介護の1つに「全介助」がありますが、どのような介助なのか疑問に思った方は少なくないと思います。そこで当記事では、全介助の基礎知識と食事、入浴、排泄、更衣、移乗などの介助について簡単にまとめながら解説いたします。また、半介助と何が違うのかもあわせて解説いたします。
介護と介助は、どちらも日常生活で支援が必要な高齢者や障がい者をサポートすることを表します。しかし実際には、それぞれ異なる意味をもっています。
介護とは、高齢者や障がいを持つ方が日常生活を送るために必要なサポートをすることです。つまり介護は、支援全般を指します。
一方、介助は歩行や食事、排泄など、具体的な動作をサポートする行為そのものを指します。身体介護に含まれる食事介助、入浴介助、排泄介助などが代表的な例です。つまり、介助は「サポートする行為」であり、支援全般を意味する介護の一部といえます。
利用者の方の自立度に応じて、介助のレベルが4段階に分類されています。ここでは、介助における4段階の基準についてご紹介します。具体的には、
それでは、詳しく解説いたします。
自立とは、介護者が介助することなく日常生活動作(ADL)をすべて1人で行える状態を指します。食事や排泄、入浴、更衣など、ある特定の動作をすべて自分で行えるため、介助の必要はありません。
一部介助とは、日常生活の動作において部分的に介助が必要な状態を指します。自立に近い状態であるものの、単独で動作をするには部分的なリスクがある状態です。動作を促す声掛けや安全のための見守りも行います。具体的には、以下のような状態です。
明確に基準が決められているわけではありません。自立と半介助の中間をイメージするとよいでしょう。
一部介助よりも、できる動作が限られている状態です。1人で行うことは難しく、動作における多くの部分でサポートを必要とします。
たとえば、衣類の着替えは1人ではできないものの、スタッフの声掛けに応じて、服に手を入れたり手を伸ばしたりするなどの協力動作ができるケースです。ほかには、以下のような状態が挙げられます。
以上のように、ある程度の能力はあるものの、サポートがなければ動作を行えない状態が半介助です。本人ができる動作まで介助してしまうと、さらにできなくなってしまいます。声掛けしながら、協力動作を促すことが重要です。
ある動作において、自力での動作ができず介護者の手厚いサポートを必要とする状態です。介護者の介助がなければ、まったく、もしくは、ほとんど自分では動作ができない状態を指します。具体的には、以下のような状態が挙げられます。
以上のように、特定の動作において、介護者による全面的な支援を必要とする状態が全介助と呼ばれる状態です。
全介助と半介助の主な違いは、利用者の方が自力で行える動作の範囲と介護者に求められるサポートの程度にあります。
全介助は、すべての生活動作において介護者のサポートが必要な状態です。一方、半介助は、ある特定の動作を自力で行えます。以下に、全介助と半介助の違いをまとめました。
動作 | 全介助 | 半介助 |
食事 | 介護者が食べ物を口元に運ぶ。ストローを口に運び、飲んでもらうように促す。 | 介護者が食事の準備、片付けを行う。必要に応じて食べ物を小さくする。声掛けで水分を摂取できる。 |
入浴 | 介護者が全面的に体を洗う。髪を洗う。 | 介護者は、本人が洗えない部分のみ介助する。 |
排泄 | 介護者がベッドでおむつ交換する。 | 必要に応じて排泄介助をし、着替えも介助する。 |
更衣 | 介護者が全面的に更衣を介助する。 | 必要に応じて着脱の介助を行う。 |
移乗 | 介護者が車椅子への移乗介助、ベッドへの移乗介助を行う。 | 立位の際に麻痺(まひ)側を支えるなど、必要に応じて介助する。 |
歩行 | 介護者が車椅子を押す。 | 介護者が歩行時に横について、体が安定するように支える。 |
明確な基準が決まっているわけではありません。あくまでもイメージとして参考になさってください。
ここでは、全介助を行う際の注意点などを場面別にご紹介します。具体的には、
それでは、詳しく解説いたします。
食事の準備から摂取、後片付けまですべての過程で介護者がサポートします。食事で最も注意しなければならないのは誤嚥です。誤嚥を防止するためには、以下のことを確認しましょう。
また食欲を引き出すために、食事の雰囲気づくりも重要です。介護者がエプロンを身に着けたり、雰囲気のよい音楽を流したりするなど工夫するとよいでしょう。
入浴時には、転倒などの事故や体調不良が起こることも多いため、注意が必要です。事前に体温や血圧をチェックします。全介助を必要とする方の多くは、自分の意志を伝えられないこともあります。表情など、いつもと変わったところがないかも確認しておきましょう。
洗髪や洗身は、声掛けしながら行います。コミュニケーションをとることが難しい方の場合は、表情などを観察しながら調整することが必要です。
トイレで排泄する場合は、便器からずり落ちないように注意します。衣服の上げ下ろしで不安定になる場合は、必要に応じて2人介助を行いましょう。
またベッドでおむつ交換する際には、発赤などがないか肌の状態もあわせて確認します。
体位を変える際には、廃用症候群を防止するためにも、できるだけ本人に協力してもらうようにしましょう。
利用者の方の負担を少なくするためにも、着脱しやすい衣服にするのも1つの方法です。利用者の方の好みや季節、天候に合った服装を一緒に選びましょう。
介助の際には、利用者の方のリズムに合わせて、ゆっくりとサポートします。袖を通してもらったり、足を上げてもらったり、本人にできることは、なるべくしてもらうようにしましょう。
車椅子やベッドへ移乗する際には、ずり落ちないように注意します。座った後も安心せずに、姿勢を確認しましょう。
正しい姿勢で介助を行うと、利用者の方も介護者も負担を少なくできます。逆に、無理な姿勢で介助すると危険であり、介護者も腰などを痛めてしまうので注意しましょう。
全介助を必要とする方のADLが低下しないように、介護職ができることは多くあります。たとえば、
などです。
以上のポイントを意識して、利用者の方の暮らしを維持できるようサポートしましょう。
全介助とは、すべての日常生活動作(ADL)において他人の助けが必要な状態を指します。食事や入浴、排泄、更衣、移乗などの動作において、介護者の手厚いサポートが必要な状態です。半介助は、ある程度であれば自力で行える状態を指します。
全介助と半介助の主な違いは、利用者の方が自力で行える動作の範囲と介護者に求められるサポートの程度です。
介助を必要とする方のADLが低下しないように、介護職ができることは多くあります。自分でできることをしてもらうように促す、食事や睡眠時の環境をつくる、体調の変化などを早期発見することが挙げられます。これらのポイントを意識して、利用者の方の暮らしを維持できるようにサポートすることが重要です。
この記事が、全介助についての理解を深める一助となれば幸いです。
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