サービス付き高齢者住宅とは、民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅のことを指し、「サ高住」「サ付き」とも呼ばれています。おもな形態は「一般型」と「介護型」の2種類。ここでは、サービス付き高齢者住宅の概要と、介護士として従事する上での仕事内容・勤務時間・休暇・給料などについて解説いたします。
サービス付き高齢者向け住宅とは、60歳以上、または要介護/要支援認定を受けている60歳未満の単身・夫婦世帯のためのバリアフリー賃貸住宅です。自立度の高い高齢者が入居することが多く、主なサービス内容は安否確認と生活相談になります。原則として介護サービスは行わないため、訪問介護が必要な際は外部の事業所を利用することになります。
平成23年「高齢者の居住の安全確保に関する法律」の改正により新たに創設。高齢者にふさわしい設備と規模を兼ね備え、ケアの専門家による安否確認と生活相談サービスを満たした施設がサービス付き高齢者向け住宅として登録されます。バリアフリーの床や適切な手すりの配置、廊下幅の確保など、登録のためにはさまざまな設備を兼ね備える必要があります。また、ケアの専門家には介護士福祉士や社会福祉士、社会福祉法人や医療法人の事業所の職員などが挙げられています。
「有料老人ホームとどう違うの?」と混同してしまいがちですが、両者の大きな違いは老人福祉法に基づくサービスの有無<。食事や介護の提供、家事や健康管理の供与いずれかを実施している場合には、そのサービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームに該当します。
そのため、サービス付き高齢者向け住宅の入居者が有料老人ホームのような介護保険サービスを利用したい場合には、他のサービス事業所と契約する必要があります。入居するサービス付き高齢者向け住宅が介護保険法に基づく特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合には、その住宅から介護保険サービスを受けることも可能です。
サービス付き高齢者向け住宅での主な仕事内容は、安否確認・生活相談の2つです。その他、契約がある場合には介護業務が加わることになります。
1日1回以上、入居者の状況を確認します。施設により回数は異なりますが、起床時や食事の提供時に合わせ、毎日決まった時間に行われます。
介護や医療、生活全般に関するさまざまな相談や悩みに応じます。サービス付き高齢者向け住宅の入居者は、介護施設のように外出や外泊には制限がありません。そのため、移動に必要な交通手段や日常の不便の訴えなど、さまざまな相談を受け解決に導くのがおもな仕事となります。
サービス付き高齢者向け住宅のサービス内容には、基本的に介護業務は組み込まれていません。訪問介護の契約がある場合のみ、訪問介護員として入居者の居室を訪問し介護業務を行います。
具体的なサービス内容は、部屋の掃除や買い物の支援などです。入浴スペースがある場合には、入浴介助を行うこともあります。近年は介護サービスが充実している住宅が増えており、そのような場合は身体介護も必要となります。
1日のスケジュールは、住宅の形態やサービス内容によっても異なります。こちらでは、身体介助と生活援助のサービスを提供する住宅の1日のスケジュール例をご紹介いたします。
7:00 | 入居者の起床を確認
居室を訪問しあいさつを交わす。その日の体調や心の状態を確認する。 |
8:00 | 朝食
食事の配膳や後片付け。必要であれば服薬など入居者のサポートを行う。 |
9:00 | 買い物や通院など、外出する入居者の付き添い
訪問介護が入っている場合には、居室の清掃を行う |
12:00 | 昼食
食事の配膳や後片付け、および見守りなど。 |
13:00 | 生活相談
入居者の健康や生活に関する相談を受ける。医療や介護などの必要性に応じ、各機関を案内する。 |
14:00 | 入浴介助
入居者がサービスを契約している場合は入浴介助業務を行う。 |
17:00 | 夕食
食事の配膳や後片付け。1日の出来事や体調を確認しながら見守り業務を行う。 |
19:00 | 外出から帰った入居者の出迎え
入居者へお茶出しのサービスを行う場合もある。 |
21:00 | 就寝
入居者が居室へ戻ったことを確認し、明朝まで見守りを行う。 サービス内容に合わせ、夜間緊急対応を実施。 |
サービス付き高齢者向け住宅では、入居者は時間にしばられることなく、自分の生活スタイルに合わせて行動します。そのため、スタッフも比較的ゆったりと仕事を進められるのが特徴です。実際に行う介護業務は同じであっても、デイサービスや訪問介護のような送迎業務は必要ありません。しかし、入居者が自宅でくつろぐように毎日を暮らせるよう、スタッフにはきめ細やかな対応と気配りが求められます。
フロント業務や見守りだけを行う場合には、特別な資格や経験は必要ありません。しかし、入居者の居室に訪問しサービスを行うためには「介護職員初任者研修」以上の資格が必要となります。求人でも、初任者研修以上の有資格者を求める内容が一般的です。そのため、訪問介護事業所でヘルパー業務をしていた方であれば、それまでの経験を活かして働くことができるでしょう。
そのほか、生活相談員として働く場合には、社会福祉士や介護福祉士の資格が必要となります。資格取得のサポートが付いている施設であれば、これから介護の資格を取得したいという方でも働きながらキャリアアップを目指すことが可能です。
また、サービス付き高齢者向け住宅の入居者は自立している方が主ですが、管理者が問題ないと認めれば介護度の高い方も入居できます。その場合、訪問介護時間外でもコールに対応する必要性が考えられます。
「介護業務が少ないと思っていたら予想外に大変だった」「もっと自分の資格を活かしたいのにフロント業務だけだった」というミスマッチを防ぐためにも、就職する際には、それぞれの住宅の勤務形態を事前によく調べておきましょう。
サービス付き高齢者住宅は大手の民間企業が運営することも多い施設です。そのような場合は、充実した福利厚生が期待できます。夜勤手当や交通費、ボーナスの有無は企業によって異なるため、業務内容とともに事前によく確認しておきましょう。
24時間365日サービスを提供するサービス付き高齢者向け住宅では、シフト勤務が主流です。以下は勤務時間の一例です。
ただし、介護施設と異なり夜間のスタッフの配置は義務付けられていため、夜勤の有無は住宅によって異なります。自立度の高い高齢者が多いため、介護施設に比べ夜勤の負担が少ないこともサービス付き高齢者向け住宅の特徴です。シフトが組まれているため残業は少なく、休暇も完全週休2日制の職場が一般的です。
【参考】indeed「東京都の求人情報」(2020年8月現在)
その他、管理者として働く場合には年収400万円以上といった求人も見られます。身体介護が含まれる職場は、時給も高いのが一般的です。資格や介護職の経験の有無によって、基本給もアップします。
また、高い給与を希望する方に人気なのが「夜勤専従」という働き方。夜勤帯のみ働く夜勤専従業務は、日給2万円以上が期待できます。サービス付き高齢者向け住宅の夜勤は介護施設に比べ身体的負担も少なく、ダブルワークを希望される方にもおすすめの働き方となるでしょう。
サービス付き高齢者住宅は、高齢者が自由に安心して居住できることを目的としています。そのため、介護施設での介護に疑問を覚える方、適度な距離感で高齢者を支える存在でいたいという方に向いている仕事です。その他、以下の項目に当てはまる方も自身の経験やスキルを仕事に活かすことができるでしょう。
買い物や食事の提供の仕方、お互いの距離感など、入居者は個々にこだわりや嗜好を持っていることも多いです。それらを受容した上で、より良いサービスを提供し快適な環境を整えることがサービス付き高齢者向け住宅のスタッフの役割です。
入居者の中には、サービス付き高齢者向け住宅を「終の棲家」として選択する方もいます。そのような方にとっては、生活を見守るスタッフは家族のように心強い存在です。これまでに介護の勤務経験がある方だけでなく、サービス業や接客業に従事してきた方にとっても、サービス付き高齢者向け住宅の仕事は新たな可能性を期待できる場となるでしょう。
サービス付き高齢者住宅の仕事は、高齢者が安心して暮らせるよう生活をサポートすることがポイントです。介護施設に比べ身体的な負担は少ないものの、サービス内容は住宅によって大きく異なります。そのため、就職を希望する際は事前に仕事内容をよく確認しておくことが大切。経験を重ねる中で資格を取得すれば、給与アップを期待することもできます。
高齢化社会が進む中で、新たな終の棲家として周知されつつあるサービス付き高齢者向け住宅。介護施設以外で介護の仕事をしたいとお考えの方は、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
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