介護者として働いていると、利用者の方から心ない暴言や暴力を受けることがあります。しかし、利用者の方であるだけに身勝手な対処を取れないので、どうするべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、介護職で利用者の方からの暴力・暴言があったときの対処法を紹介いたします。記事前半では、利用者の方の暴力・暴言の原因を解説。その後に対処法を紹介いたします。
ここでは、介護職への暴言・暴力の実態について紹介いたします。
具体的には、
それでは順番に解説していきます。
平成30年に厚生労働省は、介護職を対象にハラスメント被害に関するアンケート調査を実施しています。その結果によれば、利用者の方から暴言・暴力などのハラスメントを受けた経験のある介護職員は、サービス職種により違いはあるものの40~70%でした。
また、利用者の方の家族からハラスメントを受けた経験がある介護職員は、10~30%という回答結果が出ています。
【参考】令和4年4月 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル 厚生労働省 P.61)
前章で紹介した厚生労働省の調査では、事業所別に「どのようなハラスメントを受けたか」についても公表しています。調査結果のポイントは以下の通りです。
以上のように在宅介護・施設介護の両方で、職員が暴言・暴力などのハラスメントを受けていることがわかります。
【参考】令和4年4月 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル 厚生労働省 P.63)
介護現場で多くみられるハラスメントは、「身体的暴力」「精神的暴力」「セクシャルハラスメント」の3つです。ここでは、それぞれについて具体的に解説していきます。
種類 | 内容 |
身体的暴力 | 殴る、小突く、蹴る、爪でひっかくなどの暴力的な行為を指します。髪の毛を引っ張る、物を投げつけるなどの行為も同様です。 |
精神的暴力 | 大声で怒鳴る、無理な要求や命令をする、無視するなど、介護職員へ精神的な苦痛を与える行為のことを指します。 |
セクシャルハラスメント | 性的な言動によって、相手に不快感を与える行為のことです。不適切に身体を触る、性的な発言をする、性的な画像を見せる、などが該当します。 |
利用者の方からの暴言・暴力などを受けた介護職員は、身体的に傷を負ったり、精神的な病気になったりすることがあります。
厚生労働省が実施したアンケート調査によると、以下のような結果が出ています。
サービス職種によって幅はあるものの、暴言・暴力などのハラスメントによる影響は、とても大きなものといえます。
ここでは、利用者の方からの暴言・暴力の原因について4つを紹介いたします。具体的には、
それでは順番に解説していきます。
認知症が進行すると、脳の機能が低下し判断力や理解力が低下します。その結果、自分の感情をコントロールできなくなり、暴言・暴力につながることがあるのです。
例としては、認知症の利用者の方が自分の要望を上手く伝えられず、大きな声が出てしまうようなケースが挙げられます。
高齢者は、体調不良や身体機能の低下が多くみられます。長期間、体調不良が継続したり、今まで出来ていたことができなくなったりして、気持ちが落ち込むことも珍しくありません。思うような生活ができないため、イライラして思いがけず暴言や暴力につながってしまうことがあります。
高齢者の中には時代背景や価値観の違いから、ハラスメントの認識が十分でない方もいます。例えば「仕事は厳しいもの」という考え方から、介護職員への暴言や暴力を「指導」と捉えてしまう方も少なくありません。
また介護保険制度の理解が不足しているため、必要以上の要求が通らず暴言や暴力につながることがあります。
利用者の方を取り巻く人間関係がうまくいっておらず、不安を抱えていることもあります。家族や地域、介護職員との関係が悪化しており、イライラしてスタッフへの暴言・暴力につながってしまうことがあるのです。
また引っ越しや施設入所などの環境変化によって、大きなストレスを抱えている可能性もあります。
ここでは、介護職がとるべき暴言・暴力への対策について6つを紹介いたします。具体的には、
それでは、順番に解説していきます。
暴力を受けた場合は、まず自分の身体に傷や痛みがないかどうかを確認しましょう。傷や痛みがあれば、すぐに医療機関を受診して適切な処置を受けることが大切です。また、その時は痛みがなくても後から出る場合もあるので、必ず上司などに報告し経過を観察しましょう。
利用者の方から暴言や暴力を受けた場合は、その場ではっきりと「やめてください」と意思表示することが重要です。緊急の場面では、利用者の方と話し合うことが難しいケースもあります。それでも落ち着いた口調で、相手に伝わるように訴えることが大切です。
「怖いから、やめてください」「痛いので、放してください」など、こちらが感じていることを伝えることで、エスカレートするのを防げます。
ハラスメントが原因で悩んでいることを、決して一人で抱え込んではいけません。職場として適切に対応しなければ、更に大きな被害が出る可能性があります。そうなると、介護職員だけでなく、利用者自身も更に大きな事故を起こしてしまうかもしれないのです。
ハラスメントを受けたら、管理者などの上司へ相談しましょう。事業所には、介護スタッフの安全を守る義務があります。同じことが起きないように、対策を講じてくれるはずです。
ユマニチュードとは、人間の尊厳を大切にする介護の考え方で、相手の心を落ち着かせる効果があります。ユマニチュードにより、利用者の方の不安や怒りを軽減し暴言・暴力のリスクを減らすことが期待できます。
具体的には、「笑顔で優しい声かけをする」「利用者の方の気持ちを理解しようとする」のようなケア方法があります。
個別のケースだけでなく、職場全体で対応方法を再考し共有します。組織全体の対応が変われば、ハラスメントを軽減することも期待できるのです。
職場全体で取り組むことの具体例として、以下のような方法があります。
スタッフが個別で対応するのではなく、職場全体でハラスメント防止に取り組むことが重要です。
施設や事業所で対応できることには限界があります。施設単独で解決が難しい場合には、法令に即して地域の機関や他団体と連携することも重要です。具体的には、以下のような機関と連携を図ります。
介護スタッフにとって、暴言・暴力は大きな負担となります。単独で抱え込まず、各機関に相談することも大切なのです。
利用者の方からのハラスメントを受けた経験を持つスタッフは、厚生労働省の調査によれば全体の4~7割と公表されています。
利用者の方が暴言・暴力などの行為を行う理由は、認知症や人間関係など幅広いものであり、単純に解決できるものではありません。一人で抱え込まず、施設もしくは地域全体で対応していくべきものなのです。
ケガや精神的ショックは、すぐには癒せません。ハラスメントが原因で介護職をやめたいと思う人さえいるのが現状です。
上司や施設に相談しても適切な対応をしてくれない場合は、部署異動や転職など思い切った行動も必要になるかもしれません。前職で暴言や暴力を受けた経験がある場合、転職先でも同じような経験をする可能性もあります。
そのため信頼できる転職エージェントに相談し、暴言や暴力に対する対応策を学んでおくとよいでしょう。ジョブトル介護では幅広い介護求人情報を掲載しており、適切なハラスメント対策を実施している施設を無料で紹介いたします。
今回の記事をお読みになり、ハラスメントへの対応に役立てていただければ幸いです。
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