可能です。
参照:週40時間労働制の実現 1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制
介護業界は変則的なシフト制で勤務することがほとんどです。シフト制は、日によって入り時間が異なる変則的な働き方のことを指します。介護施設によっては、2交代・3交代・4交代などの勤務パターンがあり、出退勤の時間が異なります。
次に、介護施設の日勤・早番・遅番・夜勤の働き方を見ていきましょう。
【シフト例】
2交代 | l 日勤 9:00~18:00
l 夜勤 16:00~翌日10:00(休憩2時間) |
3交代 | l 早番(日勤)7:00~15:00
l 遅番 13:00~22:00 l 夜勤 22:00~7:00 |
4交代 | l 早番 7:00~16:00
l 日勤 9:00~18:00 l 遅番 11:00~20:00 l 夜勤 16:00~翌10:00(休憩2時間)または22:00~翌日7:00 |
日勤と夜勤のみで24時間を担います。2交代勤務は、少ない職員で運営するため、夜勤者は勤務時間が長くなり、1回の夜勤で約16〜18時間(休憩あり・2日分)働くことになります。また、夜勤明けの日は就労日となるため、翌日が休みとなることがほとんどです。
早番(日勤)・遅番・夜勤の3パターンの勤務です。各勤務の労働時間が約8時間になります。夜勤は2交代勤務と比べると勤務時間は半分になるため、身体への負担は軽減されます。しかし、夜勤明けが休み扱いで、プライベートな時間や休息を取りにくいと感じる場合があるため注意が必要です。
早番・日勤・遅番・夜勤の4パターンの勤務です。出勤時間が細分化されているため、派遣社員やパートでもシフトの融通がききやすくなります。日中に早番・日勤・遅番の職員がいるため業務が引き継ぎやすく24時間通して平均的な人員を配置できます。
早番・遅番勤務には、どのような特徴があるのか詳しく見ていきましょう。
民間施設や社会福祉法人などが運営している施設では、基本的に1日8時間労働のところが多い傾向ですが、医療法人が運営している施設では、7時間15分労働(例、9:00~17:15の勤務で休憩60分)を取り入れている施設もあります。
【早番】
6:00〜15:00もしくは7:00〜16:00勤務の施設がほとんどです。
【遅番】
11:00〜20:00・12:00〜21:00・13:00〜22:00の時間で設定している施設が多い傾向です。他の勤務との兼ね合いで、遅番①や遅番②などのパターンを設けて、時間差でシフトを組む施設もあります。
早番の職員は、起床介助からおやつ前後の時間帯まで勤務します。日中の仕事内容は入浴介助や排泄介助がメインとなり、身体的なケアが多くなります。
遅番勤務の職員は、昼食前の準備から就寝ケアまでの時間帯の勤務です。食事や排泄のケアを中心に就寝環境を整え、夜勤者へ引き継ぎます。
早番 | 遅番(4交代の場合) | 遅番(3交代の場合) | |
7:00~ | l 夜勤者から申し送り
l 起床介助 l 朝食 l 服薬介助など |
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9:00~ | l 日勤者に申し送り
l 入浴介助 l トイレ介助(おむつ交換) |
||
11:00~ | l 【休憩】
l 昼食 l 服薬介助など |
l 日勤者からの申し送り
l 昼食前準備 l 昼食 l 服薬介助 |
|
13:00~ | l トイレ介助(おむつ交換)
l 入浴介助 |
l 早番(日勤)者からの申し送り
l トイレ介助(おむつ交換) l 入浴介助 |
|
15:00~ | l おやつ提供
l レクリエーションなど |
l 【休憩】 | l おやつ提供
l レクリエーションなど |
16:00~ | l 記録後退 | l 夜勤者への申し送り
l トイレ介助(おむつ交換) |
l 【休憩】 |
17:00~ | l 夕食準備
l 夕食 l 服薬介助 l 口腔ケア |
l 夕食準備
l 夕食 l 服薬介助 l 口腔ケア |
|
19:00~ | l 就寝介助 | l 就寝介助 | |
20:00~ | l 記録後退勤 | l 眠前薬の服薬介助
l 排泄介助(おむつ交換) |
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22:00~ | l 記録後退勤 |
上記の業務内容はあくまでも一例です。事業所によって異なる部分も多いため、実際の業務内容は希望の施設に確認してください。
介護士の中には、早番がしんどいと感じる方もいます。早番がしんどいと感じる主な要因は以下の通りです。
早起きが苦手な人にはとてもつらいシフトといえます。例えば、出勤時間が7時、通勤に30分必要な場合、身支度する時間を入れ逆算すると遅くても、5時半や6時には起床しなくてはなりません。「寝坊できない」「朝起きなくてはならない」などのプレッシャーでなかなか寝付けなくなる方も少なくありません。
人手不足が課題の介護業界では、連続する勤務のなかで「早番」「遅番」「夜勤」のように流れるようにいかないこともあります。例えば、遅番の翌日が早番の勤務は精神的にも肉体的にもつらい勤務です。遅番は早くても20時、遅くて22時頃までの勤務になるため、翌日の出勤まで9〜11時間しかありません。通勤時間などを考えるとプライベートな時間を取ることはもちろん、適切な睡眠時間がとれないこともあるでしょう。
出勤後すぐに起床介助や朝食の準備など慌ただしい業務にあたることもあります。また、日中のほとんどは、排泄介助(おむつ交換)や入浴介助など、身体的に負担の大きい介助がメインです。基本的には早い時間帯に退社できますが、利用者の方の急変や職員の欠員時は、残業を依頼されることも少なくありません。人手不足なうえ欠員が出てしまうと、早番に頼らざるを得ない状況もあります。
※人員が充足している施設もあるため業界全体を指しているわけではありません。
一方、遅番がしんどいと感じる介護士もいます。遅番がしんどいと感じる主な要因は以下の通りです。
遅番の多くは、20時以降の退勤となります。女性職員の場合、20時以降に1人で暗い夜道を帰宅することに不安を感じることもあるでしょう。電車通勤の場合、残業が発生すると「終電までに終わらないと家に帰れない」というプレッシャーもあります。退勤後、買い物や食事をしたくてもスーパーや飲食店が閉店していることもあるでしょう。
遅番の勤務する準夜帯は、職員の人数も少なく利用者の方の体調変化が起きやすい時間帯です。利用者の方の体調不良時やトラブルが発生すると業務が滞ってしまいます。バタバタと業務が終わらず夜勤者に負担がかかる状況になり、遅番の職員が帰りづらくなることも少なくありません。日勤者が退勤した後は遅番が一人で対応する時間帯もあるため、精神的・肉体的負担も大きくなるでしょう。
遅番は就寝時間が遅くなりがちです。もともと、介護施設の勤務は変則的なシフトになるため、生活リズムをつかみづらい仕事といえます。そのうえ、遅番は食事や就寝時間が遅くなりやすく、翌日には夜勤が入ることも多い傾向です。その場合、さらに生活リズムを崩す要因となるでしょう。
ここからは、早番・遅番のメリットについて説明します。
どちらの勤務にも共通したメリットは以下の2点です。
一般的な通勤ラッシュの時間帯(朝7:00〜9:00・夕方17:00〜19:00)に重なることなく出退勤できます。交通渋滞や満員電車の混雑に遭わずに済むため、ストレスを感じずに済むでしょう。人の混雑を避けられるため、感染症のリスクも下がります。
事業所によっては「早番手当」や「変則勤務手当」として勤務に対して手当を支給している施設もあります。一回の早番・遅番に対して500〜1,500円程度の支給が多い傾向です。
早い時間に退勤できるため、夕方から予定を入れて自分自身の時間として活用できます。早起きしたうえで、夕食や就寝時間などのリズムを作りやすく健康的な生活リズムともいえるでしょう。
遅番は出勤時間が11時頃からの施設が多いため、朝ゆっくりと過ごせます。そのため、家事などを済ませてからの出勤も可能です。早起きが苦手な方には、遅番は嬉しい勤務となるでしょう。
早番・遅番勤務は24時間体制の介護施設には欠かせない勤務形態です。どちらかの勤務を選ぶことは難しい場合がほとんどのため、早番・遅番どちらも行う必要があるでしょう。ただし、施設の種類や規模により勤務形態は異なるため、見学や面接時に疑問や不安に感じる点は解消しておくと良いでしょう。
自分自身が変則勤務に対応できるかは施設で働くうえで重要なポイントとなるため、今回紹介した内容を理解して施設選びをしてみてください。今回の記事が、介護士の施設選びの参考になれば幸いです。
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