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    ユマニチュードとは?認知症ケア技法の基本知識や実践する方法を紹介

    仕事を知る コラム 2020/07/10

    認知症の新しいケア技法として注目を集める「ユマニチュード」。ユマニチュードには患者本人の症状を緩和するだけでなく、介護者の負担も軽減する効果が期待されています。こちらでは、ユマニチュードの具体的な内容や実践法、ユマニチュードを学ぶための研修コースについてご紹介していきます。

    認知症ケア技法「ユマニチュード」とは

    ユマニチュードとは、約40年前にフランスで誕生した認知用のケア技法です。

    新しいメソッドを確立したのは、介護には無縁な体育教師であったイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏。出向いた病院で対応の難しい患者と向き合い、失敗を繰り返す中で実践的な技法「ユマニチュード」は生まれました。

    フランス語で「人間らしさ」という意味を持つユマニチュードの哲学は、認知症患者が「最期まで人間らしい存在」でいること。それまで無反応であった認知症患者が笑顔を取り戻すことから、奇跡や魔法と称されることもあります。

    しかし、しっかりとした言語・非言語のコミュニケーション技法に基づいたユマニチュードは、決して魔法ではなく誰もが学び実践できるケア技法。今では世界10カ国以上で取り入れられ、優しさを伝える介護ケアとして日本でも高い注目を集めています。

    優しさを伝える「ユマニチュード」の4つの柱

    ユマニチュードの柱となるのが「見る」「話す」「触れる」「立つ」といった4つの技法です。一見シンプルなようですが、全てに共通するのが「あなたは大切な存在だ」と伝える姿勢。

    ひとつずつポイントを押さえることで、認知機能が低下した患者も安心してケアを受け入れることができます。

    見る

    ユマニチュードの最も基本的な技法が、患者とアイコンタクトをかわす「見る」です。

    認知症患者は呼びかけに対して無反応であったり、拒否反応を起こすことも少なくありません。このような場合は、相手を驚かせないように正面に位置し、同じ高さに目線を合わせる必要があります。

    相手と目を合わせないということは、「あなたは存在しない」というメッセージを発すること。しっかりとアイコンタクトを交わすことで、認知症患者も相手に親しみと安心を感じることができるのです。

    話す

    業務負担の大きい介護の現場では、ケアの場面で無言になってしまうこともあるのではないでしょうか。自宅介護では、認知症が進んだ家族との意思疎通に悩むこともあるでしょう。

    ユマニチュードがそのような場面でこそ大切にしているのが、「あなたは大切な存在だ」と伝えるためのコミュニケーション。歌うように優しく、穏やかに話しかけることで、認知症患者の不安を徐々に解消できます。

    反応がないからといって話すことをやめてしまうのは、「見ない」ことと同様に相手の存在を否定することにもつながりかねません。相手の反応がない場合であっても、現在の内容や次の動きを説明しながらケアにあたることを心がけましょう。

    触れる

    介護の現場では、相手の体に触れてサポートする場面も数多く見られます。その時に重要になるのが、どのように触れるかということです。

    健康な方でも、誰かに触れられることには抵抗があるものですよね。認知症患者に触れる場合も、肩や腕のような鈍感な部分から触れていくことがポイントです。

    手のひら全体を使い、広く柔らかく、ゆっくり包み込むように触れることで、「あなたは大切な存在だ」という想いを伝えましょう。

    立つ

    人は、立つことで「自分が存在している」という感覚をより強く感じられるようになります。

    そのため、ユマニチュードでは寝ているよりは座位、座位よりは立位を推奨しています。立つことで筋力もアップし、循環器系や呼吸器系の機能を活発化させることができるからです。

    歯磨きや着替えなど、日常のささいな場面を立位で行うことが、リハビリにもつながっていくでしょう。

    出会いから再会の約束まで「ユマニチュード」5つのステップ

    ユマニチュードを実践するために必要なのは、認知症患者と介護者との間に絆を結ぶことです。そのため、すべてのケアは次の5つのステップに沿って行っていきます。

    出会いの準備

    ユマニチュードでは、認知症患者と介護者が出会う前のワンクッションを大切にしています。ケアのため入室する際には声をかけることが基本ですが、ユマニチュードの場合はドアを3回ノックし3秒待つのがポイント。反応がなければもう一度同じ動作を繰り返し、それでも返事がない場合に1回ノックをしてから室内に入ります。

    この3秒間を設けることで、認知症患者に「誰かが自分に会いに来たこと」を知らせることができるのです。また、患者の脳が活発化することで、来訪者を受け入れるかどうか選択することも可能となります。

    ケアの準備

    ケアに入る前には、準備段階でお互いの関係性を築く必要があります。「あなたに会いに来た」「あなたに会えてうれしい」というメッセージを相手に伝える必要があるのです。

    この時に必要になるのが、ユマニチュードの基本である「見る」「話す」「触れる」の技法。まずは正面から近づき、アイコンタクトが取れたら3秒以内に話しかけましょう。ポジティブな言葉を使用しながら、手のひら全体を使ってやさしく触れることも効果的です。

    知覚の連結

    知覚の連結は、入浴介助や食事介助といった実際のケアの段階を意味します。「見る」「話す」「触れる」組み合わせ、相手を思う気持ちを継続的に伝えましょう。視覚や聴覚、触覚のイメージが連結することが患者に大きな安心感を与えます。

    目線を合わせてやさしく声をかけること、ポジティブなメッセージとともに温もりを伝えることが大切です。

    感情の固定

    ケアが終わったら「気持ち良かったですね」「おいしかったですね」といったポジティブな言葉を患者に伝えましょう。認知症患者は記憶力が低下しますが、感情に伴う記憶は最後まで残ると言われています。

    ケアの最後に「あなたと過ごせてうれしかった」という声かけをすることで、ケアがすてきな体験として感情に記憶されるのです。良いイメージの感情を固定することで、次回のケアもより受け入れやすくなるでしょう。

    再会の約束

    親しい相手と別れる際には、誰もが「またね」という言葉を口にしますよね。ユマニチュードでも、ケアの最後には次回の再会を約束する言葉を残します。「またお会いしましょう」という言葉自体は忘れてしまっても、優しい人にまた会えるという期待感は記憶に残るからです。

    可能であれば、次回の来訪予定をメモに残し目に付くところに貼っておくのもおすすめ。視覚的な要素を残すことが、次回のケアへの心の準備にもつながるでしょう。

    ユマニチュードのメリットとは?

    ユマニチュードは、認知症患者と介護者、双方に良い効果をもたらします。

    認知症では向精神薬が使用されることがありますが、ユマニチュードを取り入れることで薬に頼らなくても「その人らしさ」が保てることが立証されています

    実際にフランスでは、向精神薬の使用が4割、施設から急性期病院への搬送が6割減少。結果的に、長期療養施設の年間医療費が4000万円近く削減されたと報告されています。

    医療費や介護費用の削減は、社会全体はもちろん、家族や患者本人にとってもうれしい効果であると言えるでしょう。

    また、ユマニチュードはケアする側にも大きなメリットをもたらします。

    患者にケアを拒否されたり叫ばれたりと、認知症患者のケアはプロの看護師や介護士であっても心身に負担を抱える事が多いもの。身近で患者を見続ける家族にとっても、そのストレスは大きなものとなるでしょう。

    しかし、ユマニチュードの技法を取り入れればいつものケアをスムーズに進めることができます。バーンアウトと呼ばれる燃え尽き症候群を防ぐことにより、介護士や看護師の離職率が減少したことも報告されているのです。

    自分のケアで患者に変化が生まれることは、結果的に仕事のやりがいにもつながっていくでしょう。

    入浴拒否や食事拒否のユマニチュード実践法

    介護の場面で悩みとして多くあげられるのが、入浴拒否や食事拒否といった問題です。ここでは、それぞれのパターンに合わせたユマニチュードの実践方法を見ていきましょう。

    入浴拒否

    認知症患者に入浴を促す場合にも、まず大切になるのが「見る」の技術です。正面に近づきアイコンタクトが取れたら、3秒以内にポジティブな言葉で声かけを行います

    この時に大切なのは「入浴」という言葉を前面に押し出さないこと。「お風呂に行きましょう」「お風呂の時間ですよ」といきなりケアのことを話すのではなく、「あなたに会いに来ましたよ」というメッセージから伝えるように心がけましょう。

    その後に「さっぱりしましょうか」と入浴を促すことで、相手も不安なく入浴ケアを受け入れることができます。

    ご飯を食べてくれない

    認知症の症状が進み認知機能が低下すると、目の前にあるものを食べ物だと認識できなくなります。また、視野が狭くなるため、テーブルにある食事が視界に入らないといった問題も起こってくるのです。

    このような場合にも、まず相手の正面に座りアイコンタクトを取ることから始めます。視線が合ったら箸やスプーンを見せ「ご飯ですよ」と優しく話しかけましょう。視界の中に自分の箸や食べ物が見えることで、食事の時間だと認識できます。

    たくさんの皿が並ぶとどれを選べば良いのか分からないといった問題も起こるため、なるべくひとつの皿に盛りつけてみるのもおすすめです。

    ユマニチュードを学べる研修コース

    株式会社エクサウィザーズが企画・運営する研修コースでは、認定インストラクターから正しいユマニチュードの技法を学ぶことができます。コースは専門職用と一般用の全3コース。会場に足を運べないという方は、公式サイトが配信している動画アプリもおすすめです。

    【参考】株式会社エクサウィザーズ「ユマニチュード研修案内」

    専門職用コース

    入門1日コース

    対象:初めてユマニチュードを学ぶ看護・介護などの専門職

    費用:27,000円~(税抜)

    会場:東京・大阪・愛知・福岡

    実践者育成2日間コース

    対象:医療・福祉施設に勤める専門職

    ユマニチュード入門コースまたは2日間以上の研修の正規過程修了

    費用:53,000円~(税抜)

    会場:主に東京

    一般コース

    対象:ユマニチュードを知りたい市民・家族で介護をする方

    費用:6,000円~(税抜)

    会場:公式サイトにて要確認

    認知症患者と介護者をつなぐユマニチュード

    ユマニチュードは、特別な手間や時間をかけることなく、現在のケアと組み合わせて取り入れていくことができます。病院や施設といったプロの現場だけでなく、家庭での介護に生かせることもポイントのひとつ。

    高齢化が進む現代の日本社会において、ユマニチュードの可能性はさらに大きく広がっていくと言えるでしょう。

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